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異世界で文明開化のお手伝いです  作者: 秋乃 よなが
第十三章 聖誕祭とときめきイベント(再)を経て思いつく

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第四十七話


「すごい!スープになった!」


「味見もしてもらえるかい?」


 美波はフェルディナンドが一緒に持ってきたスプーンで、スープを一口すする。うん、おいしい。あの味気ない携帯食スープより何十倍もおいしい。


「フェルディナンドさん…大成功です、これ!」


「ふふっ、よかった」


 満面の笑みで喜ぶ美波につられるように、フェルディナンドも笑顔を見せる。


「これでスープはもちろん、お粥やシチューなんかも携帯食として持って行けるようになりますよ!汁気のあるものだったら、なんでもフリーズドライ化できると思います!」


「それはいいね。騎士団の皆が大喜びしそうだ。そうだ。いくつか種類を作って、騎士団にお試しで食べてもらうのがいいね。その中から人気のあったものを本格的に作るというのはどうだろう?」


「いいアイディアだと思います!実際に食べる頻度が高いだろう方の意見を伺いたいです!」


「じゃあ決まりだね。騎士団には私の方で手配しておくよ」


 フリーズドライの魔導具と製法については、冷蔵庫と同じく王家に納めるという形にした。もともと引っ越しをフォローしてくれたお礼にと考えていたのだ。いいお礼になったのではないかと、美波は自画自賛する。フリーズドライの携帯食が一般化すれば、ハーフェン村への帰省の旅も随分と楽になることだろう。年内に大仕事を終えた美波は、満足した気持ちで一年を終えたのだった。


 そして第一の月。新年早々、美波はベルンハルトに呼ばれていた。何かやらかした記憶はないので、なぜ呼び出されたのか分からない。やや緊張した面持ちで謁見の間へと向かえば、そこにはベルンハルトとフェルディナンド、見知らぬ騎士が二人立っていた。


「よく来てくれた、オーツカ嬢。突然呼び立ててすまぬな」


「いえ。それであの、ご用というのは…?」


 ちらりと騎士二人の様子を見遣る。一人は筋肉隆々のワイルドな面持ちの人物が。もう一人はすらっとしたスタイルの良さが目立つ塩顔の人物が、美波の方をじっと見ていた。


(なんで見られてるの!?私、なんかしたっけ!?)


「用というのはそこの二人でな。第三騎士団長と第四騎士団長が、其方に礼を言いたいそうだ」


「へ?お礼?」


「オレぁ、第三騎士団の団長ゲオルク・ツェラーだ。今日はアンタに直接礼が言いたくてよ。王サマに頼んで会えるようにしてもらったのよ」


 筋肉隆々ワイルド(づら)は、見た目を裏切らない荒々しい話し方だ。


「私は第四騎士団の団長ミハエル・ラフラムです。突然のことで驚いたでしょう。我々がお礼を言いたいのは、フリーズドライ食品のことです」


 スタイリッシュ塩顔も見た目を裏切らない話し方で、知性と品のよさが伺える。


「ええっと…フリーズドライに何か…?」


「何かってことはねぇ!アレは最高だ!魔物狩りの士気が高まってしかたねぇよ!」


「我々も視察で遠出をするものですから、温かくおいしい食事があるというだけで業務効率が向上しまして」


 二人の団長の話によると、第三騎士団は主に魔物討伐を担当し、第四騎士団は国内外の調査や問題解決を担当する騎士団らしい。そんな業務の中で、フェルディナンドが手配してくれたフリーズドライ食品のテストがとても気に入ったらしい。開発者である美波に直接お礼が言いたいと、ベルンハルトに直談判したそうだ。


「そういうことでしたか。フリーズドライ食品がお役に立ったようで何よりです。でも一番の功労者は魔導具を開発してくれたフェルディナンドさんとホルストさんなので、お礼でしたらそのお二人に言っていただければと思います」


「なーに言ってんだよ!そんな斬新な方法を思いついた奴もすげぇだろ!」


「謙遜は美徳ではありますが、我々は貴女様にお礼を言いたいのです」


「…そう言ってもらえるとすごくうれしいです。こちらこそありがとうございます」


 自分の発想が誰かの役に立った。正しく言えば地球の先人の知恵なわけだけれど、それでも自分が誰かの役に立てたことがうれしくて、美波の顔は自然とほころんだ。


 そうして騎士団長たちとの会話を終えて謁見の間を出ようとする美波に、フェルディナンドがエスコートを申し出た。断る理由もないので承諾すれば、そのまま温室まで散歩に誘われた。


「あのように喜んでもらえてよかったね。フリーズドライ化したい食品については、たくさん意見が届きそうだけど」


「はい、本当によかったです。これもフェルディナンドさんたちのおかげですね。ありがとうございます」


「何を言っているんだい。団長たちも言っていたけれど、ミナミの発想があってこそだろう?」


「…へへへ」


 温室の中は花々が咲き誇っていた。寒い冬でも温かく花が見られるようにと、何代か前の王が王妃のために作らせたらしい。ロマンチックな話だ。


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