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翌日、真夜中に起き出した僕は、再び目の前の海へと足を向けた。堤防の階段を降りて行くと、そこには既に、昨日の少年の姿があり、波打ち際で貝を探している。僕に気付いて、来てくれてありがとう、と微笑んだ。綺麗な容姿が、月明かりの下で、際立つ。手に持っているのは、昨夜と同じ、フラスコのような容器で、底のほうが光って見えた。
「ねえ、名前は?」
僕は、真っ先にそう尋ねた。昨日、聞きそびれてしまったから。
「真珠」
「僕は、蒼。うち、すぐそこなんだ」
幼い頃から、遊び場と言えば、海だった。この浜辺に打ち上げられる貝殻の名前は、全て覚えてしまった。贅沢だと言われそうだが、わざわざ海水浴だの、潮干狩りだのと言ってここへやって来る人々の気が知れない。
「さあ、頑張って集めなきゃ」
今度は容器を、落とさないように砂浜に置いて、作業を始めた。その星の砂は、入っていてもごく微量で、フラスコに半分も集めようと思ったら、気が遠くなる。一時間も経たないうちに、昨夜、彼が大袈裟に溜め息をついていた理由が解った。今、手に取った貝の中にも星の砂を見つけられなかった僕は、少し離れた所で貝を探すパァルを、そっと窺ってみる。その真剣な表情から、彼が本当に星の砂を必要としていることが知れた。
いったい、何のために? 気になったが、尋ねてはいけない気がして思いとどまる。確か祖父は、星の砂を集めると、遠いところへ行ってしまった人を呼び戻せるのだと言っていた。嘘か本当か、自分もその力に救われた一人なのだと。この海辺の街で生まれ、十四歳になった今まで一度もその光る貝を見たことはなくて、祖父の話の信憑性を疑うばかりだったが……こうして必死に探しているところを目の当たりにして、自分にまでその貝の姿が見えるということに、何か胸騒ぎのような鼓動の乱れを感じる。これから何かが起きようとしているのかも知れない、そんな期待と不安が、僕の中を心地良く刺激した。




