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異世界で文明開化のお手伝いです  作者: 秋乃 よなが
第十二章 引っ越して早々に活動を開始する

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第四十一話


***


「またおもしろいことを考えたね。それもチキュウの知識かい?」


 翌日、美波の私室を訪れたフェルディナンドは、フリーズドライの話を聞いて目を輝かせた。


「はい、地球では一般的な技術で私も日常的にお世話になってました。冷凍の工程は先日の冷凍庫よりももっと低い温度が必要になるんですが、できそうでしょうか?」


「論理的には可能だと思うけど、技術が追いつくかどうかってところかな。どちらにせよ、やってみないと分からないね。冷凍の工程はホルストに、乾燥の工程は私が開発してみるよ」


「ありがとうございます!助かります!」


 王立魔導研究所の所長と副所長がタッグを組んで開発するのだ。これは期待せずにはいられない。


「早速研究所に戻って試行錯誤してみる。また進捗があれば連絡するね」


「はい、よろしくお願いします」


 そう言って足早に部屋を出て行ったフェルディナンド。美波の話を聞いて、一秒でも早く開発したい気持ちが露わになっていた。


「フェルディナンド殿下、とてもにこやかな笑みで行ってしまわれましたが…他の侍女たちが心配ですね」


「ああ、『歩く誘惑(フェルディナンド)』さんだもんね…」


 未婚の男女が二人きりにならないよう同席していたイルメラの予感は的中する。フリーズドライの開発が楽しみでご機嫌なフェルディナンドに遭遇した侍女たちは、片っ端からその色気にやられてしまったのだった。意図せず侍女の仕事を邪魔するフェルディナンドである。


「さて、ミナミ様。このあとはヴェヒター大司教とのお約束がございます。その前に一度、お着替えをいたしましょう」


 美波を聖女と崇める聖教の大司教ロルフェ・ヴェヒター。なんでも美波にお願いしたいことがあるということで、数日前に訪問したい旨の連絡をもらっていた。大司教からのお願いなんて、厄介事の匂いしかしない。


「えええ。このままの服でもいいんじゃないかなあ」


「いいえ、そのドレスはフェルディナンド殿下との面会用です。ヴェヒター卿との面会は、白を基調とした聖女らしいドレスを着ていただきたいです」


「せ、聖女らしいドレスとは…」


 問答無用で衣装室へと押し込まれ、そのまま着替えること数十分。露出を控えながらも、オーガンジーに似たとろみのある素材が美しいドレスを纏い、髪もまとめた美波が完成した。


「よくお似合いです、ミナミ様」


「あはは…ありがとう…」


 イルメラのスタイリスト技術はすばらしい。通常の五割増しくらい、美人度が上がる。


 そうして一息ついた頃、来客を知らせるノックが鳴った。


「ミナミ様、ヴェヒター大司教をお連れいたしました」


「はい、お通ししてください」


 美波の許可を得てから、部屋の扉が開かれる。グィードの案内のもと、ロルフェが恭しく挨拶をした。


「ご機嫌麗しゅう、聖女様。本日はお時間をいただき誠にありがとうございます」


「こちらまでお越しいただきありがとうございます。どうぞお掛けになってください」


 ソファーに腰かけたロルフェは、美波の近況や新居について雑談を始める。言葉の節々に聖女として敬う態度があからさまで、美波としては少々居心地が悪かった。ロルフェ本人が悪い人というわけでは決してないのだが、過度に敬られると困ってしまう。


「――それで聖女様。本日こうしてお伺いしたのは、聖女様にどうしてもお願いしたいことがあってのことでございます」


(来たっ)


「今月は創造神ファシエル様の聖誕をお祝い申し上げる聖誕祭があるのはご存じでしょうか?毎年、大聖堂では典礼儀式を行うのですが、今年はぜひ聖女様に祈りを捧げていただきたいのです」


(第十二の月の聖誕祭…クリスマスみたいなものかな?)


「ファシエル様に遣わされし聖女様が祈りを捧げれば、ウェインストックだけではなくアレスリア全土に女神の祝福が届くこと間違いなし!ぜひとも!どうかどうか!聖女様に儀式へのご参加をお願い申し上げたい!」


「ちょーっと圧が強いですね!?」


 身体を前のめりにしながら目を見開いて訴えてくるロルフェに、美波は思わずつっこんだ。つっこまずにはいられなかった。


「ごほん、失礼いたしました。どうしてもご承諾いただきたいあまり、少々我を忘れてしまいました」


(だいぶ我を忘れてましたけどね)


「聖女様にしていただくこととしては、当日に女神像に向かって祈りを捧げていただくだけ。お言葉を頂戴したり、その他の儀式に参加していただくつもりはございません」


「祈るだけといわれても…うーん」


 思い出すは、祈った瞬間にファシエルの世界へと飛ばされた記憶。そのとき下界では美波に神々しいエフェクトがかかり、それを見ていた人々の興奮がすごかった思い出しかない。


(儀式ってことは前より大勢の人が参加するだろうし…そんな信者みたいな人たちに神々しいエフェクトなんて見られたら……)


 聖女として崇め奉られる未来しか見えないのである。


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