祭りの話 迷走する。
「なぁ、俺、ちょっと気になってたんだけど。」声を上げたのは、陸部の赤点三人衆の一人、中岡。「この、文化祭の合奏って決まる前にさ、他のクラスはアンケート取ったって。」「え。」クラス中の視線が彷徨い、そしてクラス委員の二人に向かう。「何、それ。」「え、アンケート?」中岡は続けた。「まぁ、合奏か合唱か劇かってのは決まってたらしいけど。」「でも、選べたって事だろ?」「劇をするクラスもあんのか?」「うーん、それが」「決まった事でしょっ?!今さら文句言っても仕方ないじゃない!」島崎さんが中岡の言葉を遮って叫ぶ。なんだ、この茶番劇。「あーし、かーえろ。」朋ちゃんはカバンを持って帰宅の準備をしだした。自分もカバンに教科書をしまう。「まだ、授業中じゃない!」「知らーん。内申が悪くなるのはあーしなんだから、あんた、かんけーないでしょ。」リンダもカバンを持って立ち上がる。「朋ちゃん、傘は?」「置き傘があるはず。」「それは忘れてったやつだろ。」「物は言い様。」三人で教室を出る。後ろで他の生徒達もガタガタしているのが聞こえた。「あなた達、どこ行くの?」隣のクラスの担任が、扉を開けて聞いてきたが、「体調不良の為早退しまーす。」「一身上の都合で早退します。」「急にばあちゃんが危篤で早退しまっす。」さっさと退散だ。
「なんか、皆を巻き込んじゃったなー。」朋ちゃんがシェイクのストローを噛みながらつぶやく。「いやぁ、俺も我慢ならなかったぞ?」「相手の言い分が筋、通ってないしね。」駅前のファストフード店。リンダは、昼飯を食べてから時間が経っていないにも関わらず、バーガーを2つ食っている。自分はポテトとナゲットのセットとドリンク。「したくなかったのかな。文化祭。」朋ちゃんがポテトを見つめながら言う。「あー、島崎さん?でも、赤点取ったら清掃員って時は、勉強しろって言ってたじゃん。」ポテトにケチャップをつけて、朋ちゃんの鼻先でヒラヒラさせながら答える。口を開けてオットセイになる朋ちゃん。「そうだよな。それに、合奏が良いなら、皆に『合奏がしたいんだ。』って頼んで納得する理由がありゃ、協力してくれるよな。」「それは一概に言えないけど、騙しうちみたいな事してんのは卑怯だわ。」黙ってナゲットに出されかけたリンダの手を叩きながら、「先生も、気づかなかったのかな?」と、自分の疑問を問う。「あんだけ、『ふざけんなっ!』『お遊戯かっ!』て、ぶちギレてたのに。」「だよねー。しかも、選曲があれだもん。信じらんない。」ずごごっと音を立ててシェイクを吸い込む朋ちゃん。ちょっとの間、沈黙が出来る。外は雨だし、明日の学校は憂鬱だし。と、リンダのスマホが鳴る。「…。あ、中岡だ。」LINEでメッセージが届いたらしい。「あいつ、帰りそびれて今まで学年主任に事情聴かれてたんだと。」「うわ、可哀想…。」「駅に向かってるって。どっかで待つか。」「構内のフリースペースで良いんじゃない?」そうして、三人で席を立つ。ここで、迎える。と、言う選択肢はない。なぜなら、中岡はちょっとセコいからだ。
「おーい、大丈夫だったか?」リンダが手を上げて相手を呼ぶ。「酷い目にあったぞ。はぁー、疲れた。」「お疲れ、ほらよ。」リンダは、駅ナカの店で買った飲み物とパンを渡す。三人で割り勘だ。「おう…。おごり?」これだ。「あーおごり、おごり。先生に取っ捕まったお前を労って、俺ら三人からのおごりだ。」「なら、遠慮なく。」こいつ…。
ベンチに座って話を聞く。「お前らの後、何人かも帰っちゃってさ。俺もって出かけたら学年主任の先生が来ちゃって。」そりゃそうだ。「担任も、その後ろからノコノコ来たけど、訳、分かってなかったし。」「あいつ、職員室でなにしてたんだか。」「で、島崎さんとふくい(男子のクラス委員)が説明したんだけど…。」自分の都合よく説明したもんだから、残っていた生徒達がブーイングを起こした。で、そのうちの一人が『中岡が言うには。』と、説明しちゃったもんだから、中岡は学年主任と一対一で進路指導室で話し合いをする事となったのだと言う。「で、島崎さん達は?」朋ちゃんが尋ねる。「多分、今、話し合いの最中だと思う。皆は、少し先に帰されたよ。」パンをムシムシ食べながら中岡は答える。「楽しくしたかったな、文化祭…。」朋ちゃんがしんみりと言う。「まだ始まってねえんだから。」「せっかくの高校生活初文化祭だよ。楽しくしたかったのは皆一緒だよ。」「あ、もしかしたら、」中岡が元気な声で言った。「文化祭、白紙になるかもよ。」言ってジュースを飲み干す中岡。「…。白紙って。」「劇か合奏か合宿か選び直すって事か?」リンダと共に、中岡に確認する。「んーにゃ、文化祭の有方自体、見直すかもって。主任の先生が言ってた。」「「「…。」」」マジで、こいつ、嫌いだぁ!




