第十一話:「魔法少女の君へ」(対象:「まほきみ」通過者)
第四話以降では先に言ったようにそれぞれのシナリオの三要素と、そのシナリオ作成時の小話を語ります。ストーリー解説というよりは製作裏話といった感じなのでそこはご了承ください。それではどうぞ。
さあ第十一話に来ました。「魔法少女の君へ」の話です。ここまで全部読んでくれている人とか居るんでしょうか?記憶が正しければ読める人は居ないのですが。
ようやく最後かと思いましたが、実は1,2,3,4,8,9,10,11の順で書いているのであと5,6,7話が残っています。そんな~~。果たして間に合っているのでしょうか。
正直語りたいことは山ほどあるのですが、ストーリー解説はラジオやらなんやらですると決めているので今回は控えめにしましょう。ラジオ......するよ......するから......まってね......。
このシナリオを書き上げるのに掛かった時間は約五日でした。ちなみに過去と比較すると極端に短くて、半日の短編で二週間ぐらいが俺の平均です。
なぜそんな短期間で書けたかと言うと、元々このシナリオ、というかストーリーはTRPGにする予定がなかったもので、ストーリーの大枠が形になっていたからです。
当時、というか今でもですが俺はなろうの魔法少女モノをよく読んでおりまして、当然自作のストーリーを作っていたりもした訳です。これも元々はそれの一つでして、なんらかの形にするつもりはありませんでした。
余談ですが俺のそこら辺の自作ストーリーは世界やキャラの設定と物語の展開、それを切り取ったSSもどきで構成されるもので、小説などの媒体にはなっていないのでそれをちゃんとした形で公開するつもりはないです。いつか整えてここで公開したいなとは思っていますが。
基本的にはゼロを話の中心に据えて、主人公たる政府所属魔法少女が謎を解き明かしながら世界の仕組みに立ち向かっていく、みたいな話でした。ただ、最終盤になって話が上手く纏まらなくなってしまいました。
理由としては、ほぼ同じ話をすでに作っていたからが一つです。世界観や根幹設定は違うのですが、終わり方と表面上のストーリーがほぼ同じで差別化できてないな......。と気づいてしまいました。
そして第二の理由。実はこっちが主ですが、結末を変えても納得いかなかったからです。当時の気持ちとしてはやっぱりゼロは死ぬべきだと思っていたのですが、俺の中の主人公ちゃんが全力で抗ってきたので、どちらにせよ納得できなかったのです。
終いに俺の出した結論は、このお話は結末が一つに収束するべきじゃないな、という物でした。そこでこれをTRPGのシナリオにしよう、と思い立ったのです。これが「魔法少女の君へ」というシナリオが生まれた経緯になります。
こんな経緯で生まれたので「やりたいこと」に関しては完全に決まっていました。「何も話さないクソボケ愚か魔法少女の話がしたい!!」です。そしてシナリオ化に伴って「そいつのRPがしたい!!!」に変わりました。
完全に余談ですが初期プロットでは致命傷負った主人公が血反吐吐いて地に這いつくばりながらゼロの自己犠牲にブチギレて、それを悲しげな顔でいなしながらゼロが全部なかったことにしてハッピーエンドでした。癖ですが何か?
ここから現在のストーリーになるまでの過程については長くなるので、ラジオに回します。NPCの由来とか、もろもろです。まあ、こうしてゼロの運命は探索者たちに委ねられることとなったのです。
シナリオ化に伴い変化したのが「コンセプト」の方です。元々のコンセプトは「全部お前のせい」だったのですが、シナリオで探索者以外にそれをやるのもよくないよな、という考えて変更することになりました。
厳密にはゼロも探索者になったのですが、まあHO0は純粋なプレイヤーというわけでもないので、このコンセプトは変更されました。後に小説版のコンセプトへと転用されることになります。
斯くしてどうしたもんかと考えていた俺でしたが、ある時ふと思いつきます。「『あなたは魔法少女でない』×3の中に『あなたは魔法少女だ』」があったらおもろくね?と。そしてコンセプトは「魔法少女は誰なのか」という問いそのものへと変わりました。
ここでストーリーの根幹はほぼ完成しました。果たしてプレイヤーたちは俺の想定する「魔法少女」を超えてきてくれるのか否か。それが楽しみでした。
ちなみに便宜上ゼロと呼んできましたが、ゼロの名前が付いたのもここらへんです。HO5が作られるのはもっと先です。
さて、根幹は完成したものの、この時点での「魔法少女の君へ」は現在、正確には一陣の内容とは大きく異なっていました。それが大きく変化したのは「ゲーム性」を作る部分でした。
元々はこのお話は戦闘の比重は小さく、物語の部分の比重が大きかったのです、まあ基本的にゼロが敵をワンパンしていくだけなので当然と言えば当然なのですが。
しかし、シナリオ化、そして前述のHOにより変則的なバディものになったことでそれがネックとなってしまいます。只の物語なら野良組や政府組のどちらかにスポットを当てて物語を進めてもいいのですが、シナリオでそれをやると待ち時間が多くなるという問題が生まれました。
そして、折角ならプレイヤーには魔法という自由度の高いものを有効活用して欲しいという願いもありました。これは通じるか分かりませんが、魔法とかの自由度が高い能力を上手く使うなら探索とかよりも制限の多い戦闘の方が楽なんですね。
