うつけ者
小学校三年の教室で、
「美紗生!お前は将来、きっとうつけ者と結婚するぞ!」
「うつけ者ってなーに?」
「辞書で調べれば?」
美紗生は家に帰ると父親に、
「パパ!うつけ者ってなーに?」
「間抜け者とかかな。」
「えっ、ほんと?」
「そうだよ。それがどうかしたの?」
「ううん、別にちょっと聞きたかっただけ。」
美紗生は部屋に戻ると、
「大地のバカ!なんであたしが間抜け者と結婚しなきゃならないの!」
それから二十年後、結婚式当日。
「ねぇ大地?なんで小学校の時うつけ者とあたしが結婚するって言ったの?」
「酒江美紗生から坂上美紗生になるじゃん。」
「それは、大地と結婚するからじゃん。」
「さかえにうを付けるとさかうえになるじゃん。」
「……あんな昔からあたしのことお嫁さんにしたかったの?」
「悪い?」
「ううん。」
美紗生はちょっとうつむいてにんまりした。