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試練の話

粛々と日々は過ぎていく。赤ペン先生よろしく、三人が解いた問題を採点していく。その間に朋ちゃんが今日習った内容をざっくりおさらいしていく。この放課後の勉強会。徐々に人数が増えてきた。赤点にはならずとも、不安を抱える生徒が「ちょっとついでに教えて。」「復習させて。」と残っている。そうなってくると朋ちゃんも自分も、うっかり寝こけて聞いていませんでした。と、言う訳にいかず必死に瞼をこじ開け授業を聞く。リンダも船を漕ぎようものなら容赦なくツボ押しが背中に入る。「背後に暗殺者が座ってる…。」と、震えるやつの後ろは自分の席。梅安もびっくりだ。「お前、歳、幾つやねん。」幽霊が突っ込みの誘惑に負けて話しかけてきたが今は無視だ。「リンダ、スペルをちゃんと覚えて。岸田君、XとY、ちゃんと書き分けないと間違いにされるよ。中岡君はぼんやりと覚えず、しっかり図が頭に残る様に覚えて。」丸つけを終えて三人に渡す。「じゃ、それぞれやり直していこうか。」朋ちゃん先生が指示を出す。言って数ヶ月前までは受験生。出された課題は黙々とこなせるのだが、いざ自分で勉強となると遊んでしまったり気が散ったりと続かない。ましてやスポーツ特待生のリンダは、大会の結果が物を言うのだから。しかし、勉強についていけなくなったらそれも意味を成さない。「皆、楽しい文化祭、楽しい青春を迎えるんだぞ!」「「「「おう!」」」」朋ちゃんが士気を高める。  なに、こいつら。


バイトの為に先に離脱し、自転車置場へ。自分の自転車のかごにカバンを入れようとして、「?」何やら紙が入っている。取り出すと糊付けされた封筒。「…。」一応、光に透かす。カミソリは入ってないようだ。「今時、カミソリの刃って売ってんのかいな?」カッターの刃の可能性だってあるだろ。うかつに開けてはいけないのだ。「で、なんなん、それ。ラブレター?果たし状?」楽しそうに幽霊が早く開けろと急かす。「帰ってからにしよ。」「え~?勿体ぶるなやぁ。」カバンに手紙をしまい、今日のバイト先へ。「お疲れ様です。」「はい、お疲れ。今日はごめんね、無理言って。」店長はそう言うが早いか、慌てて自宅に戻っていく。「今日はよろしく。」「はい、よろしくお願いしまっす。」一緒に仕事するパートのおばさんに挨拶し、仕事を始める。本来なら今日は休みなのだが、娘さんが悪阻で寝込んでしまい、オーナー夫人が掃除洗濯、オーナー兼店長は、上の子の保育園のお迎えに走る。今まで旦那さんがしていたが、1泊3日(!)の出張に急遽駆り出されたため、やむなく奥さん(娘)両親が召還された。「プライベートの事に巻き込んじゃってごめんねぇ。」と、朝のバイト時に夫人から謝られたが自分も何かと便宜を図って貰った身。「自分も助けてもらってるっすから、気にしないで下さい。」と言うと、また男前な事言って。(ゆき)ちゃん、女子力あげなきゃ駄目よ!と、指摘される。…釈然としない。


短時間バイトの為、夜7時に終わる。自室に帰って着替えていると、「(ゆき)ちゃん、先に食べちゃったからねぇ。」と、たっくんが可愛いノックと一緒にドア向こうから伝えてきた。「了解です。ありがとねー。お休みー。」「「お休みー。」」ここあさんとたっくんの声。いい親子だ。ウィッグにブラシをかけ、制服も埃を払い、ファブっておく。「あの親子、ちゃんと片付けしてんのかいな。」幽霊がプライバシーを無視して壁に顔を突っ込む。「おい。」たしなめたが、「次の定休日にみっちゃんのがさ入れが入るな、こりゃ。」と、苦笑いで顔を引っ込める。はぁ。

みっちゃんの部屋に行くと、正人さんが帰って来ていた。「お帰り。お疲れさまだね。ゆり子さんはお風呂行ってるよ。」と、鍋から味噌汁をお椀によそっている。「ただいまっす。正人さんだけっすか?」自分の箸と茶碗を用意する。「みっちゃん、なんか早めに「ぷいぷい」に行ったよ。」なんだろね?と、小首を傾げながら自分の分の味噌汁もよそって渡してくれる。「あ、すんません。」「みっちゃん特製けんちん汁だよー。」ゴボウに人参大根に刻み蒟蒻、それに厚揚げが切って入れてるのがみっちゃんのこだわり。他にカボチャの煮物、豚とピーマンの炒め物。シメジの佃煮。

「「頂きます。」」みっちゃん一人がいないだけでなんと静かな食卓だろう。ここに来て初めてかもしれない。正人さんが、けんちん汁を食べると歯がコツコツ鳴った。意外に大きく聞こえて、ふふっと笑ってしまった。

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