第一話 太陽光が反射しました
こんにちは。こちらの小説は2012年にほのぼの進めていたものです。
2020年になり、投稿済みの所を少し修正しながら、のんびり再開しようと思います。
清田さんが異世界トリップしたのはつい先程の事です。
清田さんは初めのうち、ドッキリか何かだろうと思っていましたが、
ドッキリを仕掛けてくれる友達は居なかったという事に気づきがっくりと項垂れました。
それにしてもここは何処ですか。
清田さんはそう逡巡しました。
手元にあるのは、学生鞄の中に入った数冊の教科書と飲料のみ。
ぐるりと辺り周辺を見渡すと、みごとに田園風景が広がっていました。爽やかな風です。
稲穂が青緑に染まり、紫や紅色の花が優雅に揺れていました。
遠くには日本の書院造と似た建物がぽつぽつと見えています。
またその奥には見上げるにもつらい山々が連なっており、
太陽がよいこさと御顔を出しておられました。
人気は無さそうでしたので、清田さんは辺りを探索する事にし、
適当に人が居る所に足を運ばせました。清田さんの黒髪が微風に揺れます。
生憎学校帰りでした故、服装は膝丈までのスカートとブラウスです。
清田さんは、スカートよりもズボン類の方が落ち着くタイプですので恨めしげにスカートを一瞥し、
パンパンとスカートを叩きました。
見覚えの無い風景ですよ、どうしたことでしょうか。
清田さんは歩きながら軽く深呼吸をしました。家では親が晩飯を炊いている頃でしょう。
これが夢だったらいいのにな、と軽く頬を抓みました。痛そうに清田さんは頬を擦ります。
清田さんが畦道を歩いていると、遠くに畑作業をしていると思われる人が居られました。
清田さんがゆっくり忍ぶように歩いてゆくと、畑作の人が訝しむようにこちらを見ています。
あたふたとする清田さんを尻目に畑作の人はまた作業に没頭しはじめました。
50代半ばでしょうか、丁寧にかりあげられた頭が太陽光に反射しています。
服は茶色の布をあしらった様に見えますが、少し乱雑に作り上げられていました。
「すいません。あの、お時間頂いてもよろしいですか?」
清田さんの少し低めの声が響きました。畑作の人がこちらをまた訝しむように見て、
意味が分からない発音の言語を発しました。
清田さんには意味が分かりません。
ここは異国の土地なのですから、言葉が違うのは当然の事です。
清田さんはそこまで頭が回っていませんでした。
「すいません、人違いです」
清田さんは一礼をして、そそくさと退散します。
こんな事も考えられないなんて、わたしも落ちぶれたものだ・・・・・・。
ああ、作業を中断させてしまって畑作の人すんません。
そんな事を清田さんは考えていました。清田さんは、畑作の人の方を一度も振り返らずに、
真っ直ぐに畦道を歩いてゆきます。ひゅうひゅうと風が吹きました。
清田さんはどうしていいか分からずに、とりあえず暗いほう暗いほうへと歩いてゆきました。