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異世界で文明開化のお手伝いです  作者: 秋乃 よなが
第十三章 聖誕祭とときめきイベント(再)を経て思いつく

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第四十五話


「さあ、ミナミ様。起きてくださいな。聖誕祭の準備を始めますよ」


「…ふえ?なんかいつもより早いような…?」


「当然ですよ。ミナミ様を誰よりも美しくしないとですもの」


「ふえぇぇええ?」


 ゲルダに起こされたものの、いまだ寝ぼけ眼の美波。そのまま浴室へと連れて行かれ、いつもなら遠慮している入浴の手伝いもされて、イルメラに身体をピカピカに磨かれた。


「ミナミ様、お次は香油を塗ります」


「じ、自分で塗れるよ!?」


「ダメです。今日は入念に塗り込む必要がありますので」


「ひえっ」


 ようやく意識がはっきりしてきたところで、今度は身体中に香油を塗られる。ついでにマッサージも施され、美波はその痛さに悶絶した。イルメラいわく、むくみが溜まっているとのこと。


 続いては身体中に粉を(はた)かれた。細かく砕かれた真珠の入った粉ということで、肌をキラキラさせて綺麗に見せてくれるらしい。ただ、聖女のドレスは露出が少ない。(はた)く意味はあるのかと思った美波だが、一生懸命に準備をしてくれているイルメラに申し訳なくて、そんなことは言えなかった。


 そこから聖女のドレスに着替えて、これまた整形級の化粧を施され、髪型を整えてもらう。至れり尽くせりではあるものの、いい加減じっとしていることに飽きてきた頃、ようやく全ての準備が整った。


「お綺麗ですよ、ミナミ様」


「はい、最高の仕上がりです」


 ゲルダとイルメラに褒められた通り、鏡に映る姿にいつもの一般人の美波はいない。どこからどう見えて深窓の令嬢で、どこか神秘的な雰囲気さえある。


「うわあ、これはまたすごく化けましたね。すごい」


 ――ただし、喋らなければの話である。


 時間は、なんやかんやで正午の一時間前になっていた。典礼儀礼は正午から始まる。美波はそのまま馬車へと乗り込み、大聖堂へと向かった。ちなみに護衛のリステアードからは最上級の誉め言葉をもらった。『――とてもお綺麗です、ミナミ様。これではファシエル様も嫉妬してしまうかもしれませんね』と。


(リステアードさんは女神様に会ったことがないからそんなこと言えるんだっ。本物の女神様は美しいとか、言葉で言い表せられる次元じゃないんだからねっ)


 照れを、心の中で全力で誤魔化そうとする美波であった。


「おお、聖女様!いつも以上に神々しいお姿ですな!信者たちも大変喜びましょう」


 大聖堂に着くと、ロルフェと神官たちに出迎えられた。やけに手厚く迎えてくれるなと思いきや、案内された大聖堂の中にもう一人、見慣れない人物が立っていた。


「聖女様。こちら、我が聖教のギュンター・エル・エーベルスト教皇でございます」


 それは、聖教で一番偉いおじいさんだった。


「ほっほっほ。初めまして、聖女様。お噂はかねがね伺っております。本日はファシエル様への祈りを共に捧げてくださるとのこと。大変光栄です」


「は、初めまして教皇様。大塚 美波と申します」


 突然の大物の登場に美波は動揺する。とはいえ年に一回の聖誕祭なのだ。大規模な典礼儀式であれば、聖教のトップが出てきてもおかしくなかったなと思い直した。


 そしてロルフェから、典礼儀式の一通りの流れを教えてもらう。祈り方や祈りの言葉なども教えてもらって、大聖堂の控えの間に移動した。しばらくすると、大聖堂に信者たちが入ってくるざわめきが聞こえてきた。ただ祈るだけとはいえ、美波の緊張はどんどん高まっていくのだった。


「では聖女様、のちほど。どうぞよろしくお願いいたします」


 正午の鐘の音が鳴り、ロルフェが大聖堂へと向かう。


「これより、聖誕祭の典礼儀式を行います。聖歌、合唱」


 鍵盤楽器の前奏は始まり、やがて大聖堂は信者たちの歌声に包まれた。美しく反響し、上から降り注ぐように響く歌声はとても厳かで神聖な気持ちになる。


 その後、ロルフェによる聖書の朗読があり、ついに美波の出番である祈りの時間がやってきた。美波は教皇ギュンターのあとに続いて大聖堂へと足を踏み入れる。美波の姿が現れた瞬間、大聖堂内はにわかにざわめいた。


「本日はエーベルスト教皇と聖女ミナミ・オーツカ様がともに祈りを捧げてくださいます。今一度、女神ファシエル様への感謝の気持ちを胸に、深く祈りを捧げてください」


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