試練の話 一つ一つ着実に
残りの日数は一週間を切った。早朝バイト、学校では休み時間と放課後のテスト対策、午後のバイト、夕食後のランドリーでの店番兼自習で休む暇もなく、その間にトラブルはなかった。その週の日曜日の昼間、最後の追い込みを自室でしているとピンポンとチャイムと共に「ごめん下さい。」と、女性の声。うかつに出てはいけないのは前回学習した。鍵は閉めてあるので物音を立てずに様子をみる。幽霊が現れて「セールスか?俺、見てこよか?」「頼めるか?」最小限の声で囁くと幽霊はドアに上半身を突っ込んだ。ピンポンと、再度鳴る。「んー、セールスではないけど、俺の知ってるお前の友達ではないわ。」引っ込んだ幽霊が、報告してくる。「んじゃ、居留守で。」そうしている内に、女性は去ったようだ。窓から覗いても、角度的に階段を降りる姿も、通りを歩く姿も見えない為確認の取りようがない。「なんか、スーツ着た若い姉ちゃんやったわ。こないだ、コンビニ来た子かな?」うーんと、頭をひねって記憶をサルベージする幽霊。「家の場所を知ってるってのが問題だな。」なんて不安にかられていると、スマホから着信音が。画面を見て、鼻の頭にシワが寄る。「…谷さん…。」
『なんでLINEも電話も無視すんだよ!』開口一番、怒鳴り声。耳を離していて良かった。「いや、既読はつけてましたし、先に“テスト勉強で忙しいので返信出来ません。”て、送りましたよ。」ゆり子さんが気にしてくれた日の前日から、何やら谷さんからLINEは来ていたが、まともに目を通さず、溜まったら既読。てな事をしていた。コンビニでもオーナー夫人に“テスト勉強の為、谷さんが遊びに誘う素振りを見せたら釘を刺してくれ”って頼んでたし。『奥さんから注意されたよ。けど、どうしてもお前に頼むしか』ブツっと切った。すぐにコールが鳴る。『切んなよ!』「いや、だから頼み事は無理って言ってんすよ!」それに、「自分、ただのバイト仲間ってだけで谷さんとは友達ではないっすよ。前回は、急な話で断ったらバイト中、ギスギスするかなと思って引き受けましたが。」『…。おう。』勢いが死んだ。「自分、生活かかってるんすよ。遊ぶにしても、同じ高校の子と遊びます。気にかけて下さるのは有難いっすけど、線引きはしますよ。」はぁ、とため息混じりに伝えると『…。すまん。』と、ショボくれた声で謝ってきた。「頼みは聞きません。あの時の合コンの女の子に何か言われても、はぐらかして下さい。他の男友達にも。メイクにしろ、ファッションにしろ、自分達の努力です。」『…。分かった。ただ、その…。』歯切れが悪い。嫌な予感。『…。ちょっと、話したんだよ。大学で。』「何を?」『あの日のお前を、たまたま撮ってた奴がいて。探してて。で、あぁ、こいつバイト先の後輩っす。て、教えちゃって。』「…マジで谷さん、頭悪いっすね。プライバシーって言葉、知らないっすか、警察に相談しましょか。」『いや、だから、後で気付いて、お前に知らせないとって。』「知らせても遅いんすよ。その前段階の話です。」『…ほんっとにごめん。けど、教えた人も悪い人じゃなくて同じ大学の』ブツっと切った。二回目。
はぁーー。これが大人になった奴のする事か。「あの先輩、調子のええとこあるからな。格好つけやし。」クククっと幽霊が笑う。先ほど来たリクルート姿の女性は先輩の大学の人か。「バイト先、変えるかぁ。」オーナー兼店長も、オーナー夫人も他のバイトさんやパートさんも良い人だったんだけどなぁ。「あのタイプの人間に見られる傾向よな。人間関係の敷居が低いっつうか、俺の友達の友達はお前の友達。一回遊んだらマブダチみたいな。」げ、止めてくれ。
とりあえず、今日は大人しく勉強していよう。テスト終わったら、やけくそに遊んでやる!
二学期の中間は副教科合わせて7教科。期間は3日間。みな、真剣に挑んだ。一学期とは、みなぎる気迫が違う。一日目、
二日目も終わった後、次のテストの準備を油断なく進め、三日目、テストが終わり先生の一言が終わり、さぁ帰りましょ、となった段階で自分のクラスだけ地響きのような雄叫びが上がった。みな、やりきったのだ。結果はまだ解らない。しかし、クラス全員が一つの目標に向かって戦ったのだ。さぁ、遊ぶぞ!!
ちょっと話しが長引いてしまい、てこずっています。申し訳ないです。




