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現在進行の話 壁一枚の向こうはドラマチック

「…二人は風呂屋に行きました。大丈夫すか?」改めて聞く。みっちゃんは、再びはぁーとため息をつき、「そうねぇ、ちょっとびっくりしちゃって。」コーヒー入れましょ。話すから。後でゆり子さんと正人君にも伝えて欲しいのよ。みっちゃんはマグカップ二つにインスタントコーヒーを入れていく。うーん、時間的にゆっくりはできないんだが、知らんぷりもできない。仕方なく、座って待つ。直ぐに目の前に湯気の立つマグカップが置かれた。「ミルク多めのカフェオレだから、大丈夫よ。」みっちゃんはそういってブラックをすする。「ここあちゃん、見つかったと言うか、保護されてたみたい。」「保護?」「まだ若いからねぇ。警察署よ。ただねぇ。」眉間を揉みながら言いよどむ。「え、殺人とか詐欺とか。」「んな訳ないじゃない!」なら、はっきり言ってくれ。「…重要参考人になってるみたいなのよ。」…は?


ここあさんは、夜はガールズバー、昼はドラッグストアで働いていた。旦那はいない。明るくて素直な人だ。良く働いて、自分がこのアパートに来て約3ヶ月、積極的に声をかけて貰い大変有り難かった。だが、自分が来る何年も前。まだ乳飲み子のたっくんをみっちゃん達に預けて、脇目も振らず男に熱をあげてしまう“恋愛体質”でもあった彼女は、度々帰って来なかった事があったらしい。しかし、流石は地元の有名人。みっちゃんが声をかけると、すぐさま居場所がわかり、男の方も「こぶつき、金無し、みっちゃんつき」と解ると早々に別れるので、そうなるときっぱりさっぱり帰ってくるのだと言う。しかし「ここ一年程は何も無かったのよ。」それなりに恋愛はしていたみたいだがいきなり帰って来ないと言う事なく、事前にみっちゃんや、ゆり子さんにたっくんを頼むようになっていたし、泊まりも無かったのだという。「担当の警察官の話しだと、“殺人未遂”の現場に居合わせたらしいの。」「ほう?」「…もっと驚きなさいよ。」「え、驚いた方が良かったですか?」「…いえ、落ち着き払ってくれるから逆に助かるわ。」本人に怪我はない。が、原因は彼女にある。だから、話を聞き、確認が取れるまで拘束となったとの事。で、まだ不確定な部分はあるものの一度帰宅出来るまでになった。出来たらご家族かお知り合いの方に迎えに来て頂きたいらしい。その際に当人の日頃の行いを聞く算段なのだろう。「あっ、お店に連絡入れなきゃ。」みっちゃんは慌てて「ぷいぷい」にいる“たつやさん”か“じんさん”にLINEを送る。「で、どうするんですか?」「え、何が?」「どうやって迎えに行くんすか?タクシー?」「…車出すわ。」「あれ、みっちゃん、車乗れたんすか。今までみた事なかったから免許無いんだとばかり。」たまに、正人さんにバイクで送って貰ってるし。「実家に車、置いてるのよ。取りに行くのが面倒で。」カップのコーヒーを飲み干し、流しへ運びながら答える。「で、自分は部屋戻っていっすか?ゆり子さん達戻って来るまで待ちます?」時計は8時を過ぎている。本来なら今ごろ意識を失っている頃だ。上着を着つつ「そろそろ帰って来ると思うから、もう少し、起きてて。」とウインクと合掌を向けられた。それにどれだけの価値があると勘違いしているのだろうか。解らない。

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