第一戦:盗賊団との交戦
第一戦:盗賊団との交戦
夕暮れ。赤黒い空を背に、パーティーは盗賊団の拠点を見下ろしていた。
小屋が三つ。見張りが二人。焚き火の煙が上がる。
義春は地図を指でなぞった。
「スト盾は正面突破。スト剣は左右から挟め。俺は後衛に合図を送る。いいな?」
石人間のスト盾が、コクリと頷く。石の首が軋む音がした。
スト剣は剣を抜きながら短く言った。
「了解。三秒遅れたら、俺が仕留める」
「おう、やる気だな」義春はニヤリと笑った。
背後でキプリングが銃の薬莢を確認しながら、ぼやいた。
「風属性、足止めに使う。火は温存。水弾が欲しいけど、在庫切れ」
「そんなもん、現地調達でどうにかしろ」オルヴァーが無造作にボウガンを肩にかける。
「ライル、準備は?」
「下級ポーションしかないですけど……何とか回復はできます!」
小声ながらもしっかり答えるライル。
義春は頷き、短く言った。
「行くぞ、スプリング茂吉――突撃!」
スト盾が咆哮と共に突進。まるで岩塊。正面の盗賊が吹き飛ぶ。
その横からスト剣が滑り込み、剣が二閃。喉を斬り、腕を裂く。
音もなく落ちる盗賊。敵は慌てて反撃に出るが――
「風弾、撃つ!」
キプリングの銃口から渦巻く風が放たれ、敵の体勢を崩す。
「二連射……三連目いけるか? いけるな」
オルヴァーの連続ボウガンが、矢の雨を降らせる。的確に足と腕を貫通。動きを封じる。
「スト盾、左にもう一人!」
義春が叫ぶと同時に、石の盾が音を立てて回転し、盗賊の斧を正面から受け止める。
「ライル! スト剣にヒール!」
「はいっ!」
薬品の瓶を投げ渡す。スト剣が受け取り、そのまま口に放り込む。傷が塞がる。
義春は後方で剣を抜いた。斬るタイミングを見計らう。
「――これが、元軍人のやり方だ!」
一閃。盗賊のリーダーが接近するも、義春の一太刀で沈む。
わずか十数分の戦闘だった。
終わってみれば、盗賊団は全滅。犠牲者なし。
焚き火の前で全員が腰を下ろす。
キプリングがぽつりと言った。
「派手にやったな、スプリング茂吉」
「変な名前でも勝てばいい。な、リーダー?」
オルヴァーが笑う。ライルもそれに釣られて笑った。
義春は剣を布で拭きながら、静かに呟いた。
「――まだ、戦えるな。俺は」