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異世界で文明開化のお手伝いです  作者: 秋乃 よなが
第十一章 ときめきイベントを経て望みが叶う

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第三十八話


「聖女様、初めまして!私はラナック領の――」


「私はジリス領の――」


「とても素敵なダンスでしたわ!」


「聖女様と殿下、なんてお似合いなんでしょう!」


「あ、あはは…」


 どうしていいか分からずにとりあえず笑って誤魔化す美波と、群がる人々に手早く対応するフェルディナンド。表立って態度には出ていないが、重要そうな人物と、ただのミーハーな人物とで、フェルディナンドの対応は異なっていた。


「ミナミ様」


「あっ、ティーレマンさん」


 群がる人々の中でも特に目立つ存在のリステアードが声をかければ、周囲の人々のざわめきが大きくなった。国一番といえる美人のフェルディナンドに、それに次ぐであろう美丈夫のリステアード、そして今話題の美波。この三人がそろえば、最高に目立つことこの上ない。


「今日もお綺麗ですね。そのドレスもよく似合っていらっしゃいます」


「ありがとうございます。私もこのドレス、すごく気に入ってるんです」


「ミナミ様、よろしければ貴女と踊る権利を私にいただけませんでしょうか?」


「へ?」


「いつも以上に美しい貴女と踊りたいのです」


「え、あ、はい」


 リステアードの誘いに思わず頷いてしまった美波。最初に踊ったダンス以外は踊れないことを正直に話せば、今夜の曲は美波が踊れるように、最初の曲と同じステップでも踊れるような曲ばかり流れているようだと教えられた。


「さあ、参りましょう」


 差し出されたリステアードの手を取った美波。リステアードはその手に口づけを落とし、踊っている人々の方へとエスコートする。そのとき、リステアードとフェルディナンドの視線が意味深に交わったのだった。


 リステアードもまた、ダンスのリードが上手であった。終始穏やかに踊り終えた美波のもとに次は自分だと男性たちが押し寄せて来たが、パートナーであるフェルディナンドが防波堤となって、他は誰とも踊らずに済んだ。


(みな)、楽しんでくれているだろうか?」


 ここでベルンハルトの声が響く。何事かとベルンハルトへと視線を向ける群衆の中に、美波の姿もあった。


「今宵、我が国に大きな貢献をしてくれた人物に褒賞を与えたい。その者は我が国の食文化に革命を起こし、かつ他国との取引にも利用できる技術を発案した」


(うん?これは、もしかして)


「聖女ミナミ・オーツカ様!貴女様の偉大な功績に、ぜひ王として感謝の意と褒賞をお贈りさせていただきたい!」


(私がサプライズ表彰されてるーーー!!!)


 もう完全に自分の出番は終わったと思っていた美波は卒倒したくなった。しかしそんなことにはならず、フェルディナンドに背を押され、おずおずとベルンハルトの前に出る。


「オーツカ様。褒美として何かお望みのものはございますでしょうか?」


「ええっと…急にそんなことを言われましても…」


「王として贈れるものであれば何でも叶えます。お望みのものをお教えください」


「ええっと…ええっと…」


 突然のことで、美波は若干パニックになっている。そのとき思い出したのが、いつも暇を持て余している王城での生活だった。


「わ、私に家をください!」


「なんと…!?」


 美波のその言葉に、ベルンハルトは衝撃を受けたようだ。


「王城での生活に何か不備がございましたか?」


「いえ、そういう意味ではなく…!なんというか、その、自分の城がほしいなあ、と」


「………」


 黙り込むベルンハルト。これはダメだったかと諦めかけたとき、彼は口を開いた。


「――分かりました。王都にオーツカ様の新しい住居をご用意いたします。不自由なくお過ごしいただけるよう侍女もこちらで手配いたします」


「ありがとうございます!」


 望みを受け入れてもらい、これで王城でのニート生活に対する罪悪感から逃れられると美波は喜んだ。そしてパーティーも終わり自室に戻った頃、ふと思った。


「……あれ?家をもらうのはいいけど、維持費とか侍女さんのお給料とかどうしたらいいの…?」


「そこは心配なさらずとも大丈夫だと思いますよ」


 その呟きを拾ったのは、着替えの手伝いをしていたゲルダだった。


「聖女様に不自由させたとあれば国の大事(だいじ)です。全て王家が管理してくれると思いますよ」


「えええ…。それじゃあ場所が変わっただけで、養ってもらってる生活と変わらないんじゃ…」


「いいえ、ミナミ様。ミナミ様はひとつ勘違いされております」


「へ?」


「ミナミ様が発明されたレイゾウコはウェインストックだけの技術です。これがこれからどれほど利益を生み出すことか。ミナミ様が豪遊されても賄える額だと思います」


「ええ?それは大袈裟な気がするけど」


「決して大袈裟ではありませんよ。それでももしミナミ様が心苦しいということであれば、これからも発明を続けていただければ、それが国の利益となりますよ」


「うーん、そっかあ。じゃあもっと頑張らないとなあ」


 改めてアレスリアでの文明開化を頑張ろうと思う美波であった。


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