俺が何者なのかわかりました。
気が付いた時には、俺たち3人はダンジョンの中にいた。俺たちは既に冒険者だった頃の記憶が蘇っていた。冒険者だった頃の姿に戻っている。
ブラックホールから呼んだのは、パーティの一人だった。
俺たちのパーティは魔王と戦っている最中に、魔王の時空魔法を食らった。その後、一瞬で俺たちはパラレルワールドに飛ばされてしまった。
ダンジョンに残っていた一人はアンドレという。アンドレは、魔王が時空魔法を放った瞬間、防御魔法を発動して無事だった。俺はマルク、ドレークさんはダニエル、そして、ここに連れてきてくれた女性はジャンヌ。
「お前ら、何やってたんだよ。遅いよ。魔王は目の前にいるぞ。」
アンドレは苛立ちながら言った。
どうやら俺たちは戦いの最中で気を失い、またその時間に戻ってきたようだ。アンドレによると俺たちが気を失っていたのは1分くらいだそうだ。俺は合計で60年程生きてきたのに、たった1分だったとは。
ダンジョンに残っていたアンドレは以前から俺たち3人に油断するなと指摘していた。パラレルワールドに飛ばされた3人は、完全に自分たちの強さにうぬぼれていた。どのダンジョンに行っても負けなしだったからだ。この魔王との戦いでも、心のどこかで勝てると思っていた。奢る心がこの結果を招いた。
また時空魔法を食らえば、もう2度と俺はマルクには戻れない気がする。そして、永遠にパラレルワールドで転生を繰り返す羽目になる。それは何としてでも避けたい。俺たちは心を入れ直して、慎重に、戦いに集中した。
「お前ら、よくここに帰ってきたな。今度こそ時空の果てに飛ばして戻ってこられないようにしてやる。」
魔王が俺たちに言った。
「今度こそ、お前を倒す。」
「お前ら人間なんぞに俺は倒せん。」
魔王はそう言うと、時空魔法を放った。
それと同時にアンドレが魔王の攻撃を封じる魔法を発動した。
「マルク、ダニエル、今だ。魔王の心臓を刺せ。」
マルクとダニエルは一時的に動けなくなった魔王の心臓めがけて剣を突き刺した。
「ジャンヌ、封印の魔法を。」
「了解、まかせといて。」
ジャンヌは倒れた魔王に封印の魔法をかけて、戦いは終わった。
俺たちはダンジョンを出て、トカゲの看板の店に向かった。どうやらこの店は俺たちの集合場所だったらしい。
「あんたたち、魔王を倒したのかい?」
おばさんが声を掛けてきた。少し前に見た時より若い。そして、トニーとドレークを当然知らない。
「さすが、強いと噂があるだけあって、すぐに魔王を倒してきたんだね。大したもんだ。」
「いや、そんなことはないですよ。」
僕たち3人は一度魔法を食らって、とんだ目にあったので自信なさげに答えた。
それをアンドレは冷たい目で見ていた。
「アンドレ、そんな目で見るなよ。」
俺はアンドレに文句を言った。
「あんなに注意したのに、油断するからそんなことになったんだよ。」
「申し訳なかったと思っているよ。でも、俺たちだって大変だったんだよ。何度も特定の期間を転生したんだぜ。」
「身から出た錆だ。」
「お前は冷たいヤツだな。アンドレ。少しは慰めろよ。」
こうして俺の長い転生人生は終わった。
読んで頂いてありがとうございました。