そんなこんなでプレイヤーには戦闘を楽しんでほしい、そのためにはこれだけの戦闘があった方がいい、みたいに比重を調整した所、戦闘シーンがかなり長くなってしまいました。
やはり、戦闘と言うダイスゲームで結末が変わるのがこのシナリオのあるべき形として理想的だと思った俺は、このシナリオのメインを戦闘に切り替えることにしました。ここで大きくシナリオの方向性が変わったのです。
結果的に、イベントは全体に対して影響度の高い部分だけを残してカットすることにしました。本当は魔法少女になれなかった子供たちの話とか、NPCの過去の話とか、戦うことから逃げた魔法少女の話とかもしたかったのですが、イベントはスパイス的に利用することにしました。
ここら辺の話もいつか形にしたいのですが、どうしましょうかね。SSとかで補完している部分もあるのですが......別の物語でやることにしましょうか、いつかなにかするかもしれません。
こうして、「魔法少女の君へ」は戦闘メインである現在の形へとなっていきました。未練がましく書いてしまいましたが、別に後悔とかはしていません。むしろ現在の戦闘時のわちゃわちゃ感は結構好きです。初期ではプレイヤーの笑顔を全力で刈り取る構成してましたからね.....。
これが「魔法少女の君へ」が完成するまでの経緯でした。さて、このシナリオ、今までの話とは別に、俺にとって挑戦のようなものでもありました。
もちろんapngという大きな話もあるのですが、あれはシナリオというより技術的な挑戦だったので別の話とします。そうではなく、シナリオ構成としていくつかやってみたことがあります。
まずそもそも、このシナリオは俺にとって初の完成した長編シナリオでした。今までの最長が黒昼夢の10時間といったところで、二日以上にわたるシナリオを完成させたのは初めてでした。
そして、魔法について。当然PLの要望を聞いてそれをシナリオ内でうまく処理する、というのは最初は出来るのか不安でもありました。しかし、自分への挑戦と確認の意味も込めてやってみることにしました。
なぜこんなことをしたのかと言うと、とあるシナリオ、「天命学院騒動記(仮)」と銘打たれたシナリオが関係あります。このシナリオ、現在は残念ながら無期限凍結としているのですが、異能学園モノで、しかも長期キャンペーンシナリオでもありました。
これを作るうえでネックだったのが「果たして俺は長編シナリオを書けるのか」「PLに考えてもらった異能をシナリオに組み込めるか」といった課題でちょうどそれらにぶち当たっていました。
それらを確かめるため、取り繕わず言えば踏み台としてこのシナリオで試してみようと思ったのです。結果として言えばどちらも「ここが限界」だというのが所感でした。「まほきみ」は割と俺の全力限界だったと思います。
これを受けて、「天命」は永久凍結としたのです、現状で作っても俺のキャパを超えた中途半端なシナリオになってしまうとの判断でした。だいぶ話がズレましたね、そういう意味で「まほきみ」は俺の限界に挑戦したシナリオでもあります。
まあこれから三卓目以降で破綻が起きないとも限らないですが、なんなら一陣シーヴィスも。そこはまあ、その瞬間で成長すればいいので......。なんとかなると信じています。
さて、これらの挑戦の他にも、「まほきみ」では試験的な要素を入れています。それが「設定の不完全性」です。実のところ、まほきみのシナリオ内では未だに十分に説明されていない要素、いわば謎のようなものがかなり残されています。
普段の俺のシナリオでは、こじつけにしろ何にしろ何らかの設定が存在することが多く。謎に気づくと同時に後付けでも設定を考えるようにしています。しかし、「まほきみ」ではあえて謎を謎のままにしている箇所があります。
これは「まほきみ」を終わらせたくないという個人的な願いから来ています。もし完璧な設定が完成したら、その世界はある種の終わりとなってしまいます。今後の展開によっていろいろな続編が作れるように、ある程度謎を残した方がいい、という心変わりによるものです。
元々俺は、設定は強固であればあるほどいいと思っていたのですが、最近はそうではなく、謎を残した方がよい場合もあるのではと思うようになってきました。あえて謎を残したまま終わるのも、大事なのかもしれません。
謎を残しておけば、考察やらなんやらで終わらないコンテンツになれる。そういう作品に触れることによる心変わりでした。
なので、この謎も全てを回収するための続編を作ったりはしません。外伝も別世界になったのでたぶん謎の多くは回収する機会はありません。シーヴィス以降シナリオで展開する気もないので。
もちろん、何かの機会に一部の謎に関しては設定付けするかもですが、いくつかの謎は残そうと思っています。
それこそ、誰かが謎の部分を保管するような二次創作を作ってくれたら滅茶苦茶喜びます。なんなら本編設定と矛盾しててもいいのです、そういう風に扱われるのが望みです。
今後の作品でもこの謎残しを採用するかは分かりませんが、そういう試験的な挑戦もあったのが「まほきみ」でした。
同時期の作品として、今までの集大成を「好奇心」とするなら、今からの意気込みが「まほきみ」だったと言えるでしょう。これを原動力に、今後も邁進していけたらと思います。
それでは!長々と付き合っていただきありがとうございました!!感謝!!!!