たたかう話 不思議な縁って在るもので…
その後プリクラを撮り、昼はピザを食べ、テナントを周り“それぞれが相手の選んだ服を着る(2000円縛り)”(朋ちゃん発案)の結果、リンダは朋ちゃんが選んだ黄色地に赤いクラシックカーに乗ったゴリラが前方にデカデカとプリントされたTシャツ。朋ちゃんは、自分が選んだ白地にサーモンピンク色の英字、ピンホールに黒チェックのリボンが通されたオーバーサイズのTシャツ。最後にリンダが自分に選んだのは「うわぁ。」「え、おかしい?」「いや、わからん。」朋ちゃんだけが眉を寄せた。ワンピースの上から着たその服は、薄い混麻生地のモスグリーンの半袖シャツ。ボタンが木目調で、胸ポケットがある。「…ないわぁ。」朋ちゃんは言うが、自分とリンダは顔を見合せ、「「?」」流行りに乗れない迷子がここに居る。
午後3時。場所を替えてティーブレイクと洒落こもうとなり、自転車置場へ。自分が置いた自転車を取りに向かうと、遠目になにやら複数の男性が自分の自転車を囲んでいる。嫌な気がして、気取られないように近づく。「…っ!」自転車のサドルに、某チェーン店で貰えるケチャップとマスタードを塗りたくり、かごにはその店の袋と食べ終えた後のゴミ。男性達は、笑いながら最後に紙カップを逆さにし、氷と飲み残しを全体にかけていく。青ざめて立ち尽くしていると、「どうしたん?」と、朋ちゃん。その声で自分も、男性達も朋ちゃんを見た。「あー!!何してんの?人の自転車じゃに!」大きな声に、周りに何人かいたお客さんもこちらを見る。「えっ?あんたの?」「この子の!ちょっと?!イタズラにしてはお兄さん達、笑えないんだけど!」早口でまくし立てる朋ちゃん。その後ろから、のそっと現れたリンダは、このお兄さん達より頭一つデカイ。「警備の人、呼びましょか。」低い声で静かに脅す。並んだ自転車で囲まれて走って逃げれないし、他の客もお兄さん達を睨んでいる。「あのお兄ちゃん達、人の自転車バッチぃしたの、めっよねぇ?」どこかの子がトドメを刺した。お兄さん達は真っ赤になって、うつ向いてしまった。
「ちゃんとサドルの裏も洗って。」朋ちゃんが鬼教官よろしく指示を飛ばす。近くの公園。炎天下で自分の自転車は洗われていた。自分達は木陰から、お兄さん達を監視している。かごのゴミはゴミ箱へ。サドルは取り外され、手洗い場でケチャップとマスタードを落とされ、自転車本体にかかったジュースはお兄さん達がペットボトルに水を入れて代わる代わる自転車にかけてスポンジでこする。スポンジは、お兄さんの一人が100均へ走り、洗剤とタオルと共に買ってきた。「おーう、洗い終わったかぁ。」と、公園前の派出所からお巡りさんがやってきた。「…もう少しっす。」「あんた達も、要らん事したねぇ。やっかいな相手にねぇ。」「…。」お巡りさんは苦笑いしながらお兄さん達を注意し、お兄さん達は粛々と作業を進めた。「やぁねぇ。やっかいな相手だって。リンダ、よっぽど怖い顔してたんじゃない?」「ぅえ、俺っ?」あたし、可愛いもん。と、朋ちゃんはペットボトルのお茶を飲む。うーん、多分、やっかいなのは自分。なぜなら、みっちゃんとこの住人だから。と、いうのもこの交番、みっちゃんの後輩が駐在していて本人も、よく顔を出すらしい。このお巡りさんも、みっちゃんが若い時からの知り合いだ。先日、色々調べてくれたお巡りさんの一人でもある。「どう?あれから。変な奴見かけない?」周りに聞こえないように小さな声でこっそり聞いてくれた。「昨日の今日で、まだなんとも…。」「そっか。一応、見回りは強化するからね。」優しい笑顔がありがたい。
朋ちゃんが、「お兄さん達さぁ、なんでこんな事したの?誰でも良かった?」仕上げ拭きしているお兄さん達に聞いた。お兄さん達は、汗だくの顔を見合せて、「昨日、ぶつかりかけた奴の自転車と同じだったんだよ。」と、一人が喋った。「お前ら、“青八木”だろ?」他のお兄さんも喋りだす。「昨日、俺ら市民プールの近く歩いてたら、めっちゃスピード出して突っ込んできた奴がいて。」「そいつの自転車に“青八木”のシール貼ってたから。」自転車登校の生徒は、校章と出席番号、学年別に色分けされたシールを自転車に貼らねばならない、地元ルールだ。「けど、あんたじゃなかった。人違いして…。」申し訳なさそうに自分を見るお兄さん達。「あー、ちょっと人に貸しまして。けど、危ない目に合わせてすみません。」と頭を下げた。あの時のお兄さん達でしたか。「いや、あんたが謝らなくても。」いや、自分です。とは言えない。「あんた達、その自転車の子の後ろに、追いかけてる男見んかったか?」お巡りのおっちゃんが聞いてくれる。お兄さん達は顔を見合せて、「男なんていなかったっすよ?」「なぁ。」「そうか、情報ありがとね。」「けど、女の子は転けてた。」「「え?」」




