さくらと満開幼稚園の絵本の読み聞かせ事件
絵本タイトル:
「小さな森の魔法の扉」
あらすじ:
小さな森に住む動物たちは、ある日、不思議な扉を見つけます。
その扉は、迷子になった心を癒す魔法の入り口。
扉の向こうで出会う妖精や精霊たちと一緒に、勇気や優しさを学びながら、森の仲間たちは少しずつ自分の不安や悲しみを乗り越えていきます。
物語の中には、子どもたちが共感できる「勇気を出すこと」「友だちを思いやること」などのテーマが散りばめられていて、最後にはみんなが笑顔で抱き合う場面で終わります。
放課後の満開幼稚園。
4年3組のさくらは、地域ボランティアとして絵本の読み聞かせに招かれていた。
小さな園児たちがワクワクした表情で集まる中、さくらはいつもの笑顔で準備を整えた。
「みんな、こんにちは!今日は素敵な絵本を持ってきたよ」
カラフルな表紙の大きな絵本を開くと、
「わあ、かわいいね!」と子どもたちの目が輝く。
読み始めると、幼い声が部屋に響いた。
「お花が咲いたよ!」
「小さなウサギさん、どこいくの?」
しかし、話が進むにつれて、突然ページが風もないのにバサバサとめくれ始めた。
「わっ、どうしたの?」
「あれれ?」
さくらはびっくりしながらも慌てて絵本を押さえたが、ページの隙間から青白い光が漏れ出す。
部屋は幻想的な光に包まれ、子どもたちは固まったまま見つめていた。
「みんな、大丈夫だよ。怖くないからね」
さくらは必死で声をかけた。
すると、部屋の隅に小さな影がふわりと現れた。
それは人の形をしているが、透けるように儚く、まるで風の精のようだった。
「誰……?」さくらは問いかける。
影は何も言わず、ふっと消えた。
先生も駆けつけ、子どもたちを落ち着かせたが、さくらの心はざわついていた。
帰宅後、さくらは絵本をもう一度手に取り、隅々まで調べた。
すると、表紙の裏に小さく書かれた文字を見つけた。
《迷いし心を導く魔法の扉》
「魔法の扉……?」さくらは不思議な感覚に襲われた。
翌日、さくらは幼稚園に再び訪れ、園児たちと一緒に絵本の読み聞かせを始めた。
今度はページは勝手に動かず、静かに物語は進んだ。
読み終わると、またあの影が現れ、今度は優しい光を放った。
「ありがとう」
どこからか声が聞こえたような気がした。
子どもたちは笑顔で、さくらも安堵の笑みを浮かべた。
それからというもの、さくらは絵本と共に幼稚園を訪れ、
影の正体を探りながら、子どもたちに物語の力を伝え続けた。
影は、迷子の心の精霊であり、子どもたちの不安や悲しみを少しずつ癒していく存在だったのだ。
さくらの読み聞かせは、ただのボランティアではなく、心と心をつなぐ魔法の時間となった。
これからも、満開幼稚園の小さな仲間たちと、さくらの絵本の冒険は続いていく。
⸻
完
小さな森の魔法の扉
絵本のページがひらひらと風に舞い、見えない精霊たちがそっと寄り添う。
子どもたちの笑顔と、小さな影の出会いが、世界を少しだけ優しく変えていく。
この物語は、目に見えない心の扉をそっと開く魔法の一歩。
迷いも、不安も、みんなが抱える大切な気持ち。
それを恐れず、受け止める勇気が、明日の光になる。
またいつか、満開幼稚園で、さくらと小さな仲間たちが織りなす不思議な時間に、会いに来てください。
扉は、いつでもあなたの心に開いているから。




