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異世界で文明開化のお手伝いです  作者: 秋乃 よなが
第十一章 ときめきイベントを経て望みが叶う

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第三十六話


「フェルディナンドの了承は取ってある。其方のパートナーになれることを光栄に思っていると言っていたぞ」


 どこでフラグが立ったのか。歩く誘惑(フェロモン)ことフェルディナンドは、しっかりと美波を気に入ったようである。近頃は、密かな王命にも割りと積極的なご様子。


「当日のドレスはこちらで手配しておくわ。あなたは挨拶とダンスに集中してちょうだいね」


「よろしく頼む、オーツカ嬢」


「は、はひ…」


 こうして急遽決まった美波の聖女デビュー。昨日からダンスの猛練習に励んでいるのだが、日本でもダンスを踊ったことなどない。まったく身体が思う通りに動かないものである。


(いつ足を挫いてもおかしくないぞ、これは。ステップを意識してたら背筋が曲がってくるし、背筋を意識してたらステップを間違うし)


 さらに大きな問題なのが、全身の筋肉痛である。ダンスは全身運動をしているようなもので、普段使っていない筋肉を練習で酷使している。全身に痛みがある中でさらに猛練習するというのは、なかなかの苦行だ。


(くぅ!筋肉痛が辛い!でも翌日に痛みが来るならまだ若い証拠よね!まだ若いってことは、飲み込みも悪くないってことよね!)


 美波は持論で己を鼓舞する。そして再開された練習では、再び彼女の叫び声が響くのだった。


 そしてお披露目パーティー当日がやってきた。朝からゲルダとイルメラにピカピカに磨き上げられた美波は、鏡に映る自分に見惚れていた。


「馬子にも衣裳ってこのことね。プロの技術ってすごい…」


 聖女をイメージしたシルクの白いドレスに、袖や裾の金色(こんじき)の刺繍が映える。美波のストレートヘアは下したままで、頭には月桂樹の葉を模した金の髪飾りが輝いていた。さらにイルメラの手によって綺麗に施された化粧は、彼女を清楚に見せる役割を果たしていた。


「本日の夜会はミナミ様が主役です。楽しんできてくださいね」


 ゲルダが優しく応援したと同時に、フェルディナンドが迎えに来た。


(ぐぅ!すっごい美人…!)


 盛装のフェルディナンドは凶悪である。歩く誘惑(フェロモン)どころか、いっそ歩く凶器(ヴィーナス)と名付けたい。そんなフェルディナンドの色香に惑わされないように、美波はそっと目を逸らした。


「すごく綺麗だよ、ミナミ。よく似合ってる」


「ア、アリガトウゴザイマス」


「うん?なんだかぎこちないね?もしかしてパーティーに緊張してる?」


「ソレモアリマス」


「それも?――ああ、そうか」


 フェルディナンドが美波の顔を覗き込む。濃い紫色の瞳と視線が交わった。


「ミナミは私の顔が好きだからね?今夜の私はどうかな?」


(ぐはっ!鼻血が出るかもしれない!)


 そう悪戯気に笑う天上の美人に、美波は現実逃避でこのまま意識を失いたくなった。もちろんそんなことは叶わない。


「「いってらっしゃいませ」」


 ゲルダとイルメラに見送られ、フェルディナンドのエスコートで舞踏会場へと向かう。いよいよ本番という緊張で表情の硬い美波を見て、フェルディナンドは微笑んだ。


「ねえ、ミナミ。私は五歳から社交術を学んで、七歳からは身内のパーティーやお茶会に、十歳からは正式に父や兄と社交の場に出ていたんだ。知識も経験も十分にあると自負しているよ。だからこそ今、ミナミのパートナーになれている。いざというときは私がいるから安心していいよ」


「フェルディナンドさん…。――はい、よろしくお願いします」


 そう美波を励ますフェルディナンドは眼福ものである。いや、そうではなく、相手に安心感を抱かせる心強さを感じられる。美波は一度深呼吸をして、腹を括った。


 舞踏会場へと続く扉の前で、他の王族たちと合流する。ちなみにヨシュカはお留守番である。そして扉が開かれるのと同時に侍従からの入室宣言がされ、美波はついに大勢の貴族たちに披露されることとなった。


(みな)、よく集まってくれた。誰もが噂を耳にしているとは思うが、このウェインストックに喜ばしくも光栄な出来事があった」


 観衆の前に、威厳ある態度でそう挨拶を始めたベルンハルト。その間も、ほとんどの会場の視線は美波を見据えていた。


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