たたかう話
ありがたい事に、読んでくださってる方がいて下さって、嬉しい限りです。派手な演出も、まさかのどんでん返しもございませんが、幕間に、ちょっと毛色の変わった話で皆様に楽しんで頂けたらと、勝手ながら思ってたりする今日この頃でございます。
「もーーっ!絶対許さない!」みっちゃんが荒ぶる荒ぶる。
あれから、みっちゃんが迎えに来てくれ一緒にアパートへ帰った。みっちゃんは眼光鋭く警戒してくれたが、道中あの男は見つけられなかった。自転車を特定されていたら危ないので、いつもの自転車置場ではなく、住民専用のプレハブで出来た共同物置に入れた。「あら、買い置きの電球、ここにあったわ。」…今は止めてくれ。
晩御飯の支度を手伝いながら、詳しく経緯を説明する。みっちゃんは、じんさんとオーナー夫人からのLINEで不審者がいる事は解っていたが、自分の話を聞くにつれ、顔が…。「赤鬼みたいになってるっすよ。」その顔で先ほどの荒ぶり方をみたら、たっくん、チビっちゃうんじゃない?って位に怖い。「みっちゃん、落ち着いて。「落ち着けないわよ!何なの?!どこのどいつなの?!ドア叩いた上に、うちの従業員兼店子を追いかけて怖い目に合わすなんて!」あぁ、レタスの葉をちぎっていたのに力が入って細かくなっちゃう。「見た事ないんすよ。多分、若いっぽいんすけど。学校の生徒かなぁ。」て事はバイトの内容がバレてるのか?ちゃぶ台で、枝豆の端をキッチンバサミで切りながら話す。「んー、解んないわ。店絡みで因縁があって、たまたま店から出てきた所をみて、後を着いてきたって事かも。一応、近くの交番に声かけておこうかしら。」「そうっすね。頼みます。」みっちゃんは少し落ち着きを取り戻したようだ。「後輩に、警官になった子もいるのよ♪」「みっちゃん、人脈広いっすね。人徳っすね。」「やだ、持ち上げないでよぅ♪」細かくなったレタスはチャーハンの具材となった。
早めに夕食をとり、コインランドリーで勉強しながら店番をする事にした。。いつもの仕事を終えて、バックヤードで教科書とじんさんに貰った過去問のコピーを解いてゆく。店内はお客が二組。カップル(死語)がそれぞれスマホ観ながら座って会話している。それと、新聞読んでるおっちゃん。昼間の奴、もしかしたらここに現れるかもしれないし、ここなら監視カメラもある。店内に通じるスタッフオンリーのドアは、鍵をかけた。数時間後、時計は夜8時。既に寝る時間を過ぎた。慌てて、店内を確認する。ゆり子さんが居ない間、最後に施錠するのは正人さんの仕事だ。肩をコキコキ回しながらみっちゃんの部屋に戻ると、室内の空気が重い。みっちゃん、正人さん、ここあさんの大人が難しい顔をしている。たっくんは、畳の上で座布団を枕に、バスタオルを腹にかけて大の字で寝てる。「みっちゃん、仕事は?」いつもなら、出勤していてもおかしくない時間だ。
「…どーしたんすか?」「さっき、後輩の警官に連絡してみたんだけど。」警察は、実害がないと動けない。但し、店近辺の見回りは強化する。との事。「ただねぇ。」ふぅーっとタバコの煙を換気扇に向かって吐き出す。たっくんへの配慮だ。しかし、みっちゃんが「ぷいぷい」以外で吸うなんて。「ねえ、本当に追いかけられたのよね。」ここあさんが、真剣な顔で聞いてきた。「…っす。マジっす。え、どういう事っすか?」「…警察がね、市民プールや、「ぷいぷい」の近くの店の防犯カメラを見たらしいんだけど…」正人さんが苦々しい顔で続ける。「何も映ってなかったんだって。」一瞬の沈黙の後、「…え?」
言葉が出ない。




