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やはり阿部さんは素晴らしい  作者: 薔薇色の何か
異世界に慣れましょう
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第三話   食料になりそうな何かがありました

清田さんが目を覚ました時、眩い光を放つ太陽が目の前に居るような感覚に陥りました。

目を閉じていても、光だけが目蓋を通して目に映ってしまう。

太陽を見ている時と同じ感覚でした。


清田さんが驚いて目を開けた時、真っ白に光る何かがふわふわと飛んでいました。

それは右往左往しながら、清田さんの目の前をすうと通り過ぎていきました。

その何かは、繊細で、一本一本の毛が、白く輝いていました。

風に漂う、タンポポの種の様な、そんな不安定で可憐なそれは、清田さんにはとても可愛らしく、

愛らしく見えました。慌てて清田さんは上体を起こしました。枕代わりの鞄が汗ばんでいます。


清田さんが呆然としながらそれを見ていると、何か叫び声が聞こえました。

 小さい歓声をあげながら、畦道を忍ぶ様に歩いてきています。少年達がそこに居ました。

何かをこそこそと話すと、足音をたてないように、慎重に少年達は手にしていた網を掲げました。

蛍光灯の様な淡い光を放つそれは、まるで気づいていないかの様に、そよそよと飛んでいます。


少年達は、手にしていた網をそれに荒々しく投げつけました。それは勢い良く下降線を辿り、

地面で慌ておののきます。白い毛の一本が散り、眩い燐光を放ち、消滅しました。

少年達は緊張したような、嬉しくて興奮したような面持ちで、白いそれに近づきました。


リーダー格の少年が皆を下がらせます。

すると、少年はそれを網から取り出し、自の手の内で、殴り始めたのです。

 それは、くちゃくちゃと鈍い音をたてながら、白い液体を出します。

液体が出ると、少年は汚そうに払いのけ、より強く殴る様に見えました。


「えっ」

清田さんは小さくその言葉を発しました。自らの目の前で、そんな横行が行われているのです。

しかも、清田さんは気づかれていません。如何してでしょう。

清田さんは、少しがっくりとしながら、目の前の事の経緯を考えました。

白い何かがきて、少年が来て、殴った。それしか分かりません。深い因縁でもあるのでしょうか。

それか、そういった風潮の世界なのでしょうか。清田さんにはどちらとも確証付け難いことでした。


白い何かが、ふわっと、急に消滅しました。

少年の手の中には、指輪の様な、ブローチの様な何かが握られています。あれは何でしょう。


少年達は慌しく網と、周辺に落ちた白いその毛を一本残らず拾い上げると、畦道を通り、

影に消えました。


清田さんは困惑していました。が、この世界のルールを知らないと、反論は出来ないでしょう。

そういうところかも知れない。自分が異常者なだけだ。そう清田さんは思おうとしました。


「・・・・・・ふう」


清田さんは溜息をはきます。なんだか意味が分からない。どうしよう。そして、腹も減った。

生きる為にわたしは何をすべきなのか分からない。どうにかして、あてを探さないと。


焦燥感に駆られた清田さんは、食料となるべきものを探し始めました。

畑を探し、畦を探し、清田さんが漸く食べられるものを探した時、

もう日が暮れようとする所でした。清田さんの腹は、空腹を通り越して、痛みを通り越して、

無の感覚に陥っていました。


清田さんが探し出したものは、筍と類似する物体と何か食べれそうな大きな葉を持った茎、

裂くと綿が出る植物でした。これでも結構量はあるので、

清田さんは自分の眠っていたところへもう一度戻り、満足げに並べました。

食べれるのならなんでもいいや。清田さんはまず、一番に食べられそうな筍らしき物体を口に運びます。


硬そうに清田さんの口内ではごりごりと鳴る触感と戦っていました。何故か苦い。そして表面

の皮を剥いでいない。硬い。ですが清田さんの面持ちは満足げに光輝いていました。

一回り食べ終わった後で、何も問題ない事から、当分の食料はこれだなと清田さんは決めました。

 不味くても、硬くても、食べれて問題なければいい。

清田さんの価値観は一日で変わってしまう程弱かったのでした。


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