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1.08.探索そして脱出へ


 ワイルドボアの身体を手に入れてから約1週間!


 ――うむ!中々の筋力!


 俺は草でありながら、この世界で移動している。


 それと言うのも、ワイルドボアの身体に根を張る事にしたからだ。


 この体の心臓に本体を置き、脳内の球根でワイルドボアの身体をコントロール、背中には体毛の隙間を縫って、草が生え光合成も出来る。


 マナの吸収は、ワイルドボアの至る所から、蔦を出し触手の様に使って、得物を狩ったり、他の木々から分けて貰ったりと……。


 様々な、事が出来るようになった……。

 

 ――ん?あれ!なんかPモンで背中から花やら、触手やら出してたモンスターがいたような気が……。


 ――ヤバいか……著作権とか?


 「大丈夫よ~!ダ~リ~ン!」


 ――またいきなりだな……。と言うか、久しぶり!


 「久しぶり~、会いたかったよ~。って会えないんだけども……。」


 ――それより大丈夫って……。


 「うん、大丈夫!ダーリンの方が野性に溢れてるわよ!どう見てもトレントには見えないし、どこかのヌシ様的な感じ……。触手も索敵用の複眼付きと、攻撃用の毒針付き、確保用に二枚貝型とウツボカズラ型、それとその背中の大きな花はラフレシア型、芳香フレグランスも多種多様に取り揃えてるみたいね。後はその鉤爪みたいなの、それ凶悪過ぎるわよ……。吸収スキル用でしょ!」


 ――まあ、吸収専用って訳じゃ無いんだけど……。


 「あら、違った?寄生でもするのかしら……。」


 ――半分正解かな……寄生もするけど、主な目的は、傷を付けて種を蒔く!


 「なっ!なんて恐ろしい……。」


 ――思って無いでしょ、ハニー。


 「うん。思って無いわ、ダーリン!どんな姿でもダーリンはダーリンだもの……。」 

   

 ――ありがとう、ハニー!


 「いいのよ、ダーリン!また少し顕現に近づいたんだから……。」


 ――少しづつ近づいてるとは思うけど、まだ先だな……。待たせて悪いとは思うが、移動手段を手に入れた。これからは率先して狩りが出来るから、マナの確保も容易になるし、出来れば人型の身体を手に入れたい!


 「そうね……、ダーリンの思うままに生きて!」


 ――そういや顕現ってどうするんだ?


 「う~ん……。色々あるけど、ただ声を届けるだけなら供物、精神体の顕現に祈祷、後は依代を用意して貰って、それに私の力の一部を授ける方法とか……、生贄に受肉する方法もあるわね。……私のおすすめは一番最後!受肉ね。男女の番を準備すれば、ダーリンも寄生できるし万事オッケーね。肉体が老衰で死亡するまで一緒に居れるわ!」


 ――生きるって考えると、それが理想だな……。 


 「それで、ダーリンはこれからどうするの?」


 ――まあ、探索及びマナ確保!狩り、吸収、光合成の繰り返しけど、この森ってどこなんだ?


 「何処って言われても、不浄の森って呼ばれている……大森林地帯……。」


 ――不浄の森!


 「の、西側の離島にある、名も無き森ね。」

 

 ――あれ?知らない内に最強に成ってました的なフラグは?


 「無いわね……。この島の最強になら、なってる様だけど……。」


 ――えっ?もしかして、このワイルドボア強かったの?


 「う~ん……。単純に力だけならゴブリンに勝てるけど……。集団行動をとるゴブリン達の餌ね……。」


 剣と魔法の異世界ものの、ゲーム、小説、マンガなどに出て来る最弱種!


 ゴブリンorスライムのどちらか……。


 それの餌!


