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魚釣りの話

方や大雪、方や水不足。インフルエンザは猛威を奮っております。皆々様の安全と健康が損なわれませんよう、祈っております。

駅までの道を歩くだけ、それでも人の囁く声は大きく聞こえる。ましてや、今日はテスト明け、本来なら部活をしている生徒も、同時に帰宅が多いと聞く。各学校も予定は同じらしく、地元の中学生に、商業、工業、私学の高校、様々な制服を着た学生達が駅周辺にたむろしている。いつもなら閑散として、逆立ちで歩いたって文句も言われないだろう商店街も駅に向かう者、友達と待ち合わせている者、帰る者で賑わいがある。その真ん中を、緑の頭をツンツンにして、銀のカフスや、ピアス(フェイクだけど)をつけた眉無しのグラサン男がゴツい黒のブーツをがつがつ鳴らして、姿勢正しく歩いてきたら、波の様に人が避ける。「ランウェイやなぁ。」気持ちええ位やで。幽霊が面白がっている。言ってもこんな現象が起きるのはここだけで、都会にいけばもっとヤバい奴はごまんといる。

花屋の店先にかかると、「あら、(こう)君。」名前を呼ばれて、振り返ると軽トラが、徐行しながら近いてきていた。そして、助手席の窓から手を振るのは「みっちゃん。」


「ここ、たくやん()なのよ。」軽トラから降りながらみっちゃんが説明してくれた。「たくやさん、(なか)っすか?」と聞くと、ニヤっと笑って隣を指差す。先ほど軽トラを運転していたお兄さん。タオルを頭に巻いてマスクをしていたから解らなかった。「あ、お疲れ様です。」「…ほんと、ビックリしないよね。きみ。」おねぇ言葉じゃないたくやさんの方がビックリなんだが。「ま、コンタクトと二重テープがないと、なかなか解らないわよね。マスクしてるし。」笑いながら、みっちゃんは店の中に入っていく。「(こう)君も、ほら。」と手招きするが、あんたの店ではない。「(なか)入って良いよ。」たくやさんが招いてくれた。「宅配してきたわよん。ひとみママは、家の事してきて。」カウンターにいた女性にみっちゃんが話しかける。「ありがとー。じゃ、ちょっとお願いね。たくや、頼んだわよ。」と、慌ただしく店の奥へ。「どうしたの?えらい気合い入ってんじゃない。」みっちゃんが花を入れている巨大なガラスケースから、お茶のペットボトルを取り出す。え、冷蔵庫なんだ。「花に寄っては温度管理が必要だから。花屋にはだいたいこう言うの置いてるでしょ。」たくやさんが普通に喋ると、「なんか素っ気ない感じっすね。」「ちょっと、格好つけてるみたいよね。」みっちゃんと顔を見合せてると、「良いじゃないすか、僕の事は。」ぷっとむくれる所はたくやさんだよな。

「テスト明けで。息抜きしようって友達と予定してたんすけど、行けなくなっちゃって。」「で、気合い入れて格好つけて道歩いてたの?」コップ(人んちの)に入ったお茶を飲みながら店内の椅子に勝手に座って喋る。「けど、なんで男装?女の子に言ったらおかしいけど、女装じゃないの?」みっちゃんが小首を傾げる。そう、女性のメイクは女装のメイクとは違う。「うーん、ちょっと。解決したい問題がありまして。」言うか迷ったが、家まで特定されてるし。ここは大人の知恵を借りよう。


「じゃ、ひとみママ、悪いけどたくや、借りてくわねー。」「大丈夫よ。後は店番くらいだから。いってらっしゃい。」たくやさんの母、ひとみさんが、ヒラヒラと手を振って送り出してくれた。会釈して、店を後にする。で、向かう先は自分のバイト先のコンビニ。「今日は、その谷君って先輩は居てるの?」「通常なら、今日は午後から講義がないってんで、シフト入ってるはずっす。」「あ、店長からLINEきたわ。居るって。」歩いて数分。コンビニに入る。「いらっ…!」いつものパートのおば様が言葉を飲み込んだ。他にいた、二名の客も固まっている。「あ、店長いてる?あと、谷君って子。」「あ、あ、は、て、っ店長!」おば様は、慌てて店内奥に走りこむ。「皆、ビックリしてるじゃないすか。やり過ぎっすよ。」みっちゃんに苦言を呈するが、「えー、格好いいでしょ?」「みっちゃんはいつもやり過ぎなんだよ。」たくやさんも同意見だ。けど、たくやさんも人の事、言えねぇからな。「何、何?あ?あ、みっちゃんかぁ。その格好だと一瞬わからなかったよ!」パートさんに引っ張られて出てきた店長は、お腹を揺さぶりながらハハハと笑っている。「で、どうしたの?谷君の話らしいけど。いま、裏だよ?」「ちょっと仕事中で悪いんだけど、聞きたい事があって。」「何かしでかした?」店長がチラッと自分を見た。あ、店長は自分の事、判別出来てるんだ。さすが。「若気の至りって事なんだけど。手っ取り早く解決したいから、10分程。聞きたい事があんのよ。」「なら、先に休憩時間取らせるよ。」入ってきて。と、言い残し店長はバックヤードへ。自分たちもスタッフ用出入り口へ。振り返るとパートのおば様が真っ赤になって、カウンターの中にいた。店内の客も、まだ固まっている。なんじゃこりゃ。

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