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NEW/探偵倶楽部  作者: マーたん


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家族旅行と京都と事件簿

旅行は楽しかったけれど、それを「絵日記」にするのは、ちょっぴりむずかしい。

どんなふうに描けば、あの日のワクワクやドキドキが伝わるかな?

でも、思い出って、忘れないためだけじゃなくて、誰かとわかち合うものかもしれない。


これは、さくらが京都で出会った冒険と友だち、

そしてそれをひとつひとつ思い出しながら、絵日記に描いていく、

夏休み最後の小さな物語。




家族旅行と京都と事件 二日目


翌朝、京都の町は静かな朝霧に包まれていた。

旅館の窓から見える東山の稜線に、さくらは思わず見とれてしまう。


「さぁ、今日は嵐山よ!」

母の元気な声に、朝ごはんの湯豆腐を食べながら、眠そうにうなずくさくらと父。


嵐山に着くと、竹林の小径が静かに出迎えてくれた。

木漏れ日が揺れるその道を歩いていると、突然さくらは“昨日の少年”とばったり再会する。


「君……!昨日の黒猫探しの!」

「あ、やっぱり君も京都旅?」


少年の名前は新谷しんたに ひかる、大阪から来た小学生だった。

彼もまた家族と一緒に京都に来ており、今日は偶然同じ嵐山に来ていたのだった。


「せっかくだから、一緒に竹林の奥、探検してみない?」


さくらと光は、少し奥まった道に足を踏み入れる。

その途中、古びた地蔵堂の裏で、またしても“怪しい張り紙”を見つける。


『この竹林のどこかに「時の鈴」を隠した

 見つけられるかな? 旅の思い出に——』


「また宝探しか!」


二人はワクワクしながら、竹林の奥や、小さな橋の下、静かな池のほとりをくまなく探す。


やがて、小さなほこらの中に、古い鈴が置かれているのを見つけた。

錆びついてはいたが、振ると不思議なくらい澄んだ音がした。


「これが……“時の鈴”? まるで昔話みたいだね」


光はにこっと笑い、

「じゃあ、この鈴もちゃんと祠に戻して、僕たちの冒険もおしまいにしよう」


その言葉に、さくらも深くうなずいた。

——宝物を持ち帰るよりも、探した時間こそが宝物だと、二人は知っていた。


午後、さくらは光に「またどこかで会えたらいいね」と手を振った。

光も「次は大阪に来てよ!」と笑って去っていった。


その夕方、家族で見た嵐山の夕陽は、

昨日よりも、ちょっとだけ胸にしみる美しさだった。


——こうして、京都旅行二日目も、

小さな冒険と新しい友達との出会いでいっぱいになったのだった。



三日目に続く…











家族旅行と京都と事件 三日目


旅行最終日の朝、旅館の窓から差し込む陽ざしに、さくらは名残惜しそうに目を覚ました。

「もう帰る日かぁ……」


今日は家族そろって伏見稲荷大社へ向かう予定だった。

朱色の鳥居が連なる千本鳥居をくぐり抜けると、

風に揺れる木々の音と、遠くから聞こえる鈴の音が耳に届いた。


さくらはふと、昨日拾った“時の鈴”の音を思い出す。


「この町には、まだまだ知らない秘密があるんだろうな……」


その時、境内の掲示板にまたしても見覚えのある貼り紙が。


『この町で最後の宝を見つけよ

 ヒント:赤い鳥居の途中、

 静かな場所に時を忘れた宝は眠る』


「また……!?」


父も母も「行ってきていいよ」と笑顔で送り出してくれた。

最後の冒険に胸をときめかせながら、さくらは千本鳥居の奥へと歩き出す。


誰もいない静かな分かれ道に、

小さな祠を見つける。そこには、

小瓶に入った手紙と、折り鶴が一羽、そっと置かれていた。


手紙にはこう書かれていた。


『宝物とは、出会いと笑顔

 忘れないで、また旅をしよう』


きっと、これまでの冒険を仕掛けた誰かからの最後のメッセージ。

もしかしたら、去年の卒業生か、昨日の光くんか、あるいは京都に住む別の誰かなのか。


でも、さくらはそれ以上考えなかった。

「また、どこかで会えるよね」


折り鶴をそっとポケットに入れて、

最後に鳥居を振り返り、大きく深呼吸した。


午後、新幹線の窓から見えた京都タワーが、

まるで「またおいで」と手を振っているように見えた。


こうして、さくらの三日間の京都旅行は、

観光だけじゃない、冒険と出会いに満ちた思い出になったのだった。


——でも、満開小学校の物語は、

まだまだ続いていく——。
















おまけ…









さくらの絵日記




夏休みのある日曜日、さくらは机に向かって頭を悩ませていた。

目の前には、夏休みの宿題「旅行の思い出絵日記」。


「うーん……どこから描こうかな?」


楽しかった京都旅行は、どのシーンも思い出深くて、一つに決められない。

清水寺のおみやげ屋さん、嵐山の竹林、伏見稲荷の千本鳥居……

それに、迷子の黒猫や、光くんとの出会い、宝探しのことも……。


「よし、ぜんぶ描いちゃえ!」


さくらは大きく息を吸って、

まずは清水寺の大きな舞台を、クレヨンで力いっぱい描き始めた。

その横には、おいしそうな抹茶パフェと、笑顔の家族の絵。


次のページには、竹林の中で光くんと一緒に探検する二人の姿と、

祠で見つけた「時の鈴」を小さく描き込んだ。


「ここは……ちゃんと鈴の音が聞こえてくる感じにしたいな」


さらに伏見稲荷の鳥居を何本も描いて、

一番最後には、千本鳥居の奥で見つけた折り鶴と手紙。


「宝物は出会いと笑顔……」


その言葉を、ページの端っこに、そっと書き添えた。


完成した絵日記を見て、さくらは満足そうに微笑んだ。


「これで完璧!」


翌日、学校で友達に見せると、みんな目を輝かせて言った。


「すごい冒険じゃん!」

「京都って、そんなに楽しいの?」

「私も行ってみたい!」


さくらはちょっと照れながらも、心の中で思った。


——そうだ、旅って、誰かに話した時にも、もう一度楽しくなるんだ。


こうしてさくらの夏休みの絵日記は、

ただの旅行の思い出じゃなくて、

大切な宝物になったのだった。




旅の思い出は、時間がたつほど色あせていくものと思っていた。

でも、さくらの絵日記は違った。

絵にするたび、色をつけるたび、あの日の空気や音、匂いがよみがえってくる。


そして、誰かに見せることで、また新しい物語が生まれていく。


京都の静かな路地裏で出会った黒猫、竹林での宝探し、

そして千本鳥居の奥に隠された小さな秘密。


それはきっと、さくらだけの宝物。

だけど、同じ気持ちを共有した光くんや、家族や友だちにも届いているはず。


さくらの小さな冒険はこれでひと区切り。

でも、これからも彼女の物語は続いていく。

次はどんな出会いと冒険が待っているのだろうか——。


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