表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
81/126

恋の話 緋色

遅くなり、申し訳ございません!

バイト中も悶々と考えてしまって、パートの先輩に「なに、ぼんやりしてんのっ!仕事中!」と、一喝貰ってしまった。すんません。

帰り道、自転車を漕ぎながら「初恋なぁ…。」と三度(みたび)考えてみたが、どうやら自分は恋をした事がないようだ。「なんや、枯れたやっちゃなぁ。」幽霊が憐れみを含めて言ってくるので「そんな余裕も環境もなかったんだよ。」と、悪態をつく。

なにせ、父がプレイボーイ。たとえ気付かれないように大人が気をつけていても、子供は聡い。小学校中学年くらいには、彼女達とどんな関係か判ってくるしナニをするかも解る。そこに興味を持たず、(ただ)れた子供に育たなかったのは(ひとえ)に“みつ子さん”の影響が大きい。早朝、彼女達が帰り、父も出勤した後の片付けや掃除をする“みつ子さん”は、表情にも出さずとも、冷たいオーラを背中から醸し出していた。子供心に「()()はならないようにしよう。」と学習した一コマである。中学になり生理がくるようになった時、相談したのは幼なじみの母親で、彼女はきちんと説明と対処法を教えてくれた。そして、「体と心」のありかたを話してくれた。彼女自身、若い頃に過ちを犯して、後に色々と悩んだと。今でこそ幼なじみ姉弟(きょうだい)の親になれたが、なれなかった可能性もある。もし、あの時に戻れるならば『あなた自身が、一番あなたを大切にしなさい』と言ってやりたい。と、我が子にも言わない話を自分にした。自分は、それを誰かに話す事は一生ない。「好きになる事は悪い事じゃない。けど、その先にある不確定なものが、“恋愛”に繋がる事にストッパーをかけている。」漫画か小説かで、そんなセリフを見た事があった。その時は「ふーん。」と読み流していたのだが、どうやら自分はその状態らしい。

「まぁ、プラトニックな愛だってあるしな。肉体関係だけが恋愛やないよ。」幽霊が訳知り顔で言うので、「なんだ、幽霊にも恋愛経験があったのか。」夕食までの数時間、テスト勉強の為に散らかった教材やプリントを片付け、コインランドリーで洗う服をランドリーバッグに詰めながら聞く。「おぉ、最初はいけすかん奴や思ってん。せやけど、なんやかんや話してみたらおもしゃい奴でな。」前のめりに話し出した。「クラスの皆巻き込んで楽しかったなぁ。だいたいあいつが言い出しっぺでな。僕が音頭取りや。あいつ、何してんのかなぁ?」そういって、あんな事やこんな事をしたと話し出す。しかし、よくよく聞いていると、おや?「あいつって、女性じゃなくて男性?」手を止め幽霊を見る。「…おぉ、そういやぁ、あいつは男や、男やった。だから恋愛っちゅーより、ピッチャーとキャッチャー。ダブルスのペア、漫才師のボケとツッコミ。そんな間柄やったんかなぁ。」遠くを見る様な目で幽霊は語る。「…そや、あいつ、泣いてたなぁ。絶対、会おなって。帰ってくる時は絶対、連絡よこせって。今生の別れみたいに言うもんやから、仲間と笑たんや。『大学行くだけや、死ぬわけちゃう。』って。」「おいっ!」「まぁ実際は今生の別れに」「おいっ!ちょっと待てっ!」「なんやねん、人の思い出話にちゃちゃ入れんと」「お前っ!大学生だったのかっ!?」幽霊の学生服を引っ張りながら大事な質問をした。「…え?」「今、自分で言ったじゃねーか!大学行くって!だとしたら、お前、高校時代に死んでねーだろ?!」隣のここあさん達が帰って来る前で良かった。驚きのあまり、大声が出てしまった。「…ほんまや。僕、大学行っとるわ…。」幽霊はまるで探偵が考えているかのような、うつむき加減でグーを口元にあてるポーズをとる。「亡くなったのが、大学在籍中か卒業してからでも、大きく違うぞ?大学も、『帰って来たら』って事は、他府県だな?」通学カバンからファイルを取り出す。この街の地図の拡大コピーで、コンビニでゼンリンをとってきたものだ。「お前言ってたろ?行ける場所と行けない場所があるって。」「お、おぉ。」テーブルに地図を広げ、赤ペンを片手に持つ。「大学は、覚えているか?」「いやぁ、有名なとこやないよ。ただ…。そやな、何か目指してたんかな?なりたいもんがあったんや。」またしても、遠い目をしだす幽霊を「おい、地図をみろ!」幽霊の襟を引く。「ここは行けたな?こっち方面は?」「あー、この山の麓までは行けたよ。課外学習の時についていったもんな。」幽霊に憑かれて5ヶ月か。それまでは高校の敷地から出れなかったと言っていた。しかし、自分に憑く事で行動範囲が広がり、一人でふらふら漂う事も出来るようになったのだとか。しかし、自分と一緒にいても()()()()場所があった。以前、谷さんの大学に向かう際、その街の駅にはたどり着けなかった。理由は解らない。けれど、地図に印をつけていく中で判ってきたのは「このアパートから決まった範囲しか行けないみたいだな。」アパートを中心に円を描くようになっている。その上で、「なんか、この場所はしょっちゅう行くんやけど、なんで行くんか解らんのや。」と、ある町を指さす。「ここから、あまり遠くないな。」小さな町内だ、自転車で知らず通り過ぎている。「今週の休みに行ってみようか。」と、計画した。

何もない、小さな住宅街。もしかしたら、幽霊の家族の家があるのか、それともさっき言っていた“あいつ”が住んでいるのか。布団に入るまでは考えていたのに、枕に頭をつけた瞬間、暗転した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