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学生だけの特権 あぁ夏休み、夏休み

書いているのは年末年始なので遅延する可能性があります。ご容赦ください。

なぜだろう。この茹だる様な暑さだ。服装は半袖のTシャツに膝丈のジーンズ。肌の露出も多いのに。別にムダ毛も生えてないのに。(産毛は許容範囲だろ?)

「おーお帰り。暑いねぇ。堪らないよぉ。」汗で髪を濡らながらも、困った様に笑う正人さんがワイシャツの襟を広げながら声をかけてきた。今、向かいのアパートの洗濯物を取り入れようとした女子大生が、正人さんの首元に視界を奪われ取り入れようと伸ばした手元が(くう)を切り、危うくベランダから落ちかけた事など当人は知らない。

バイト終わりにみっちゃんからお使いLINEが届き、注文の物を買って帰るとちょうど正人さんがみっちゃんの部屋に向かう為に階段を降りて来ていた。「ただいまっす。今日は早いっすね。」自転車を置き、エコバッグを下げて並んで向かう。正人さんはピースして、「今日はトラブル無し。年に数回、あるかないかのラッキーデーだよ。」と、暑さも弾け飛ぶ爽やかさを見せつけてくれた。

みっちゃんの部屋をノックすると「はーい、あらお揃いで、お帰り~。」と、パッと見、裸エプロンに見える様なタンクトップとショートパンツにピンクのフリフリエプロンのみっちゃんが出迎えてくれた。「…ただいまっす。」「ちょっと、なんでひきつった顔してんのよ!」「そりゃ、こう君は夏スタイルのみっちゃん見るの初めてでしょ。びっくりする「正人君、後で裸のお付き合いしたいのね?」「今日の晩御飯、何かなぁ?楽しみだなぁ!」聴こえないふりは、みっちゃんに通用しない。クーラーの風が、暑苦しい空気(色々な意味で)を癒してくれる。

さて、LINEで頼まれた物はカレーのルー。多く作って冷凍しておくのだと。まぁ長い夏休み。一人分の手がないだけで忙しさは倍増。しかし、ならなぜ一緒に食事を取るのか。「何年か前に、店子が栄養失調になって病院送りになった事があったの。」大きな寸胴鍋に、買ってきたカレールーを割り入れながらみっちゃんは説明してくれた。そいつは親元を離れ、自炊もまともに出来ないからと、カップラーメンやインスタント食品ばかり。しかも自分の気に入った物ばかりだから、野菜や魚等から採れるカルシウムやビタミンが圧倒的に不足。塩分過多。で、体調を崩して入院と相成った。そこでみっちゃんは、他の住人の食事も気になり話を聞くと、正人さんは外食(牛丼、うどん、ラーメン等のチェーン店)や、スーパーの惣菜。ここあさんもコンビニ弁当やウーバー(あのキッチンで料理は出来ない。)ゆり子さんでさえも、作りはするものの量が少ない。その上精進料理の様な内容で、あえて取ってほしい肉や油が足りない。「あ、入院したの“さとるさん”ですか。」「当時は大学入ったばかりだったなぁ。僕も社会人成り立てだったし、炊事洗濯もさっぱりで。」「で、店子の健康を守る為、大家のアタシが一肌脱いだの♡」ピラリとエプロンの裾をめくる。筋肉が引き締まった日焼けした(日焼け止めを塗っても焼ける、とよくぼやいている。)太ももがあらわになった。うぇっ。

家賃や生活費、水道、電気代などを一から見直し、裏の空き地を買い取りコインランドリーを併設。管理を店子がする事で家賃の減額、人件費削減。しかし、無理強いはしない。個々がそれぞれ判断して成り立っている。「まぁ、みっちゃんだから成り立っているんだろうけどね。人数も多くないから。」だろうなぁ。

自分のカレーを食べ終わったら、次はここあさんとたっくんの番だ。皿を洗い部屋を出る時、「あ、今日は僕がコインランドリーにいるから。」と声をかけられた。「了解っす。」階段を上がりかけて「あ、自分に時間をくれたのか。」と、思いたった。正人さん、さっき珍しく早く帰れたって喜んでたのに。コインランドリーの管理だって別にそこまで重労働って訳じゃないけど、自室でのんびりって訳じゃない。足が止まっていた自分に「おい、気付かんふりすんのも可愛さやで。」いつの間にか、階段の上った先に幽霊が立っていた。「男の優しさやん。黙って受け取って、いつか、そっと返すんや。それが美学やで。」胡乱な目で幽霊を見やってから、ここあさん達に声をかけ自室に入る。むぅっとした熱気がドアを開けた瞬間流れ出てきて、よろめいた。くそ、クーラーのタイマー、ケチらず入れりゃ良かった。電気をつけ、窓を網戸にし扇風機とクーラーで熱気を追い出す。暑がりのみっちゃんが命を守る為に(自分自身の)アンペアを上げてくれている為ブレーカーは落ちない。ちなみに屋根にソーラーが乗っているのもみっちゃんが学生時代の後輩に頼んだ(脅した?)ものらしい。いつ、災害がきてもクーラーがついてれば、アタシ、生き延びられる。って事らしい。

あ、網戸の外側にちっちぇえクワガタ。

  今日も気付かなかったなぁ、正人さん。そっと胸に手をやる。

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