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23話


「今村さん早退してきたんでしょ?ごめんね。」


本来なら学校にいるはずの今村さんにそう謝ると、気にしなくていいよと言われた。


「そんなことより清田には声掛けてやって。めっちゃ心配してる。」

「それさっき私も言いました。」


今村さんにもそう言われる志信。むしろ私より志信の心配するべきなのでは?と思ってしまう。


「そうだ。その清田だけどあいつも能力者だったよ。」

「志信も?」


あれから一週間以上たっているのだから、当然志信が今村となるか否かがわかるはずで、結果は能力者ということで今村に連なるとのこと。


「今は奏季君に力孔の閉じ方を教わってるけど、もうそろそろで仕上がりそう。」


もうそこまでの段階に来ているのか。

志信も柱の一族に加わるという事実。少し前なら幼馴染も一緒で安心できたし嬉しいはずなのに、今は手放しで喜べない。

むしろ非能力者で今村や妖のことを記憶から消して、あの家に戻って今まで通りの生活に戻ってくれたなら、とさえ思ってしまった。


「さて、そろそろ上に報告しに行きますか。夏南ちゃんも行くよ。」

「え?でも私が離れるとまずいんじゃ……」

「だいじょーぶ。だって「秋穂!」


今村さんの言葉をさえぎるようにして私の名前を呼び部屋に入って来たのは、件の志信だった。


「志信!てか学校は?」


さっきから学校の心配ばっかりしてる気がする。


「秋穂が目が覚めたって今村が言うから、一緒に早退した。」


一緒に早退してなぜこんな時間差になるのか。


「俺は奏季さんが車で送ってくれたんだけど、今村は普通に走って行ったんだよ。それなのに車より早いとか今村の身体能力どうなってんの。」


なるほどそういうことか。今村さんの能力って身体強化系なのかな。

そして志信が言うには、家だの街路樹だの障害物を物ともせず走っていたのだという。必要があれば屋根や看板、電柱さえも登ってしまい、それはさながら忍者のようだったらしい。ツッコミどころは満載だけどそれはもう放棄した。


「できて当然。それぐらい出来なきゃ今村の当主にはなれないよ。」


同い年なのに異能を持つ一族を束ねる彼女の身体能力はとてつもないものだということが改めて分かった。


「清田先輩が来たということは……」

「やほっ」

「おっ来た来た。」


片手を上げて病室に入って来たのは、奏季さんだった。


「さすがに誰も置かないってことはできないから、奏季君を召喚したの。」

「そうなの。久しぶり秋穂、元気そうで何より。では当主、あとはお任せを。」

「うん、よろしく。ほら夏南ちゃん行くよ。」

「……はい。ちょっと奏季くんいい?香住先輩、起きたばっかりなんだからうるさくしちゃダメだよ!」

「はいはい。わーかってるって。ほら三樞たち待ってるし、早く行きなよ。」


三樞と言われ、夏南ちゃんはこちらを一瞬心配そうに見た後に、今村さんと病室を後にした。


「あの志信心配かけてごめんね。あと、ありがとうね。」

「いやいい。秋穂が元気になったならそれで良いよ。」

「奏季さんも心配かけてすみません。」

「いいってことよ。で、原因についてだけど、当主たち何か言ってた?」


ついさきほど今村さんと夏南ちゃんが言っていた事を話す。超特急での覚醒と能力開花によって体がついていけなかったのでは、と。そしてそのことを三樞に報告しに行ったのだとも。


