新生活の話 人それぞれの“アオハル”
読みづらかったらすみません。改行も句読点も、自分が見やすい、書きやすいを優先してます。あと、杉本さんに恋愛要素はこの先きっと出ません。あしからず。
その日のうちに、鈴田君は“リンダ”とあだ名が付き、三人でLINE交換もした。なんで他県から来たのかも話した。朋ちゃんは親の離婚で、母親の実家があるこの県へ。リンダはスポーツ特待生として入学、寮生なのだと話した。自分は“親の再婚を期に親元離れて”一人暮らし。二人共、“へー、大変だね。”と、軽い調子で聞いてくれて良かった。これは、良い人間に巡り会えた。「ぷいぷい」に向かう道中、心が軽かった。
だが、店に入る時だった。「え、スナック?」頭上から聞こえるこの声。うそだろ、付いてきたのか。いや、憑いてきたのか。おい、邪魔だけはするなよ。「あっしまった。ばれてもうた。」
青葉萌える5月、自分は友達が出来、幽霊に取り憑かれた。
幽霊は、気ままに幽霊をしているのだと言った。ある日曜日、布団を干し、掃除機をかけ、洗濯物を畳んで、と一週間に一度の仕事をしているといつのまにか漂っていた。何故か昼間にも見えて、こいつ以外は見る事も聞く事もない。「おい、なんで居る?」ベッド下のクリアボックスに服を入れながら聞いた。「え、会話しにきたんやけど。」「他の幽霊仲間と話せよ。」それか成仏しろ。「なに言うてるん。生きてる人と話すんは若返る気持ちになんねん。」若返るって、「何歳なんだよ。てか、いつ死んだんだよ。」部屋についているミニキッチンでヤカンに水を入れ、コンロにかける。「あー、そこなんよなぁ。」カップにインスタントのコーヒーをいれ、湯が沸くのを待つ。「多分、高3やねん。で、あの学校の生徒やで。」じゃあ先輩か。いつの先輩だよ。戦前?戦後?「ちょっ、さすがにそんな昔ちゃうで。平成や。スマホは知ってたもん。ケータイは持っとった。」昔のパカパカしたやつ、お前知らんやろ。と、ちょっとバカにしたニュアンスが腹たった。化石が。
沸いた湯を注ぎ、カップを持って部屋の真ん中に置かれた、こたつテーブルに移動する。8畳のフローリング、2畳のミニキッチン。ユニットバス。ベッド(土台)とこたつテーブル(布団なし)は、前の住人が置いて行ってくれた物。横向きに置いて教科書や参考書等を入れている三段ボックスは正人さんがくれた。他にも、新しいタオルや食器類は、みっちゃんとゆり子さんのデッドストックが贈与された。実家にあった自分の物は箸から歯ブラシ、スリッパにいたるまで運びこんだが、スッキリと収まってしまった。それこそ、置いて行ったのはベッドの骨組みと、空の勉強机と椅子。あの部屋はどうなったのだろう。物置になったのか、父の奥さんが使うのか。何も無くなった部屋を見ても、父は何も思わなかったのか。思わないだろうな、何せ亡くなったとされる母親の仏壇も位牌も写真さえも無かった。小学校低学年には、自分の生い立ちを調べて、赤ちゃんの時の写真を持ってくるという授業があったが、自分の写真が保育園からしかない。それも、家政婦のみつ子さんが撮ってくれた物。なんだか気分がクサクサしてきたから、父親の事を考えるのは止めよ。カップを口に運ぶ時に、幽霊と目が合った。何とも言えない顔をしてる。あぁ、聞こえたのか。やっかいだなぁ。「なぁ。」「なにか?」ややあって、「多分、俺は親父もお袋も居てて、愛されて育ったんやと思う。」おっ?ケンカ売ってる?「いや、ちゃうねん。けど、だから、お前の気持ちは解らん。解らんけど、俺、親より先に死んどるから。」幽霊がなにやら真剣な目で見てくる。ガバッと頭を下げると「頼む。俺の事、探してくれ。」と、宣った。あぁ、フラグってこういう事か。




