第五章:盗賊団「焚書(ふんしょ)」、情報を焼く者たち
第五章:盗賊団「焚書」、情報を焼く者たち
ある朝、ロベルタスが印刷所の扉を開けると、紙の山が燃えていた。
「な……!」
ガリ枠が割られ、インク壺は地面に散らばっている。
刷り上がったばかりの「魔物警報速報」は、灰になって舞っていた。
すぐにキプリングとオルヴァーが駆けつけた。
「被害、結構デカいな。どういう連中がやったんだ?」
「サインがあった」ライルが指差す。壁に刻まれていたのは一本の剣と燃える紙のマーク。
義春がその印を見て、眉をしかめた。
「……焚書。情報を焼き、言葉を封じる。盗賊団だ。噂は聞いてたが、まさかうちに来るとはな」
焚書盗賊団とは?
各地で「危険な情報」や「不都合な真実」を流す印刷物・魔法記録・伝書魔獣を襲撃
「文字によって秩序が乱れる」という独自の思想を持つ
情報を扱う者を“知毒者”と呼び、公開を禁じている
最近、ガリ紙印刷で広まる「魔物警報速報」に目をつけていた
スプリング茂吉は被害の調査を終え、緊急会議を開いた。
「これは……ただの嫌がらせじゃない。“伝えること”そのものが狙われてる」
「つまり俺たちのやってることは、敵にとっても意味があるってことだ」キプリングが真顔で言う。
「なら答えは一つ。すり直す」
ロベルタスが言い切った。
「今日も100枚。昨日燃やされた分も、倍にしてすり直す」
義春はうなずく。
「そして、連中を潰す。次に来たら、こっちから出向いて“伝える力が何か”を思い知らせてやる」
作戦:伝える前に撃て
ハシントがスズメとネズミで盗賊の痕跡を追跡
キプリングが「焚書団の過去襲撃履歴」を印刷して罠情報を拡散
ロベルタスがわざと“焚書を煽る特集号”を作成(囮)
スト盾・スト剣が印刷所の影に待機、迎撃準備
夜――盗賊団が再び現れる。今度は十人以上。火のついた松明を持って。
「知毒者に鉄槌を! 全ての紙を、燃やせ!」
だが――
「逆だ。お前らが、情報の敵だ」
ガシャンと盾が構えられ、スト剣が一撃で先頭の盗賊を制圧。
キプリングが風弾で松明を吹き飛ばし、オルヴァーが連射で出口を封鎖。
義春が前に出て言い放つ。
「俺たちはすり続ける。“事実”という名の弾を、世界にばら撒く。邪魔するなら、敵とみなす」
盗賊たちは敗走した。
その翌日、印刷所には2倍の依頼が届いた。
「昨日の速報、命を救われた。ありがとう」
「読みたい。もっと広げてほしい」
「私の村にも来てくれ」
ロベルタスは静かに言った。
「……俺、初めて“刷ってよかった”って思ったよ」
義春は、黙って頷いた。