「あの夏南ちゃんでも探れなかったのが気になったけど、そういう理由なら納得だね。ま、帰ってからも数日は様子見た方がいいかも。」

「はい。之人君とも相談します。」


訓練スケジュールを組んでくれている之人君にも報告しなくては。まあ、今村さんあたりから説明はいってるだろうけど、一応ね。


「そうだ、志信ね、覚醒したんだ。」


さきほど今村さんたちからも聞いた。しかも力孔を閉じる訓練をしているとも。その旨を話すと、奏季さんは出遅れたかーと残念そうにしていた。

そういえば、訓練中なのに志信は眼の色が黒い。さすがに力孔全開で力だだもれというわけにはいかないだろうし、奏季さんに力孔を閉じてもらっているのだろう。


「秋穂は一日で閉じれるようになったんだろ?凄いよな。」


今現在閉じれるよう頑張っている志信がしみじみとそう言う。


「うーん。でもこうして何日も寝込んじゃってるから、志信みたいに段階踏んでちゃんとやった方がいいんじゃないかな。」


そういえば、と思い出す。

確か之人君も訓練した初日に力孔をふさげるようになった、と言っていた。しかも狩人として現役ばりばり。そっちの方がすごいのでは。


「奏季さん、之人君も一日で力孔閉じれるようになったんですよね。」


奏季さんは之人君の先生をしていた。だとすると、訓練状況を覚えているはず。


「之人くんもこうやって倒れたりとかなかったですか?」

「之かー。あいつはそういうこと無かったかな。教えた傍から吸収してったね。あの年で凄いことだ。」

「あいつ何歳だったんですか?」

「十四。」


私と志信は同時に顔を見合わせた。


「まじか、十四!」

「中学生の時じゃないですか!」


今の私たちよりも遥かに若い時に彼は能力を制御できるようになっていたという。能力使いこなすのに年齢でも関係しているのではないだろうか、例えば若ければ若いほど良いとか。


「まあいつ覚醒するかにもよるしさ。とにかくあいつはそのあと直ぐに狩人となって、先生である俺と肩を並べる事になったってわけよ。」


そんなすぐに狩人となるなんて、エリート中のエリートなのでは。同い年でこうも差があると、劣等感よりも尊敬の念しかわかない。


「俺、之人に教わりたかった。」


ぽつり、と志信がもらした。

当然ながら今教えている奏季さんはぷんぷんしている。「俺も凄いんだから!」とか「そんな之を指導したの俺だし!とか「狩人やって長いのは俺!」とか主張してる。


「ちょっと秋穂もなんか言ってよ!」


奏季さんにそう詰め寄られた。残念ながら一言しか出てこない。


「志信、羨ましいでしょ?」

「っきぃいいいいいぃぃい!」


どこでそんな芸当を覚えた、というように絵に描いたように悔しがる人みたいな声を出していた。

ハンカチがあったら口にくわえてそう。そんな怒り方。

見ていて面白いけど、さすがにあんまりうるさくするのも良くは無いので、私と志信で慰める事にした。

イケメン、大人の男、尊敬してる、狩人やってて凄い、今村で一番強い男、めっちゃできる男、車運転できる。

最後のネタは志信が言ったもので、それは褒め言葉なのかなとは思ったけど、奏季さんは喜んでいた。まあ、喜びポイントって人それぞれだもんね。さすが志信、一週間以上行動を共にしているから分かるんだね、奏季さんのこと。

なんやかんやで仲良さげで一安心。


そんな感じで和気藹々と話していると、あっという間に時間が過ぎていく。

外も薄暗くなってきたところで、志信と奏季さんは今村の家に帰っていった。


その後で夏南ちゃんが戻ってきたみたいで、夜ご飯を置きがてら部屋に顔を出してくれた。

ついでに一緒にご飯を食べながら、さっき三樞と会ってきた話をされた。今回のことを報告したけども、私から攻撃に特化した人たちを外すということは変わらないらしく、ここから出ればまた之人君が主に付くという。


「先のことは分からないですけど、今できることから順番にやっていきましょう!」


私を元気付けるためにニコニコとそういう夏南ちゃんの優しさに癒される。

しいていうなら、今はこの目の前にある大食いの夏南ちゃん仕様の特盛ご飯をやっつけるべく、箸を動かした。



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