アッシュの秘密
取り敢えず泣いて出ていったアッシュだったが、マリンと大事な話があるため戻ってきた。
「アッシュ君、先生信じていますからね?」
ようやく治療が終わり、アッシュは二人だけで話がしたいとお願いした。
「そこは疑問形ではなく、信じていると言って下さいよ!」
アッシュの肩にシオンが手を置いた。
「日頃の行いのせいだ」
「日頃の行いって大切よね」
お前らなっ!と怒るアッシュにシオン達は笑いながら出ていった。ちゃんと信じている証拠である。
アッシュは、はぁ~と深いため息を吐くとマリンに向かいあった。
「もう目が覚めているだろう?マリン嬢…………いや、転生者さん」
ベットで寝ていたマリンの目が開いた。
「チッ、どおりでうまいこといかないと思っていたけれど、貴方がイベントを壊していたのね」
ゆっくりと起き上がるとアッシュを睨み付けた。
「それは違うがやっぱり転生者か。君はここが乙女ゲームの世界だと知っているのかい?」
「当然よ!ここはRPG要素の強いスマホゲームアプリで大人気だった【聖なる乙女と7人の聖戦士】という乙女ゲームの世界よ。私はガチ勢で、かなりやり込んだんだから、なんでも知っているわよ」
ふむふむそうなのか。
「僕も一通りクリアしたから、ある程度は覚えているよ。僕が主人公の1人だということ。君がメインヒロインで、ルビーが悪役令嬢。それで、マリン嬢に聞きたい。シオンは攻略対象者だったか?」
マリンは首を振った。
「いいえ、シオン・カラー侯爵っていうのは、悪役令嬢のルビーの婚約者というだけの【モブ】よ。ゲームでも文書だけでイラストもでてこなかったわ。それが、あんなに美少年なショタなんて!私のドストライクですわ!」
目をキラキラさせて、欲望を叫んだ。
「その力は、地道にステータスを上げたんだな」
「ええ、あなたも知っていると思うけど、毎日体内の魔力操作を行うと、少しづつだけど、確実に魔力量が増えるのよ。ゲームでは一周目では余り効果はなかったけど二周目以降はステータス引き継ぎできたから、攻略が楽になったわね」
「ゲームでは面倒だけど毎日ログインして魔力操作のボタンを押してたのが懐かしいね。でも、この世界ではゲームより魔力上昇率が高いのはよかったけどね」
「確かにね。今では、ほとんどの同級生の2~3倍以上の魔力量になったしね。それで、貴方の目的はなに?」
ギランッとマリンの目が鋭くなった。
「せっかくこの異世界でも、チートの胡座を欠かずに、必死に魔法の訓練をしてきた私が!悪役令嬢に負けたのよ?貴方が訓練を手伝ったのでしょう?なにが目的なの?」
マリンの言葉に一瞬アッシュは言葉に詰まった。
「別に…………何も。ただシオンとルビーと一緒に楽しく冒険ができればいいなと思っているだけだよ」
マリンは疑惑の目を向けていった。
「信じられないわよ。ゲームのストーリーメチャクチャにしてっ!」
そういうマリンにアッシュは冷めた目で睨んだ。
「マリン嬢、まずそこを考え直した方がいいよ。でなければ君はいずれ死ぬ事になる」
!?
「ど、どういう意味よ!」
「そのままの意味だよ。この世界をゲームの世界だと思っている時点で君は死ぬだろう」
冷静に淡々というアッシュに、初めてマリンに怯えた表情が現れるのだった。
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