帰還
ダンジョンでの侵入者騒ぎの件で学園の警備体制が見直された。そして夏季休暇に入るのだった。
「ダメだ!」
「そうよっ!ここは適当に理由を付けて帰らない方がいいわよ!」
シオンが実家に帰ろうと提案すると、アッシュとルビーが猛反発した。
マリンだけは良くわからず首を傾げていた。
「どうしてシオン君が家に帰るのを反対するのですか?」
ギロッとアッシュとルビーがマリンを睨みつけた。
ひっ!とマリンはビクッと震えた。
「実家に帰ったらシオンが死ぬからだ!」
!?
えっ?シオン君が死ぬってどういうこと???
マリンは戸惑いを隠せなかった。
「大袈裟だな。実家に帰って親父に鍛え直してもらうだけだ。先の戦いで剣術も、もっと鍛えなきゃと思ったしな」
「だから!それは僕が修行に付き合うって言っているだろう!だから実家に帰らなくてもいいだろう!?」
珍しくアッシュが大声でシオンを止めていた。
えっ、本当にどういうこと?そんなにシオン君の実家って恐いの!?
マリンは見守ることしか出来なかった。
「アッシュ、気持ちはありがたいが、もう決めた事だ。実家に帰って、なまった身体の勘を取り戻したい」
シオンの決意は固く、アッシュとルビーが折れるのに時間が掛かった。
そして───
「ねぇ、なんでそんなにシオン君の実家に帰らせたくないの?」
マリンはシオンが居なくなった時にルビーに聞いてみた。その問い掛けにルビーは拳を握りながら、真剣な目で答えた。
「実家に帰ればシオンが死んでしまう可能性が本当にあるからよ」
「そ、それはどういう…………」
ルビーは辛そうに言った。
「シオンのお父さんは王国最強の魔剣士よ。家族として父親としても人格者だと思うけど、訓練中の教官としては最低のクズよ。いつもシオンをボロボロにして死ぬ寸前まで追い詰めるの。何度も、やめるように懇願しても止めてくれなかったわ」
「実の息子をそこまで追い詰めるって………よく無事でしたね」
「シオンのお母さんが回復魔法のスペシャリストなのよ。シオンのお母さんも訓練を黙認しているの。いつもは、ほんわかお母さんなのにね」
悔しそうに拳を握るルビーにどんな両親なのか気になるマリンだった。
「とにかく、私達も一緒に戻ってシオンが死なないように守るわよ!マリン、お願いだから協力して」
ルビーの本気のお願いにマリンは頷くしかできないのであった。
そしてアッシュも思う所があり、真剣に悩んでいた。
『僕も早く覚悟を決めないとな』
願わくばこの日々が続けば良いとアッシュは思っていたが、課された義務から逃れることはできないとも思っているのだった。




