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現在進行の話 領分と本分

リンダにはみっちゃんの事を、「入学式に来てくれたのは大家さんで学校のOBでもある縁で、入学の際に渡される荷物持ちを買って出てくれた」人だとありのまま伝えた。相手の女性も同じアパートの住人だと。だから、「親戚でもなんでもない。気にするな。自分も気にしないし、誰かにべらべら言う気もない。」とも。

店を出た際に、怪我の具合だけ聞いた。うまく?刺さった為、声帯も傷つかず、元通りに治るという。「そうか、良かったな。」と言うと、リンダはまじまじと自分を見て「お前、ほんとすげぇ。」といった。なんのこっちゃ。その場で別れて帰った。アパートに着くと、二階が何やら賑やかだ。上がって行くと、ここあさんがみっちゃんに叱られながら部屋を片付けていた。「ほら!早くしな!終わんないよ!」「みっちゃ~ん、もう無理~。」開いたドアの前で、仁王立ちでここあさんの逃亡を防ぐみっちゃんの後ろを通り、自室へ。怒号と泣き言をBGMに、ウィッグ、制服を脱ぎスウェットに着替える。勉強道具と空の弁当箱を持って下階に降りる。あのゴミ部屋はスタンダード仕様か。みっちゃんの部屋では、ゆり子さんとたっくんが座卓で折り紙をしていた。「おかえり。さっちゃん。」「おきゃーり。」「ただいま、たっくんもおかえり。」保育園のスモックのままだから、部屋に戻らず待ってるのだろう。弁当箱を洗い、コインランドリーへ。人はいないが、洗濯機は数台稼働している。床を掃き、洗濯物を畳む為に置かれた台を拭く。忘れ物、落とし物のチェック。駐車場を見回り終えて、事務室へ。小さな窓口と透明な引戸がついていて、勉強しながら店内をチェックできる。この二日間、周りに巻き込まれてまともに勉強する暇がなかった。少しでも復習して、要点をまとめて置かないと。来月は一学期の期末がある。幽霊が覗きこんできたが、「あかん、解らん。」と言いながら消えていった。お前、高3だったはずだろ。合間合間に客が、洗濯物を取りに来たり、入れていったり、終わるまでスマホを見て時間を潰したり、といった様子を確認しながら今日の授業内容を書き出していく。

ポンっと肩を叩かれ振り向くと、クールビズスタイルの正人さんが立っていた。「お疲れ様です。」と言うと、「やだなぁ、こう君。お帰りなさいって言ってよ。仕事中みたいじゃん。」疲れたよー。と伸びをしながらみっちゃんの部屋へ戻っていく。スマホの時間を見ると夜7時を過ぎていた。晩御飯の為に呼びに来てくれたのだろう。正人さんが居るって事は、ここあさんとたっくんは食べ終わっている。一応、店内も確認。大分、日が長くなって外はまだ明るいがブラインドを下ろしておく。勉強道具を持って、自分もみっちゃんの部屋へ。「お疲れさま~。お勉強はかどった?」みっちゃんが茶碗にご飯をよそいながら労ってくれた。「ぼちぼち。」「こう君って真面目だよねぇ。僕なんか高校の時ってバイトと遊びばかりだったよ?」湯飲みにお茶を注ぎながら「彼女とか欲しくないの?」と、返答に困る質問をされた。「…今は、生活に慣れるのが優先っすね。」「そっか~。体だけは大事にしなよ。」言い終えて、頂きます。と、大きな唐揚げにかぶり付く正人さん。幽霊がいつの間にかいた。そして、「なんや、この兄ちゃん、まだお前が女やって気づいてへんの?」お前、乳無いもんなぁ。と、言って二階へ透けていく。ははっ、笑える冗談だな。

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