サバイバル十八日目
十八日目
悪夢をみた、10mはある巨人に食べられる夢だ。食べられる瞬間に目が覚めた。
こんな夢を見たのは昨日、田中さんから怖い話を聞いたせいだろう。
(はぁー)
朝からちょっとテンションが低くなってしまった。
重い足を引きずって朝食の用意をするために表に出る。
ガチャ
玄関を開けるとクロがいた、相変わらず可愛い。出会った時から考えると、ちょっと大きくなった気がする。
「おっクロじゃないか!成長早いなぁ」
ふるふるっ
尻尾を振って応えてくれた。
初めて尻尾で返事をしてくれた、懐いてくれているのだろうか。彼の顔を見ただけで一気に元気が溢れて来た!
「朝ごはん食べるか?」
ふるふるっ
(仕草がいちいち可愛いっ)
朝食には、魚の干物と干し肉を炙って一緒に食べた。
クロ用にお皿を用意してやったが、食べやすいようだった。今度からお皿にのせて食べ物をあげることにしよう。
片付けを終えた後、クロと遊びながら今日の予定を考える。
干物ももうなくなってしまったし、昼からはまた釣りと水の補給に行こう。
「お前も釣りにいくか?」
そう声をかけると、こちらの顔を見た。
言葉の意味はわかってなさそうだが、ついて来るようだ。
……
(ぼちぼちだなぁ)
何度も同じポイントで釣りをしているためか、食いつきが悪くなってきている気がする。
それでも根気よく釣り糸を垂らし続け、20匹ほどを釣る事が出来た。
「さて、お昼にしようか」
準備に取り掛かろう。
そう思って、近くで遊んでいるクロに合図をしようと振り向く。
すると近くの草むらに対して、クロが伏せてじっとそちらを睨んでいた。
(何かいるのか?)
恐る恐る草むらを掻き分けると、そこにはカニに似た生き物がいた。カニと言うよりは尾のないサソリのような形だ。かなり大きく50cmはあるだろう。色は真っ青だ。
「でかっ」
その青いカニを早速捕まえることにする。
ハサミに挟まれないよう後ろに回り、胴体を抑える。
動きは遅く、簡単に捕まえる事ができた。
力は強そうだが、ハサミは背中には届かない。
お昼は焼きガニにしよう!
手早く火を起こし、そのまま焚き火に青いカニ放り込んだ。
パチパチという音とともに殻が真っ赤に変わっていった。
(完全にカニだ、焼きガニだ。)
火が通ったところで殻を割って食べてみよう。
「熱っ!熱っ!」
両手で転がしながら身を取り出す。そのまま口の中へ…
ぱくっ
身がぎっしり詰まっていて、甘い!
完全にカニの味だ。
「うまぁーい!」
ふるふるふるっ
尻尾を振りながらクロが物欲しそうに見ているので、身を取り出して冷ましてから与えてやる。
もくもくもく
美味しそうに食べている。
今日は思いがけないご馳走だ、二人仲良くランチタイムを過ごした。
……
十分、食料と水や燃料の調達が出来たところで家に戻ることにする。
家路を急いでいると、遠くからまたあの声が聞こえてきた。
「●○▽□…」
(この声は。)
例の小鬼だろう、姿は見えない。
見つからないよう息を殺して、姿勢を低くしながらその場を離れる。
するとクロも同じように真似をして、地面をするようにゆっくり歩き始める。
あくびをしながら。
(遊んでるんじゃないんだよ!)
人の気も知らないで楽しそうなクロはさておき、どうやら見つからずにその場を離れる事が出来たようだ。
悩みの種が増えたなぁ…
でも、今日も無事でよかった。