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 始業式が終わって、いつもなら真っ先に探していた親友の姿を探さずに、僕は一人で下駄箱に向かった。彼との喧嘩の原因は、いつも本当に些細なこと。今日、彼を怒らせてしまった原因は僕のほうにあったが、何だか謝るのが悔しくて、違うクラスになったのを良いことに、一日中、口をきいていない。

『新学期はお揃いのスニーカーで登校しようって、約束したのに!』

 僕の履き慣れた靴を見るなり、彼はそう言って咎めた。春休み、一緒に買い物に行って、同じスニーカーが目にとまったのが嬉しくて、彼は赤を、僕は黄色を買った。学校は、もちろん指定の靴があって、そんな派手な色は禁止だったが、僕も彼も、気にするタイプではない。新学期に履いていって、どっちが長く見つからずにいられるか競争しよう、と約束していた。

『わかった、先生に叱られるのが怖くなったんだろ。意気地なし!』

 その言葉と口調にカチンと来た僕は、思わず、彼の頬を殴った。もちろん彼も、お返しに僕の頬を殴った。

『蒼のバカ!』

 叫んで、さっさと歩いて行ってしまう後ろ姿が憎らしくて、僕はわざと、ゆっくり歩いた。



『蒼、蒼! 目を開けてよ』


『いつまで寝てるのさ? 早く起きて、一緒に遊ぼうよ』



 幼稚園で、彼と知り合ってから、いつも一緒。雨の日も、風の日も、雪の日も、彼と遊ばない日はなかった。クラスが変わって、新しい友達ができても、彼だけは別。まるで空気のように、当たり前に側にいるけれど、特別な存在だ。そんなことを、面と向かって口にはしない。伝わっているのだと心から信じられるから。そして彼も、同じように思ってくれているということも。

 一人の通学路が淋しくなってきた頃、ようやく冷静さを取り戻した僕は、足を止めた。お揃いの靴を履いていく約束を破ったのも、先に殴ったのも、僕。一言、謝れば、すぐに仲直りできる。それは、確実だった。今までそうやって、僕たちはいつも仲直りしてきたんだから。……彼はまだ、学校だろうか。

 一刻も早く謝りたくなった思った僕は、くるりと踵を返し、再び学校へ向かって走り出した。赤になったのを見たことがない横断歩道の信号が、珍しく赤だったことだけは、覚えている。……そのあと、僕は……。


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