1.05.抗争勃発
その日の朝露もおち、穏やかな光合成日和……。
俺は朝から日向ぼっこ……。
ウツボカズラ一大群生地……。
そしてそれは突如として押し寄せて来た!
「ブ~~~~~ン!(兄貴!あそこですぜ)」
「ブ~~~~~ン!(おお、良くやった!こんな良いシマ初めて見たぞ!)」
キラービー《ミツバチ》の群がやって来た。
――こいつら毒持ってないよな……。
――でも体温調節機能とかあるか……それはそれで……。
俺はウハウハしていた。
そこにまた別の群が……。
「ヴィ~~~~~!(おっ?先着がおったんかいな……。)」
「ヴィ~~~~~!(ここはわしらの組が先に目を付けておった場所やさかい。他行ってくれへんか?)」
――何これ?
「ブ~~~~~ン!(なんや!あんたら後からきておいて!そんな理屈が通ると思っているのか?ああ~ん?)」
「ブ~~~~~ン!(兄貴の言う通りだ!ああ~ん?)」
――おお~メンチ切ってる……。
「ヴィ~~~~~!(粋がるなよ若いの、誰に盾突いてるか分かっとるんかい!)」
「ヴィ~~~~~!(そやな……、そんな死に急がんでもええんやぞ!)」
ホーネット!要はスズメバチ……。
――なんだ!キラービーVSホーネット……抗争か……?
そんな中ヒラヒラと舞い降りる群が有った……。
ガーデンホワイト……、その質素且つ純白の紋様、モンシロチョウだ!
「シ~~~~~~!(あれ?アタイ等の取り分はどうなってるんだい?)」
――何だ今度は?アタイって……レディースなのか?もしや3つ巴……。
「ブ~~~~~ン!(悪ぃ!あいつ等にいちゃもん付けられてな!まだだ!)」
「シ~~~~~~!(ねぇ~ん!早くやっちゃってよ……。アタイ達待ちきれないよ……。分かってるだろ……。)」
ガーデンホワイトがキラービーにすり寄って行く……。
――ああ、キラービーのボスの女って設定か……。
すると、また別の群……。
――いい加減、これで最後にして欲しい……。
群れはスワローテール、ガーデンホワイトとは違い、色彩華麗に飾られた紋様……アゲハチョウ!
――まさか!
ホーネット側へ降り立つ……。
――やはり、ホーネット陣営……お水っぽい感じだし……愛人とかか?
「シュ~~~~~!(あら?お子ちゃま捕まえて、何か問題でも有ったの?)」
「ヴィ~~~~~!(特にあらへん……。もう終わらすさかい……。)」
「ヴィ~~~~~!(姐さんは、後ろで見ておくんなまし……。)」
「シュ~~~~~!(お嬢ちゃん達も危ないわよ……。)」
「シ~~~~~~!(うっさい!おばさん!ここはアタイ等のもんなんだよ!)」
「シュ~~~~~!(お、おばさん……。なっ、舐めた口きいてんじゃね~ぞ、ゴラァ~!いてましたるぞ!ゴラァ~!)」
「シ~~~~~~!(ヒィッ!ヒ~~~~~~~!)」
ガーデンホワイトはキラービーの後ろに隠れる。
――あれ!極妻?いやそれだと女王蜂に当たるだろうから、やはり愛人とか何か設定で見てみよう。
「ヴィ~~~~~!(まあまあ、姐さん。抑えて下さい。相手は何も知らないお子様やし……。)」
「ヴィ~~~~~!(お前等もこれで分かったやろ。姐さん怒らしたらただじゃすまへん!ここいらで、お開きって事でどないや?7:3でええで!」
「ブ~~~~~ン!(こっちが7ならいいぞ!)」
「ヴィ~~~~~!(そんな訳あらへん、そこいらはアンさんも分かっているやろ……。)」
「ブ~~~~~ン!(なら交渉決裂じゃ~~~~!)」
それと同時にキラービーがホーネットへ突撃して行く。
「ヴィ~~~~~!(後悔させたるわ~~~~!)」
ホーネットが迎え撃つ!
体格に劣るキラービーが、周囲を旋回、仲間を待つ!そして数匹が集まるとホーネットへ群がる。
体温を上昇させ、ホーネットの行動阻害に掛かる。
ホーネットは体格の利を生かし、キラービー達を弾き飛ばす、そして近くにいるキラービーに噛付く。
キラービーも負けじと群がり体温上昇、時折、噛付き、毒針を差す!
