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エピローグ

「ねえ、おばあちゃん。星の砂のこと、覚えてる?」

 僕は、縁側に腰掛けている祖母に尋ねた。秋の陽射しが心地良い日溜まりを作っていて、そこはいつも祖父母の特等席になっている。

「ああ、覚えてるとも。私がまだ小さかった頃に、私のおじいちゃんが教えてくれたんだよ」

 幸せが遠くへ行ってしまったときは、浜辺で海を見つめてごらん。波に洗われて、星が顔を出すよ。星の砂を集めれば、幸せはきっと、戻ってくるよ。

 幸せを失うという言葉の意味を知ったとき、彼女はその話を思い出した。浅瀬に光る貝は、正しく命の輝きに見えたという。あれ以上の美しい光景を、見たことがないと。

「パァルに、ちゃんとお礼を言ったかい?」

「え?」

「星の砂を、集めてくれたんだろう?」

 祖母の言葉に、僕は驚いて見つめた。聞くと、パァルが毎晩のように何処かへ出掛けて明け方まで戻らないことを、両親が心配して近所の人たちに聞いて回っていたという。行き先を尋ねても言わないし、きつく叱ってもやめないのだと。僕は膨れっ面のパァルを想像して、思わず笑みを零した。

「ちゃんと、ありがとうって、言ったよ」

 そんな照れくさいこと、パァルは好きじゃない。解っていたけれど。それを聞いて祖母は、嬉しそうに頷いた。

 そこへ、外出していた祖父が戻ってきて、祖母の隣に腰を下ろす。どうやら、近所の和菓子屋に、祖母の好きな大福を買いにいっていたらしい。この二人は、本当にいつも仲が良いのだ。

「そういえば、内緒だって言った星の砂の話を、パァルに教えちゃったよ」

 教えたのは随分前のことだったが、僕は正直にそう告白した。すると祖父は、笑いながら頷く。

「それでいいんだよ。パァルは蒼の大事な友達だろう。星の砂の話は、そうやって、大事な人へ伝えていくんだ。そうすれば、いつか、心から嬉しい奇跡が起こるから」

 僕は、祖父にもその奇跡を報告しようかと思ったが、縁側で微笑み合う二人を見て、これ以上邪魔をするのはやめようと、自分の部屋に戻った。開け放った窓から流れ込む風は、もう冷たくて、僕は窓を閉めようと手を伸ばす。すると、

「ステラ! 待て!」

 聞き慣れた声とセリフが、遠くから聞こえてきた。飼い主の手を離れたリードを引き摺って全速力で駆ける犬と、それを追いかけるパァルの姿が見える。

「蒼ー! ステラを捕まえてー!」

 窓からのぞく僕に気付いているのか、パァルが叫んでいる。万華鏡のお返しにあげたリードは、何の役にも立っていない気がした。僕は軽く溜め息をつきながら、まだ新しい黄色いスニーカーを履いて、玄関のドアを開けた。


「もう一度君に会いたい」は、いかがでしたか?

短いお話なのに細かく区切ってしまって、読みづらかったのではないかと反省しています。

最後まで読んでくださった皆様、本当にありがとうございました!

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