カードゲームと謎解き
雨の日、外で遊べない放課後。
だけど、そんな時こそ、教室の中に小さな冒険が隠れている。
1枚のカードに込められた思いと、仲間たちとの駆け引き。
だけど楽しいはずのゲームに、ふいに現れた「なくなったカード」の謎――
探偵倶楽部の仲間たちは、カードバトルの裏に隠された小さな事件に気づく。
これは、友情と信頼を守るための、静かな謎解きの物語。
「今日、外でサッカーできひんなぁ」
梅雨の雨音が窓を叩く昼下がり、さくらが退屈そうにつぶやいた。
その言葉に、詩織がにっこりと微笑む。
「じゃあ、カードゲームでもしない? 新しいデッキ、持ってきたんだ」
教室のすみっこ、みんなで机を囲み、小さなカードバトルが始まった。
「いざ、決闘や!」と蓮が言えば、
「ぼくのターン、最強ドラゴンを召喚!」と高橋が叫ぶ。
勝ったり負けたり、笑ったり悔しがったり。
だけど、ふとした瞬間、詩織が困った顔をした。
「……あれ? 私の『月光の魔術師』が……ない」
お気に入りの切り札カードが、デッキの中から消えていた。
誰もそんなことをするはずがない――けれど、どこを探しても見つからない。
「これは、ただの遊びやない。事件や」
蓮が真剣な目で言った。
探偵倶楽部は、さっそく調査を開始。
まずは今日一緒に遊んだメンバーのカードを確認し合い、教室の隅々まで探す。
ロッカーの中、黒板の裏、窓際の本棚……どこにもない。
そこへ、隣のクラスの萩原くんがやってきた。
「……あの、これ……僕の机に入ってたんだけど……」
彼がそっと差し出したカード。それは、まさしく詩織の「月光の魔術師」だった。
「どうしてそこに?」
さくらが首をかしげる。
萩原くんは、昨日の放課後、誰かが落としたカードを見つけ、
「もしかしたら、僕の友達のかな?」と思って自分の机に入れていたらしい。
でも、そのまま忘れてしまい、今日の騒ぎに気づいて慌てて返しに来たのだった。
「疑ってごめんね」とさくらが頭を下げ、
「大事にしてたカードだから、返ってきて本当に良かった」と詩織がほっと笑った。
萩原くんも「次から気をつけるよ」と優しく言った。
すべてが解決したあとは、またいつものようにカードバトルを再開。
でも、今度は勝ち負けにこだわらず、みんなが楽しめるように声をかけ合った。
「次はぼくが最強の一手、決めるからな!」
「ふふ、それはどうかな?」
雨の音に負けないくらい、笑い声が教室いっぱいに響いた。
こうしてまた一つ、探偵倶楽部の放課後に、小さな思い出が増えたのだった。
⸻
完
なくなったカードの謎は、探偵倶楽部の手で無事に解き明かされた。
だけど、本当に大切なのは、勝ち負けよりも「仲間を信じること」だと気づいたみんな。
雨音の中で育まれた絆は、これからもずっと強く続いていく。
さあ、次はどんな謎と笑顔が待っているのだろうか。
満開小学校の毎日は、今日も静かに輝いている。




