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ちょっと先に進んだ話 当たり前に奴がいる。

「…あぁ…くそっ!」

暗い部屋を睨み付け、大事な睡眠時間を削られた事に腹立ちつつも、玄関すぐ横のキッチンの引き出しをいくつか開ける。3つ目の引き出しで、買ったままの指定ゴミ袋、10枚入りを見つけた。

手荒く包装のビニール袋をひき破り、内一枚の袋の口を広げ、「おい、あんたはこれに缶、入れてけ。中身は捨てろよ。」

そう言って袋を渡すと、「すまん!ほんま、すまん!」と、袋を片手に受け取りながら反対の手を自分の前で立てているこの男。幽霊である。

「…仕方ねぇよ、子どもが泣いてりゃ放っておけねぇよ。けどな、」自分の分の袋を開き、目についた弁当殻をゴミ袋に入れながら口は動かす。動かしながら、この男に静かに低く説教をかます。「“自分”の体を勝手に動かすのは違ぇだろ!起こせばいいだろが!」あっと言う間に袋の半分が埋まった。その袋を一旦、端に寄せ新たに袋を開き、ゴミの下に埋もれていた脱いだ服やらを入れていく。「あわててしもてん。万が一を考えたら、体が勝手に動いてもて。」「その体はおめぇのじゃねぇ。“自分”のだ!」体がねぇから幽霊やってんだろ!と言ったら、しばらくきょとんとした後、「あ、ほんまや!」と、爆笑しやがった。

二人がかり…一人幽霊だけど。

で進めりゃ、ものの数分で10袋のゴミ袋を使い切った。とりあえず階下へ。ゴミ集積ボックスに不燃ゴミを、洗濯する服をコインランドリーへと運ぶ。階段を下りて、その階段下直ぐに設置された金網のボックスを開けて、缶、ビン、雑誌類を放りこむ。「あ~重たいわぁ。」幽霊の癖に腰を伸ばしてやがる。足元に置いていた洗濯物の詰まった袋を手に、コインランドリーへと向かいかけた時、駐輪場からバイクがやってきて“自分”の横に止まった。

二人乗りのバイクに股がるのは、フルフェイスのサラリーマンスーツ。

「“こう君”、ご苦労様。」

少しくぐもった声は、気の良さそうな兄ちゃんを絵に描いた様な店子の“まさとさん”だ。「びっくりしたでしょ。“こう君”は初めてだもんねぇ。」何が、と聞く前に、先ほどみっちゃんが出入りしていたドアが再び開き、バッチリメイク、バッチリ衣装を決めたみっちゃんがヒールを鳴らして出てきた。「“さっ…“こう君”、ありがと。後は任せて。」ひらり、とバイクの後方に股がり、“まさと君”に腕を回す。バイクはエンジン音を上げて敷地を出ていく。「いってらっしゃい。」と小さく手を振った。しばらくの静寂の後、洗濯の袋を持ち直し、みっちゃんの部屋のドアを開けて入っていく。

「さっちゃん、静かにね。」ドアを閉める際、優しく注意をうける。明るい部屋の真ん中は畳敷きで長方形の座卓が置かれている。その上座に座った“ゆり子さん”の膝で、たっくんは眠っていた。

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