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梅雨時の失敗

作者: 新田 葉月
掲載日:2015/06/20

いつも以上に駄文です。そして、短いです。お気をつけ下さい!


篠原:内気な女の子。異性と話すのが苦手。山瀬が好き。

山瀬:爽やか系男子。イケメン。学級委員長。

梅雨時の失敗


「あー、失敗したなぁ」

 そんなつぶやきは私の隣から。


 外は、近くの川が氾濫しないだろうかなんて不安を与えるほどの大雨。土砂降りっていう表現がぴったりだ。

 隣の山瀬くんは憂鬱そうな顔をしている。外を見つめる瞳に雨が映っていた。

「流石に突っ切るのは厳しいかぁ」

「そ、そうだね。この土砂降りで外にでたら教科書使えなくなっちゃうよ」

「あー、そっか」

「それに、や、山瀬くん電車……だったよね。乗れなくなっちゃうかも」

「うわぁ、その可能性は考えてなかった……」

 頭を抱える山瀬くんはクラスメイト。ついでに言うと学級委員長。私は副委員長だ。

 

 いきなりの大雨でいつも置きっぱなしの傘も今日はない。こんなことになるなら、降り始めた時に委員の仕事を中断して帰れば良かった。

 置き傘あると思って油断しちゃった。山瀬くんも同じ気持ちだったみたいで、しきりに傘入れをみては失敗したと呟いている。


「えっと。この調子じゃ、生徒会室の置き傘も無さそうだね」

「一応行くだけ行ってみる?」

「う、うん」

 作業している時はよかったけど、改めて二人きりで会話すると緊張する。いちいち言葉が詰まって出てこない。

 せめて雨でよかったのかも。沈黙は雨音が消してくれるから、気まずい雰囲気にはならない。

 二人で並んで歩き出す。

「あ。生徒会室電気消えてる」

「えっ」

 確かにもう完全下校の時間を少し過ぎてしまっている。生徒会室の電気が消えているのも仕方ないかもしれない。

「詰んだ……」

 山瀬くんががくりと膝をついた。

 きゅっと鞄を握りしめる。

「あの、」

「仕方ない!」

 私の呼びかけはそれより大きい山瀬くんの声にかき消された。

「俺、コンビニまで走って傘買ってくるよ、篠原さんは荷物みてて」

「や、山瀬くんが濡れちゃうよ?」

「大丈夫、俺濡れたくらいじゃ、風邪引かないし! 電車に乗るのはあきらめて走って帰るよ!」

 クラスの女子に好かれる理由がよく分かる爽やかな笑顔を見せて走り出そうとする山瀬くんのシャツをとっさに掴んだ。

「あ、あのねっ」

 かぁぁっと顔が赤くなっているのが自分でも分かる。

「ん?」

「えっと、わ、たしっ。その……お、りたたみ傘があって……。そ、それで、あるんだけど、でも、その……ふ、ふたりではその、」

 びっくりするくらいつっかえつっかえだ。言いたいことがまったくいえない。

 山瀬くんはそんな私をみると困ったように笑った。

 よかった。伝わったみたい。

「大丈夫だよ、流石に入れてとか図々しいこと言わないから」

「えええええ!?」

 あれ、伝わってない……!

「うん?」

 きょとんとする山瀬くん。

「あの、そうじゃなくて。その」

「いいよ。俺のことは気にしないで」

 気にします。

 今にも走り出そうとする山瀬くんの手を少し強めに引く。

「ち、違うの」

 すごく恥ずかしくてなかなか言葉にならないせいで誤解をうんでしまったみたい。言葉が出てこないのは恥ずかしいからで、断りの言葉が言いにくいからじゃないのに。

 他の人ならともかく、山瀬くんと傘に入るのが嫌だなんて、そんなことあるわけがない。

「えっと、その……」

「うん」

 つっかえつっかえな私の言葉を山瀬くんは急かさずに待ってくれる。山瀬くんは勘違いしたままだから、すごく嫌な気持ちになってるはずなのに。優しいなぁ。

 こんな優しい人に不愉快な思いをさせたままでどうするの。がんばれ、私。

 ふうっと息を吐いた。

「ま、間違っちゃったというか。いつもはこんな傘じゃないんだけど……」

 言い訳がましく語尾が濁る。

 ああ、本当に失敗。なんで今日に限って妹の傘を持ってきちゃったかなぁ。

「えっと、妹ので、キャラクターの、傘で。二人で入るには小さくて……あんまり効果はないかもしれないんだけど。教科書くらいは守れるんじゃないかなぁ……と」

「え」

 山瀬くんがぴしりと固まった。ややして、顔を染めて頬をかく。

「あー、……それはいわゆる相合い傘というヤツですか」

 こ、言葉にすると居たたまれない……。

「わ、わっ、ご、ごめんね、嫌だよねっ、あの、私今からコンビニまで傘買ってくるからっ」

「だーめ。俺が最低な男じゃん? しかも、コンビニより駅の方が近いし」


 それに、と山瀬くんは続ける。相変わらず、頬をそめながら。

「相合い傘とか一回やってみたかったんだよね、駄目?」

「う、ううんっ! じゃ、じゃあ一緒に入ろうか」


 その後は少女漫画の定番みたいで。

 近い距離にドキドキして、触れた手にときめいて、傘をちょっぴり私の方に傾けてくれる山瀬くんの優しさにきゅんとした。


 

 梅雨時の失敗は大きな幸せを呼んでくれた。


 明日は山瀬くんになんて話しかけよう。なんだか、もっと上手く話せる気がするの。


お読み下さりありがとうございました。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 読みやすく、女の子の心情がよく伝わってきました。 [一言] こんにちは。お久しぶりですー! 活動報告にコメントしてくださり、ありがとうございます! 篠原さん可愛いです。 これをきっかけに…
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