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異世界で文明開化のお手伝いです  作者: 秋乃 よなが
第十三章 聖誕祭とときめきイベント(再)を経て思いつく

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第四十六話


 ロルフェの言葉に続き、美波、ロルフェ、ギュンター、信者たちはその場で膝をつく。


「創造神ファシエル様、貴女の降誕を祝うこの日に私たちは心から感謝を捧げます。貴女の愛と平和の光が私たちの心に満ち、世界を照らしますように」


 ロルフェの祈りの言葉とともに人々は心の中で祈り出す。美波も例外ではなく、心の中でファシエルに話しかけた。


(女神様、ご無沙汰しております。今ではすっかりこちらの生活に慣れて、周りの人たちによくしてもらいながら元気に過ごしています)


 そのとき、女神像が強烈な光を放って輝いた。信者たちから驚きに満ちた声が上がる。


(ああ…この光、知ってます…)


 眩しさに目を閉じ、次に開いたときにはそう、美波はファシエルと対面していた。


「ようやく再会できましたね。待ち侘びていましたよ、ミナミ」


「あー、ですよねー。女神様に会うパターンですよねー」


「ミナミが全然会いに来てくれなかったので、思わずここに召喚してしまいました」


 てへっと擬態語がつきそうなお茶目な笑顔を見せるファシエル。女神の気まぐれで今頃下界では大騒ぎになっているに違いないと、美波は現実逃避をしたくなった。


「それにしてもミナミのおかげでアステリアの文明がまたひとつ進みました。冷蔵庫に日本食、フリーズドライなるものも開発中のようですね。お礼を言います。ありがとう、ミナミ」


「いえいえ、そんなお礼を言われるようなことでは。女神様に言われた通り、自分の好きなように生きて、思いついたことをやってるまでですから」


「ふふっ。ミナミをこの世界に召喚して本当によかった。あなたは異世界の文明開化に最適な人物です」


「そう言ってもらえると召喚された甲斐があります」


「これからも引き続きよろしく頼みますね。あなたの旅に幸多からんことを」


「はい。いつも見守ってくれてありがとうございます、女神様」


 ファシエルとの短い邂逅を経て、来たときと同じように強烈な光が美波の視界を埋め尽くす。そうして視界が戻ったときには、女神像の前で跪いていた。


 その次の瞬間。まるで女神からの祝福だといわんばかりに、美波の頭上からいくつもの煌めきが降り注いだ。その神秘的な光景に、ロルフェ、ギュンターを含む信者たちが言葉を失う。


(あ、これダメなパターンだ)


 美波が諦めの境地に至ったとき、大聖堂を揺るがすほどの大きな歓声が上がった。


「聖女様にファシエル様の祝福があったぞ!」


「ミナミ様こそ唯一無二の聖女様よ!」


「なんと神々しい光景だ!これは語り継がねば!」


 一度同じ光景を見ているはずのロルフェもまた、大興奮していた。ギュンターなど、心臓が止まってしまわないかと心配になるくらい、頬を赤くしてロルフェの手を取りながら興奮していた。


(これはもうどう足掻いても聖女じゃないって信じてもらえない…はあ…)


 それは美波が、自分は聖女ではないと否定することを完全に諦めた瞬間だった。ちなみにこの話は、聖教はもちろん、王家でも語り継がれることとなる。


 ***


 聖誕祭も終わり、新年まであと少しという日。フェルディナンドから連絡が届き、美波の私室で会うことにした。


「年の瀬にゆっくりしているところごめんね。ついにフリーズドライが完成したから、どうしても見てほしくて」


「え!すごい!もう完成したんですか!?」


「うん、これなんだけど」


 フェルディナンドが取り出したのは器に入った四角い小さな物体。パリッと乾燥したそれは、まさしくフリーズドライされた食品に見える。


「イルメラさん、湧かしたお湯を準備してもらうことはできますか?」


「もちろんです」


 イルメラが準備している間に、フリーズドライ化までの話を聞く。一番苦労したのは、やはり乾燥させる技術だったという。


「火と風の魔石を使うのは想定通りだったけれど、どうしても乾燥にムラが出てね。熱風がうまく回りきってないことにホルストが気づいて、そこから土の魔石で熱風を反射しやすい壁を作ることに成功したんだ。一言に壁を作ると言っても、硬さや表面の滑らかさで乾燥具合に影響が出て――」


「お待たせいたしました」


 ややげんなりした様子でフェルディナンドの話を聞いていた美波にとって、イルメラの戻りは救いの手に見えた。


「ありがとうございます、イルメラさん。早速、この器の中に注いでもらえますか?」


「……?かしこまりました」


 フリーズドライ化された食品を知らないイルメラは一瞬不思議そうな顔をしたが、美波に言われた通りにお湯を注いだ。するとどうだろう。器に入った四角い小さな物体はするりと溶けていき、野菜の入ったスープに早変わりした。


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