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明日から突然サバイバル生活!  作者: ELS
(第4章)無人島でサバイバル!
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無人島サバイバル八日目(前半)

無人島サバイバル八日目(前半)


しんと静まり返った森の中、がさりと音を立ててシェルターから這い出した。まだ辺りは薄暗く、日中を思えば嘘のような涼しさである。


目覚めに一口の水を飲み、一息ついた。

人間には、未知なる力が秘められていると感じる。今日は早く起きよう、そう念じて眠るだけで本当に早く起きてしまうのだ。目覚まし時計も何も無いのに。

自らに秘められた、小さな小さな特殊能力を考えて口元が緩んだ。


今日は島内を探索してみよう。

他の人間の事も気になるし、影しか見えない肉食獣も気になる。シェルターの引っ越しを考えても良いだろう。

さあ出発だ。



……



ちらりちらりと木の葉の屋根から明かりが漏れる。今日もどうやら、元気に太陽が出勤してきたようだ。休んでいても良かったのだが。


その時、異常な痕跡を発見した。

ミステリーサークルよろしくぐるりと大きく円形に草木が薙ぎ倒されている。

そして付近の木の幹には無数の爪痕。いや正確には爪痕では無いのかも知れないが、引っ掻いたような深い傷が多数。

こちらの木にも、そちらの木にも。まるで小さな竜巻が付近を吹き荒らしたかのような惨状だ。


そして、地面には動物の物だと思われる体毛が散乱している。

何をどうすれば、このような現象が起こるのか。肉食獣……およそ熊のようなものを想定していたが。それ以外にも、まだ予想外のなにかが潜んでいるのかも。


息を殺し身を低く屈めて、周辺を詳しく調べていく。すると、何かねとりとした粘液とそれに混じって、赤く透明な液体が浮かんでいるのを発見した。何者かの血液だろうか、粘液に混じっているために見たことのある血液と印象が違うようだが。

これは一体。


ごくりと喉が鳴った。


はぁ、はぁ……苦しくなって息が荒くなる。どうやら緊張して息をするのを忘れていたらしい。


がさり!


その時、木々の奥から物音がした。首だけをそちらに素早く向けて、確認する。

何も見えない……が、何か音が聞こえる。ドックドックという自らの心音が邪魔だ。やけにうるさいそれを聞き流しながら、じっと耳を澄ました。


「……」


じっとりと手に汗をかいているのは、暑さの為だけではなさそうだ。

しかし、ぼそりぼそりと続けて聴こえて来たのは、人の声のようであった。すとんとその場に脱力する。


何者かが近くに居るらしい。

ここからでは姿も確認出来ないし、会話の内容も聞き取れない。見つからないように声の方へ近づいて見ることにする。


……だから……お前……ふざけんな……。


判別できるのは男の声が二つ。断片的に読み取れた内容からは、そんなにハッピーな話題ではなさそうだ。


計画通り、視界に入る距離まで近づく事が出来た。ちょうど良い手頃な草木が俺の身体を隠してくれる。


さぁ見えたのは二人の男。二人ともTシャツにジーパン姿のラフな格好をしている。茶髪の男と、黒髪短髪のガタイの良い男。

そう、こいつらは見たことがある。


あの時出会ったキャンピングカーの5人組の中の二人だ。茶髪のやつはたしかケンジと言ったか?一人だけナイフを持っていたリーダー格の男だ。短髪の男の名は知らないが、あの時も姿は見ている。

ずっと海パンでバカやっているのかと思っていたが、ちゃんと服も着られるんだな。

他に仲間が居ないところを見ると、二人っきりでデートらしい。


「あんな事になって、どうするんだよ、これから!」

「しらねぇよ、何とかすんだろうがよ」


短髪がケンジに向かって何か詰め寄っているようだ。仲間割れだろうか。このまま隠れて様子を伺うことにする。


「大体お前がキャンプって言い出したんだろ、アヤカだって……」


「ぐちぐち言ってんじゃねえよ、ッチ。そんなだからアヤカにフラれるんだろうが」


「っ……!はぁ!?関係ねぇだろ!」


「もうバカとは話してらんねえ」


「待てよ、ケンジ!」


彼が立ち去ろうとすると、肩に手を掛ける短髪。ばっと振り向いたケンジはギラリとしたナイフを腰から抜いた。


「うぜえな、殺すぞ!」


ぬらりと光る切っ先が、短髪の男の腹に突き付けられた。


「……!」


ガッ!


その次の瞬間。弾けるように動いた短髪が、刃を打ちはらい、顔面を殴った。ケンジはたまらずナイフを手放し、尻餅をつく。


「ぎぁっ!」


そのまま、被さるように上に乗った短髪が両手で首を絞め上げる。みるみるうちに真っ赤になる顔。


「お前があっ!があああぁっ!!」


血走った目で、そんな言葉にならない言葉を発しながら指に力を込めている。

ケンジはばたばたともがいていたが、真っ赤な顔はどんどん赤黒く変色し、しばらくすると動きを止めた。


短髪の男は、相手の意識が無くなった事を確認して立ち上がり、落ちていたナイフを拾った。そしておもむろに、それを倒れている彼の胸に突き立てた。


刃がずぶりと胸の奥に吸い込まれる。


「お、お前が……悪いんだ」


ナイフを引き抜くと、呟くようにそう言って、フラフラした足取りでその場を離れて行った。


「……」


まさかの急展開だ。

藪から姿を現して、倒れている男の様子を伺う。胸から血を流して倒れており、眼球の白くあるべき部分が真っ赤に染まっている。

息は既になく、死んでいるようであった。


痴情のもつれか。

しかし、そんなに簡単に人を殺せるものなのだろうか。

以前から、彼らの状況も何か変わったのだろう。少し調べてみた方が良さそうだ。

まず仲間を殺すような人間だ、俺のキャンプを襲撃しないとも限らない。安全を確保するために彼らの近況を知るべきだ。


死体をそのままに、短髪のガタイの良い男を追跡する事にした。

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