1.01.覚醒と初邂逅
――んっ?ここは……。
――何も見えない……。
――何も聞こえない……。
――何も臭わない……。
――何も感じない……。
――ただ、何かが入って来る……。
――何時からここに居るのか……。
――いつまでこれが続くのか……。
――分からない…………。
――分からない…………。
――分からない…………。
――分からない…………。
永遠の暗闇とも言える場所……。
その永遠の暗闇に光が差す……。
――暖かな光……。
――俺……で良いのか?
何かが覚醒したのが分かる……。
それを探す……。
――真理……。
種族:精霊種トレント族
状態:発芽
名前:大門文人
性別:男
属性:樹
スキル:真理 言語互換 共感覚 亜空間 検索 成長促進
ユニーク:吸収 寄生 触手 芳香 光合成
祝福:クルトの寵愛
称号:女神クルトの伴侶
不意に脳内にステータスが浮かぶ……。
――あっ、そうか……。
――俺、転生したんだ……。
――………………。
――………………。
――………………。
――………………。
――………………。
――なんだこりゃ~~~~~~~~!
――トレント!
――発芽!
――はいっ?
――どうなってる?
――精霊種ってエルフじゃないのか?
――と言うか、転生って種からなのか?
――どうする、どうする。
――って誰もいないし……。
――このまま成長で良いのか?
――何なんだ、おい!
――うわ~!
――マジか~!
――詰んだ~~~~。
――まあ、落ち着こう!
――ひっ、ひっ、ふぅ~!ひっ、ひっ、ふぅ~!
――よしっ!
――………………。
――………………。
――………………。
――………………。
――………………。
――………………。
――………………。
――………………。
――………………。
――………………。
――………………。
――………………。
――………………。
――………………。
――………………。
――なんも変わらね~よっ!
――………………そうだ!
――クルト様~~~~!
――クルト様~~~~!
――麗しのクルト様~~~~!
――愛しく麗しのクルト様~~~~!
――清廉潔白、容姿端麗、叡智の結晶で愛しく麗しのクルト様~~~~!
――………………ダメか………………。
――………………。
――………………。
――兄貴!兄貴!
チャラララ~ン、チャラララ~ン
「待たせたな!」
脳内にクルト様の声が響く……。
――何で、それで出て来る!ちょっと面白いけど……。
「仕方ないでしょ!何時までたっても呼ばれなかったんだから!もうあれから2週間よ!」
――これは不可抗力だろ!さっき意識が覚醒したばかりなんだし!
「でも良かったわ、ダーリン!無事なようで……。」
――この状態が無事かどうか……。
「ちゃんと芽生えてるわよ……。」
――でも待たせてゴメン!と言うよりこれからどうしたら……。
「そのまま成長して大丈夫よ。進化すると思うわ」
――そうか!トレントからドリアードとかそっち系だな……人型まで程遠い気もするけど問題ないか。
「ダーリンが気にしてるのは今の容姿を私がどう思うかって事よね?」
――なあ、そう言う事だな……。
「大丈夫よ、ダーリン。私は精神体だからダーリンに合わせた存在に変化できるの、ダーリンはダーリンの道を進んで……。」
――ありがとう、ハニー!いい奥さんを貰って俺は幸せだよ。
「あっ、ごめんなさい!私も仕事が入ったみたい、また後で連絡するわ……。愛してるわよ、ダーリン!」
――俺もだよ。ハニー!
その言葉で、女神クルトとの連絡が途絶えた。
――とは言った物の……。どうするべきか……。
――多分ユニークってのは、種族スキルだろうし吸収なんてヤバそうなのもあるからな……。
――取りあえず、使ってみるか……。
――吸収……。
周りから水分、養分が体内に入るのが分かる……。
――………………。
――植物の根と同じかよ!
――………………。
――………………、これで成長するのか………?
――それじゃ触手は根って事か……。取りあえず、根を張らない事には成長もままならないか……。周りの様子も分からないし……。
それから俺は、時間の感覚も無くひたすら吸収を繰り返す……。
――ふぅ~、1日くらいか経ったか?
――真理……。
種族:精霊種トレント族
状態:若葉
名前:大門文人
性別:男
属性:樹
スキル:真理 言語互換 共感覚 亜空間 検索 成長促進
ユニーク:吸収 寄生 触手 芳香 光合成
祝福:クルトの寵愛
称号:女神クルトの伴侶
――おお~!葉が生えた……これで光合成が出来るか……。
――光合成……!
体内に何かのエネルギーが蓄積される……。
――これはっ……!マナか……。
――自分の生態が分からないってのも問題だな……。
――整理すると、根で水分、養分を吸収し光合成によりエネルギーに変換って感じか……。
――マナって魔力みたいな物の筈だから……。これを自在に動かせれば周りの状況も分かるか……。
――よし!何かつかめて来た。
――吸収→光合成→マナ蓄積→成長→吸収の順に繰り返せば良さそうだ……。
俺はそれを繰り返し、更なる成長を遂げる……。
当たり前の事だが夜になると光合成が出来なくなる様で、時間の感覚が何となくわかるようになった。
そして光合成の出来ない時間帯は、マナを纏わせたり体内で動かすようにしていた。
そんな事を繰り返し続け、何とか自分の周りの感覚が掴めて来た頃、その者がやって来た……。
ジジジ……ジジジ……。
不快な音を立て、やって来るその者は虫!
ジジジ……ジジジ……。(おっ!美味そうな葉っぱあるじゃん!いただきま~す。)
――畜生~!言語互換で何言ってるかまで分かるのかよ!
――拙いぞ……。この身体放棄しかないのか……。真理……!
芋虫
――何だよ!本当にただの虫じゃね~か!芋虫すら倒せねえ~俺って何なんだよ!
――取りあえず退避だ!根が無事なら何とかなる……。
――パージ!
俺は襲撃を受けてしまった葉を止む無く切り離す事にした……。
――くっそー!今度来たら、徹底抗戦だ!
――対虫装備、準備だな……ウツボカズラ、ハエトリグサ、ラフレシア……。
――くっ、くっ、くっ!今度、来た時はお前の最後だ!
――………………。
――はぁ~……。それにしても豪いハードモードだな、この世界……。
――ハニーの為に魔王倒せるのか?
こうして大門文人の異世界転生生活の幕が開けた……。
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