キラービーの毒針には返しが付いており、一回しか使えない!そして自身の体内から毒針が抜ける事となり絶命する。
キラービーの戦闘!それはかの第2次大戦、日本が最後に見せ、世界を震え上がらせた戦法……。
特攻なのだ!
対してホーネットはその大きな体にそれに伴う力、正面に敵を見据え、それを悉く蹴散らす。
巨人対小人、まさに王者の戦い……。
――圧倒的じゃないか……。
――………………。
――………………。
――………………。
それにしても、蝶同士の対決は……。
モンシロチョウVSアゲハチョウ。
パタ、パタ、パタ、パタ……。
パタ、パタ、パタ、パタ……。
パタ、パタ、パタ、パタ……。
パタ、パタ、パタ、パタ……。
鱗粉を周りに撒き散らしている……。
――これって、どう言う勝負なんだ?
いつ終わるとも知れず、群同士が互いに羽をはためかせている。
――鱗粉が無くなったら終わりとかかな?
――まあ、どうでも良いか……、俺は俺で仕事するか……。
俺の上に落ちて来る死骸を、細根を這わせ死骸に接続、吸収をしていく、残った残骸は最近使えるようになった亜空間収納に放り込む。
亜空間収納は時間の設定も出来る様で、入れたものが腐敗することも無い、超有用チートスキルだ!
更に、自動選別機能搭載……。
羽、複眼、単眼、触角、毒針、体毛、牙等に分別する。
やはり、多勢に無勢と言っても地力が違うのか、キラービーの死骸が多い……。
蝶達が撒き散らした鱗粉も、一応は亜空間収納にキープはしているが……。
――なんに使うんだろこれ……。まあ、スペースは有り余ってるし、その内何かに使えるかもしれん……。
俺は、落ちてくる物全てを吸収、収納と忙しく動いている。
時折、ガーデンホワイト、スワローテールが落ちてくるが……いったいどうやって戦闘不能になっているのか、疑問だ……。
そしてその時は来た……。
「ヴィ~~~~~!(アンさん!もう終いにしよか……。)」
「ブ~~~~~ン!(くっ!)」
「ヴィ~~~~~!(覚悟!)」
「ブ~~~~~ン!(グエッ!)」
その最後の一匹を殲滅し、ホーネットの勝利で幕が下りた。
「シ~~~~~~!(アタイ等の負けだよ、好きにしな!)」
「シュ~~~~~!(あら!さっきまでの威勢はどうしたのかしら、しおらしくなっちゃって……。)」
「シ~~~~~~!(負ける覚悟無く、戦いは挑まないよ……。)」
「シュ~~~~~!(あらあなた。結構、私好みね……。私達の下につく気無いかしら……。悪いようにしないわよ……。)」
「シ~~~~~~!(好きにしろと言った……。それが望みならそうしよう。)」
「シュ~~~~~!(じゃあ、決まりね……。)」
――なんだか格好良い事を話してる様だが……お前等の戦いの意味が分からん!
そうしてガーデンホワイトは、スワローテールの下部組織となった。
「ヴィ~~~~~!(それじゃあ、姐さん花蜜パーティーと洒落込むとしましょうか……。)」
「シュ~~~~~!(そうね……、勝利の美酒も悪くないわ……、あなた達もおいでなさい!)」
「シ~~~~~~!(アタイ達も宜しいので、最後におこぼれでも貰えれば十分です、姐さん達が美味しい所を貰ってください!)」
「シュ~~~~~!(殊勝な心掛けね……。ますます気に入ったわ。それなら、あなた達の言う事、聞こうかしら……。」
「シ~~~~~~!(そうして下さい……。その方がアタイ達も気が楽です。)」
そして、ガーデンホワイト達を残し、スワローテール、ホーネット達がウツボカズラの中へ侵入して来た……。
「ヴィ~~~~~!(ぎゃ~~~~~!助けてくれ~~!)」
「シュ~~~~~!(なっ、何よこれ!助けて~~~~!)」
「シ~~~~~~!(アワ、アワ、アワ、アワ……。)」
スワローテール、ホーネット達の惨状に、ガーデンホワイト達が狼狽している……。
「シュ~~~~~!(何してるの!あなた達助けなさいよ!)」
「シ~~~~~~!(………………。しっ、知~~~らない!)」
ガーデンホワイト達は、スワローテール、ホーネット達を見棄て飛んで行った……。
そしてウツボカズラの中で徐々に動かなくなる、スワローテール、ホーネット達……。
――まあ生き残ったのが勝ち、と言うならばガーデンホワイトの完勝と言う事になるだろう。
俺はその後スワローテール、ホーネット達を美味しく頂き、今回の抗争の終結となった……。
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