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やはり阿部さんは素晴らしい  作者: 薔薇色の何か
異世界に慣れましょう
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第九話   保護院に到着しました

清田さんは走りました。

石畳につまづき、周囲の人に奇異の目を向けられても、気にせず駆けてゆきました。


息遣いは荒れながらも、清田さんは必死に保護院を探します。


視界が色濃く変わってゆきました。


アムスハウエル図書館。トリシア食堂。サイラ武器店。


色々な施設はあるものの、保護院だけは見つかりません。


どこにあるんだろう。見つからないと大変だ。速く見つけないと。


清田さんは、これまでにもない程焦りを感じました。


視線を素早く泳がせると、数メートル先に、王立少年少女保護院、とでかでかと書かれた

石碑を見つけました。


よかった。見つかった。


清田さんは安堵して、盛大な溜息を心の中ではきます。


石碑の横にある、大きな門を通り、清田さんは中に入りました。


清田さんは興味深そうに辺りを見回しました。

保護院は、大きな壁に囲まれていました。中は整地され、小さい建物、遊具があります。

そこに、まだ幼い子ども達が、泥団子であそんだり、遊具で遊んだりして歓声をあげています。


清田さんの緊迫した面持ちが少しほぐされました。


本体とみられる施設は、白と茶色の壁が特徴的な建物でした。

多少年季も入っているようで、所々に罅が入っていましたが、それがまた雰囲気を醸しています。


清田さんは、あまり視線を浴びたくないからと、子ども達に気づかれない様に、

足音を立てずに施設の中へと向かいました。


 清田さんが施設に入ると、待っていたかの様に一人の女性が立っていました。


「あ、来たね。この子です。ヨルダンさん!来ましたよ!」


女性はこれでもかという程の大きな声で叫びました。

こんなに大きい声が出て羨ましい、そう清田さんは思いながら、施設内を見ます。

施設内は、ニホンの学校とそれとなく似ているようでした。


「今行くからの、ちょっとまってな」


小さい老夫の声が聞こえます。たとえか小さくても、しっかりと清田さんの耳には届きました。


すぐにぎしぎしと床が軋む音が聞こえ、手前の廊下の曲がり角から、白い髭を蓄えた

背の低いおじいさんが現れました。

身長は清田さんと比べると、頭一つ分低いようです。


おじいさんは女性の隣に立つと、清田さんをまじまじと見つめました。


「アベキヨタで、間違いなかったかな?」


「はい」

むふう、とおじいさんは一息つきました。

とても温厚そうなおじいさんに、清田さんの心はまた少し、ほぐれていきました。


「時間は一分前と・・・・・・まあよろしいでしょうな」


「ヨルダンさん。ちょっと時間に拘りすぎじゃありません?」


女性が呆れたようにおじいさんを見ました。

これがクリスの言っていた事なのですね、と清田さんは理解しました。


「うるさいのう・・・・・・これだから近頃の若い奴は・・・お前もそう思わんかい?」


視線を此方に向けられて清田さんは慌てましたが、

女性の静止によっておじいさんは静まりました。


「ヨルダンさんが喋ると長くなるからもうやめて!喋るならニゼラと喋って!」


女性がおじいさんを一喝すると、おじいさんは残念そうに首をもたげました。


「今日は疲れたでしょう。もう寝なさい。そうだ、私はイシュゲル。こっちのじいさんは

 ヨルダン。覚えておいてね。部屋を用意してあるから、そこでゆっくりしてね」


先程の覇気は消え、愛想の良さそうな、お姉さんの声に早代わりしていました。

イシュゲルがにっこり笑うと、清田さんも返しました。


「案内するから、ついてきて」


「はい」


入り口のすぐ横にあった階段を登り、二階の廊下を進むと、沢山の扉が見えてきました。

部屋数はかなり多いようです。一つ一つの扉の上には、球体から光が漏らされていました。



「ここが、あなたの部屋ね。階段からは遠いけど、それ以外は特になにも無いわ。

 明日、呼びに来るから、それまでは時間潰しててね」

清田さんには、一番奥から3番目の部屋が提供されました。


イシュゲルも言った通り、階段からはかなり遠そうです。

イシュゲルは清田さんを扉の前に案内し、子ども達を見なきゃいけないからと、

足早に去っていきました。


どんな部屋だろうと、清田さんは少し緊張しながら扉を開けました。

ギギギ、と扉が軋む音がします。


部屋は、小さめでした。中にはベットと、勉強机と本棚が用意されています。

多少埃は被っていましたが、まだまだ使えそうです。それ以外は何も無く、長い間放置されていた

ことが見て取れました。


清田さんの部屋の窓から、歓声を上げながら遊ぶ子どもの姿を見ることができました。

清田さんは窓を開け外の子ども達を見たり、この世界について物思いに更けこんだりしながら、

自然と眠りについてゆきました。




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