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hot heart story・・・003 静かな別れ
いつもと変わらない朝を迎えた。あれ?クロの姿が・・・
陽は目を覚まし床を見ても、姿がなかった。戸締りは、しっかりしてある。部屋を探した。ベットの下、洗面所、浴室・・・・・
唖然とした。
冷や汗が、なぜか止まらない。脱走は不可能、ならば何なんだろう。エサは空っぽになっていた。
自分で食べ、水も飲み、姿を消した。
陽はどうすることもできず、クロのいない生活を再開した。
ソファーに座り、手のひらに残るぬくもりの記憶が、遺言のようにも思えた。
「ありがとう、クロ」貴重な時間を感謝している。
ポツリとつぶやいた。
丁度その時、バイブレーションで振動しニュース速報を受信した。
『大型トラック横転、大学通学路を塞いだ。ケガ人はゼロ。
現場では、一歩手前で信号待ちをしていた学生が多く、奇跡的に事故を免れていた』
あっ、これいつも通る道だ、今朝は、クロを探していて出かけられなかった。偶然か、必然か、それとも・・・
陽はなぜか"見守られている"ように感じた。
それはクロの姿が消えてしまった部屋の中で、クロが近くにいる気がしたのだった。