短い夏休み げに恐ろしきは死者か生者か
「…どなたですか…?」かろうじて言葉が出た。「…君こそ誰だ。…ああ、ここの住人かぁ。」立っていたのは、見た目若い男性。けど、目がヤバい。隈ができ、落ち窪んで淀んでいる。肌もくすんでみえる。「…まだ、若いねぇ。学生さんかな?」男は踵を返して中に入る。そこには青い顔をしたみっちゃんが座っていた。みっちゃんはこちらに目を向けると『逃げて!』と口パクで伝えてきた。動こうとしたがぐるりと男がこちらを向き、「あぁ、君にも聞きたい事があるんだぁ。」と、にちゃあと音のする様な笑顔を見せた。うおおおぅ!こんな恐怖、高1のガキには荷が重すぎっだろ。と、腹の中で震える。「顔色一つ変えないなんて、偉いね。」と、男は中に誘う。良くみると、手にナイフ。エマージェンシー!エマージェンシー!!幽霊!なんとかしてくれ!腹の中はパニックで大騒ぎだ。「座ってくれ。」自分は立ったまま、男は指示してくる。とりあえず、座卓をはさんでみっちゃんの対面に座った。「君、僕の事知ってる?」慌てて首を振る。が、振りながら、どこかで見た気もしていた。「最近、入った子だから知らないわよ。」みっちゃんが言うと、男は「お前には聞いてないよ。」と低い静か怒声を向ける。ヒイィィィ!「こ、この春からお世話になってるっす。」とりあえず質問に答える。「そっかぁ、じゃあ僕の事知らないね。」男は、近づいてきて自分の隣にかがんだ。
「僕はねぇ、ここあと、匠馬の家族だよ。」「ご…ご家族の方っすか。」「僕の奥さんと、可愛い息子だよぉ。小さくて、赤い頬っぺでねえ。足もぷくぷくして。」え、それって…。「やっと帰って来れたんだ。だから、会いにきたのに。家に居ないんだ。」家に居ない?今さっき出ていったばかりだろ。「だから、こいつに聞きに来たんだよ。僕と家族を引き離した、腐った野郎に。」男は憎々しげにみっちゃんを睨む。「僕の家族をどこにやったんだ?お前が隠したんだろ?」と、みっちゃんの方へ顔を向ける。あ、こいつの顔!!
みっちゃんは、ふぅーと息を吐いて「引っ越したわよ。」と、こともなげに答えた。よく見ると汗が凄い。クーラーは効いている。はっと息を飲んだ。みっちゃん、腕、押さえてるけど血が垂れてるぅぅっ!ちらっと男のナイフに目をやると…血がついてるぅぅっ!!
マジで、早く!幽霊!なんとかしてくれ!
「嘘つくなよ、僕の帰りを待ってるはずだ!」「あれから3年も経ったのよ!状況は変わるでしょっ!!」「嘘だっ!嘘だっ!」「あんた、自分からあの子達を捨てたんでしょっ?!今更、なんなのよっ!」「うっうぅおおおっ!」と、男がみっちゃんに迫った。咄嗟に、「「ぃよいっしょー!」」と座卓をひっくり返し男を壁に押し付けた。「ぐふぅっ。」座卓と壁に挟まれ、男は動けない。みっちゃんは、しゃがみこんで間一髪、サンドイッチを免れた。直ぐ様立ち上がり、みっちゃんは腕を押さえたまま体で座卓を押さえる。「私、押さえてるからっ!人、呼んできてっ!」「もう、来るっす!」「えっ?!」勢いよくドアが壊され、複数の警察官が流れこんできた。男は取り押さえられ、パトカーにドナドナされていった。みっちゃんは救急車で処置して貰い、自分は警察に色々説明した後、「ぷいぷい」スタッフのグループLINEに事の仔細を報告。近所の方々も野次馬に来たりして、辺りが静かになるのは夜8時をまわった頃だった。一応、みっちゃんは病院で検査を勧められたが、「明日、改めて。」と断った。「たとえ、正人君といえど、男と二人でお留守番だと不安でしょ。今日、怖い思いしたんだし。」それもそうだが、みっちゃんの部屋。扉、壊されたよなぁ。どうすんの、これ。