 このワイルドボアにしたって、俺を餌としか見て無かった……。


 ――そっか~……。ゴブリンの餌か~。


 「だっ、大丈夫よ!ダーリンには私が付いてるし……。」


 ――ありがとう、ハニー。慰めて貰えるだけ嬉しいよ……。アハハ……。


 クルト様より、俺の惨めな現状を聞きショックを受けたが、逆に考えればワイルドボアとは言え、肉体を手に入れた俺が無茶しない為の抑止に繋がったと思っておこう。


 その後、クルト様に仕事が入ったと言う事で、会話を終えた。


 クルト様より頂いた情報を考察する。


 今の俺は動物に毛が生えたぐらいの戦力。


 ここは、大陸より隔離された離島。  

  

 クルト様の顕現には、大量のマナと受肉するための肉体が必要。


 離島と言う事で外敵が少なかったのが、俺が生存できた理由だろう。


 それにしては、強敵揃いだったように思えるが……。


 ――さて、マナと肉体を確保するのに大陸に乗り込みたいが……どうしたものか……。

 

 離島と言うからには、海を越える必要がある。


 俺は肉体を手に入れてから1週間、近場をウロウロしながら肉体改造していただけだったので、この島の地理にも疎い。


 ――う~ん……。取りあえず、島の端にでも行ってみるか……。


 そうと決まればと、俺は一直線にどこかへ進む……島なんだからどこかに着くだろう。


 半日ほど進むと、海が見えた……が、陸が見えない。


 時計回りに島を周るが、その日は陸を見つける事が出来ずに日が沈む。


 俺はトレントになってから寝た記憶が無い、精神的には寝ているのだが、肉体の方は呼吸する様に光合成と吸収を繰り返している。


 ところが、ワイルドボアの身体は疲れと言うものが有るのだろう。


 肉体が重い感じがする。


 俺は、ワイルドボアの身体を休ませる為、近くの森に身を寄せた。


 ワイルドボアの身体を横にし、背中から触手を伸ばす。


 近くの木に寄生し吸収を試みる。


 その木が見る見るうちに枯れて行く。


 ――う~ん。ワイルドボア程じゃないが割と貯め込んでるな……。これはこれで……。


 少しウハウハな感じで周りの木々に、触手を這わせて行く。


 一本、また一本……。


 それは夜明けまで続いた……。


 ――やってしまった……。


 日が昇り視界が良好になったそこは、ワイルドボアの身体を中心に半径30mの木々が、根こそぎ枯れていた……。


 球根で内包している魔石も一回り、いや二回り、もしくはそれ以上に大きくなっている気がするが……。


 ――見なかった事にしよう。……と言うか、誰にも文句言われないだろうし別にいいか……。

    

 ワイルドボアの身体を起こし、俺は探索を再開する。


 探索を開始し昼近く、切り立った断崖に出る……そこから、海の対岸に陸地が見えた。


 思ったよりはっきりと見える事から、そんなに遠くは無いようだが……。    


 ――見つけたは良いが、本当にどうしよう。……船?……いや、海底に根を伸ばして……時間がかかりそうだし……。


 そして俺は空を見上げる。


 ――……空か……。


 植物の飛行……タンポポの綿毛。


 俺が思い付いたのが、それだった。


 幸い、海から大陸へ向かい風が吹いている、その風に乗れば問題なく到達できるはず。


 虫への寄生も思い付いたが、鳥類がそこら辺を飛んでいたのを見て廃案とした。


 自由とはいかないが、外敵の少なめな綿毛となった。


 そして俺はワイルドボアの身体を亜空間に入れ、断崖の近くにある、一番高い木に寄生する。


 木の天辺に綿毛状の身体を構築、後は突風が吹くのを待つだけだ。


 まあ、海に落ちても海藻に体質を変えれば、陸に流れ着きそうだし問題ないだろう……。


 そしてその時は来た。


 西から東に向け猛烈な風が吹く!


 俺は木から寄生を解除!


 大陸に向け、その綿毛状の身体を浮かす。


 秒速10mの風が俺を運んで行く……。


 そして、宙を舞う事数分……大陸上空にたどり着く。


 徐々に体積を増やし着陸する。


 そうして俺は、無事島を脱出、大陸大地に足を付けた。


 これから未知なる冒険が待っている様に、風に(あお)られ木々が(うごめ)いていた……。



一応、1章終了です。

次回2章から、ヒロイン登場予定です。

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