1.03.複眼と五感
強敵との死闘が終わり、俺は死骸を吸収をした。
吸収の祭、個眼を6つと、口器、触角を手に入れる事が出来た。
そして予想外な事に、芋虫は糸を吐く器官も持っており、これで戦略の幅が広げる事も出来そうだ。
個眼は望遠鏡みたいな形をしており、これの集合体が複眼となる。
個眼一個の視界は狭いが、これにより視覚を手に入れる事が出来た!
口器は噛付き型、そして触角は短い髭と言った所か……。
スキルは何も持ってないようで、今回のスキル吸収はお預けとなる……。
スキル吸収は、是非試してみたい……、チートに成り得る可能性を秘めている。
俺は生長と共に、個眼、口器、触角を体内に組み入れる事にし、いつものように吸収→光合成→マナ蓄積→成長→を繰り返す。
そしてついに個眼、口器、触覚とのシナプス回路接続……。
――おお~!
――見える!見えるぞ~~~~~!
魔力でのみ周囲を感じるだけだった、俺の世界に色が付いた……。
――何と言う感動!
――そして感じる……。
触覚により、空気の振動を感じ取れる……。
――この世界はこんなにも眩しかったのか……。
――………………。
――………………。
――………………。
――………………。
――しかし……。
「ジジジ……?(――声も発せる、これで話せる……のか?)」
――不安だ……。
言語互換でも持っていなければ、ただの音として認識されるだけだろう。
と言う事は、言語互換を持ってる者……つまり異世界転生者!なら会話できるかもしれない。
――しかしこの姿だと、ただの雑草に過ぎないからな……。
俺は淡い期待を胸に、生長を続ける。
吸収→光合成→マナ蓄積→成長……。
俺の生長方針はマナの蓄積、葉の増殖。
根、茎の延長……葉の増殖……マナを貯める……。
――………………。
――………………。
――………………。
――………………。
しばらくして、マナが溜まってきたので、狩りの準備……。
蕾を付ける……。
スキル芳香の使用する為だ!
生物の吸収は、マナの蓄積の効果が高い。
芳香で敵を呼び寄せ、捕食する。
それに先の戦闘にて、敵からの戦利品……。
特に視覚の獲得だ……!
個眼を多数獲得し、もう少し精度の良い複眼まで上げたい……。
現在は、葉の付け根から蔦を伸ばし、その先端に個眼を付けている。
要は内視鏡の様な物……。
これを自由自在に動かせれば、死角も無くなるだろうが……。
それよりも、複眼を手に入れ全方位の視覚を手に入れる方が需要が有りそうだ……。
そして敵を誘き出すための策が芳香と言う訳だ……。
武装としては、この前の二枚貝型!そしてウツボカズラ型の蓋が閉まるタイプの二つを構築している。
粘液は毒生成を試してはいるが……。
ピリッとするくらいだ……。
――辛み成分かよ!
――………………。
――………………。
――………………。
――………………。
――有りか……!っでも撃退は良いが……吸収となると違うな……。
――う~~~ん!
――毒は追々生成として、敵を呼び寄せて確実な敵の殲滅……、広域殲滅兵器だな……。
――無理だ……。
――はぁ~。
俺は嘆息する……。
スキルはチート級の筈……。
加護も持ってる……。
持ってはいるが、俺には決定的に足りない物がある……。
人も含め動物なら、ほぼ必ず存在する、そう”親”だ!
虫などの無脊椎動物にも一応親は存在するが、生まれた時に存在しない事が多い!代わりに大量の”仲間”が同時に生まれる……。
それを考えると……。
――植物の種か……俺、頑張ってるよな……。
唯一の救いは、”クルトの寵愛”!
――クルト様と会話出来なきゃ、もう発狂してただろうな……。
――それにしても、魔法が使えないのは魔力不足って事だと思うけど……。
――地道にやるしかないか……。
その後、俺はひたすら生長+芋虫狩りをしていた……。
そしてあくる日、ウツボカズラ型トラップに、ハエに似た虫が嵌っていた……。
――よし!
一気にテンションが上がる……。
それもその筈、複眼持ちの成虫だ……有機物を舐めとる系の虫!敵にならない……。
ハエに似た虫、通称ベルゼとしよう……。
ベルゼは補虫袋の中でジタバタともがいている。
補虫袋の中には、粘液が塗られている。
入ったは良いが、纏わりつく粘液に阻まれて、どんどん動くが阻害されていく。
「ブ~~~~~ン!(ぎょえ~~~!何なんだこれは~~~~!助けてくれ~!)」
――く~、くっくっ!良い格好だな、ベルゼ!そうなってはもう手も足も出せまい……。
取りあえず、言ってみた……。
そしてベルゼの動きが止まる。
完全に諦めた……。
――諦めたらそこで死合終了だよ!…………お前の命もそこまでだ、潔く我の糧となるのだ!
そのままベルゼは、俺に吸収される事となった……。
そして、ベルゼより複眼、単眼、味覚器を入手!範囲索敵機能と味覚を手に入れた……。
俺は、残る五感は嗅覚と聴覚……。
ベルゼの味覚と言うのも早々に変更したいが……。
感覚の獲得は、生きる上での楽しみでもある……。
――あれ?でも、音聞き取れてたような……音……、……振動……、そう言う事か、魔力で振動感知出来るのか……。
――中々、生物っぽくなって来たな……。………………あっ!一応、植物も生物だった……。
ベルゼの殲滅に気を良くした俺は、更なる高みを目指し生長する事にした。。
――まあ、やる事はいつもと同じだが……。
吸収→光合成→マナ蓄積→成長→………………。
――………………。
――………………。
――………………。
――………………。
――………………。
――………………。
――………………。
――………………。
――………………。
いつも通り生長する……、五日ほどたった頃。
俺は30cm程の高さまで生長した。
茎の太さは1cm位まだ2cmまでは無い。
根は広く浅く、周囲3m程に分布させ、根の途中から何本もの雑草を生え揃わせていた。
そして、その日がやって来た……。
その日はひどく陽気な、光合成日和の昼下がり……。
俺はいつもの日課を行ないながら、精神的に日向ぼっこをしていた……。
そんな俺に何かが纏わりついてくる……。
最近よく、芋虫が凝りもせず襲って来ていた事もあり、いつもの事だと放置していた。
――ぎゃ~~~~~!
俺は悲鳴を上げた!
茎の部分に何かが刺さる……。
今の俺には痛覚が存在しない、痛みは無いがマナが吸われていたのが分かった……。
それにビックリして悲鳴を上げてしまったのだ……。(反省)
――こいつは……。
そこに居たのは、芋虫に次ぐ第2の刺客……。
――………………。
――………………。
――………………。
――………………。
――んっ?ベルゼもいたな……そう言えば。
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