ブラックホールに行ってみました。
俺たちはダンジョンの近くの町に着いた。とりあえず宿を探して休もう。何か手がかりが見つかるかもしれない。俺たちはこの町で暫く滞在することにした。
この町は比較的栄えていて、旅行者が滞在するのに不便はなかった。俺たちは宿を見つけ、夕食を食べに行くことにした。
「ドレークさん、ここにしますか。」
「おお、そうだな、トニー」
看板には2匹のトカゲの絵が描かれていた。それを見た瞬間、頭に衝撃が走った。俺はこの看板を知っている。初めて来る町なのに、どうしてだ。
「ドレークさん、俺この看板に見覚えがある気がします。」
「俺もだ・・」
とりあえず中に入ることにした。中は普通の酒場だった。俺たちは適当にオーダーした。運んできたおばさんにも見覚えがあった。
「見ない顔だね、旅行者かい。」
おばさんはビールをテーブルに置きながら俺たちに尋ねた。おばさんは俺たちの事を知らない様子だった。
「はい、ちょっと調べたいことがありまして。」
「そうかい。でも、くれぐれもあのダンジョンには近づいちゃダメだよ。よくここに来ていた冒険者パーティがあのダンジョンから帰ってこないんだよ。もう随分昔のことさ。」
「やはり、危険な場所なのですね。」
俺たちはこの町で調べられることは調べようと町を歩いて回った。所々で見覚えのある場所があった。なぜか見覚えのある人もいる。俺たちはこの町に来たことがあるのだろうか。
俺たちはトカゲの看板のある酒場に度々足を運んだ。ある時、女が声を掛けてきた。
「あなた達、転生を繰り返しているそうね。」
「そうです、その原因を調べたくてこの町まで来ました。何か知っているのですか。」
俺はその女に尋ねた。
「知っているも何も。私はあなた達を待っていたのよ。」
「え、俺たちを?」
「そうよ、やっと見つけたわ。私たちは同じ冒険者パーティだったのよ。」
俺たちは驚いた。俺たちには覚えている前世の前に、まだ前世があったのだ。俺たちは冒険者だった。魔王との闘いの最中にこの時空魔法を食らって、パラレルワールドに飛ばされたようだ。
「この魔法を食らうと、その魂は時代も場所もバラバラの場所に飛ばされてしまう。しかも、顔も何もかも別の人になってしまうから探せなかったのよ。生きている時代もどこに住んでいるかもわからないし。おまけに、冒険者だった記憶を消されてしまって、探しようがなかったの。」
「でも、よく見つけたね。」
「私も何度も転生して大変だったから、自分がどうなっているのかを知りたくて、ここまで辿り着いたの。でね、とりあえずダンジョンの近くに行ってみたの。」
「えっ、危なくなかった?」
「中に入ったわけじゃないから。ダンジョンの近くにブラックホールみたいなのがあって、近づいたら、いつの間にか気を失っていたの。気が付いた時には冒険者だったときの記憶が蘇っていたわ。」
「じゃあ、俺たちもそのブラックホールに行けば記憶が蘇るかもしれないな。」
「ええ、行きましょう。」
そうして俺たちはダンジョンの近くのブラックホールに向かった。
「お前ら、何やっているんだ。早く来いよ。」
そのブラックホールから男の声が聞こえた。その瞬間、俺たちは気を失った。