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20話

 

 持ち出してきた本だが、まずは天の一族について書かれた本を読んだ。入門編みたいな本で、そこまで厚さのないものだったのでわりとすぐに読み終わった。そしてその後、社にいたとされる天の一族の人について書かれた本も読んだ。


 内容としては、不思議な力をもつ一族がおり、自身らのことを天より授かりし力をつかうことから、天の一族と呼称していた。とても長寿であり、その歴史は我々(今村)よりも古く、現存する最古の一族だろう。一族の長は宮様と呼ばれる女性で、とても強い力を持っていた。だが、女性が協力的になったこともあり、彼女を社に住み、今村のために力を貸してくれたのだが亡くなってしまった。その後は強大な力だけが社に残ってしまった、というものである。

 日付を見ると書かれたのが約20年ほど前なのだが、宮様が長とはっきりと書かれていて、ウイさんの言っていた現在天の一族を取り仕切っているというナリ様マヤ様の名前がまったく出てこなかった。となると、代替わり?したのはこの本が書かれた後になるのか。

 そして一族の証たる念話について出てこなかったので、これはちょっと安心した。頭の中で声がしてからの覚醒という私なのだ、念話と絡めて考えられ天の一族と疑われる余地を与えた事になっただろう。


 そして、社にいたのは長たる宮様ということだけど、共通して書かれているのは彼女のみが好意的であり力を貸してくれていたということ。奏季さんの言っていたことと同じで、社に住まわせる見返りとして力を快く貸してくれていた、ということである。ただ彼女だけがなぜそうしてくれたのか、ということは深堀されていない。純然たる事実だけを書いているのだ、とでも言うような文面だったので、それは気になった。

 今村にある書物でこうやって誰でも見れるようにされているのだから、今村の不利益になるような事は書かれていないのだろうけど。


 当たり前だけど、自分がほしいと思っている情報が得られなかった。他にも本はあるけど、どれも似たようなものだろう。そう思ってしまい、せっかく選んでくれた之人君には悪いが、他の数冊は流し読みになってしまった。まあでも少なくともこの本には私のほしい情報が載っていなかったという事実と、誰でも見れる本にはアンチ今村な内容だったりデメリットな部分が描かれていない可能性が有る、ということがわかっただけでも収穫ではある。


 難しい本をいっきに読んだせいか、目が大分疲れた。なんだか目がしょぼしょぼするなあ、と思いながら手鏡で見ると、黒に近い焦げ茶色の瞳の私が映っていた。

 力孔を閉じる事ができたからこうして今までと同じ瞳の色だけど、それができなかった場合、今ここに写っていたのは赤い瞳の自分だろう。之人君は赤い瞳を隠すため、常時力を注ぐと言ってくれたけど、常時力を使い続けるというのはとても大変なはずだ。そうならなくて良かったと思う。


 そして志信はどうなのだろう。志信も赤い瞳になるのだろうか。例えば泣いて真っ赤になった目だとか、カラコン入れて赤くした目だとか見た事がない。それに赤い瞳をコンタクトや能力で隠すみたいだし、そうなると志信の赤い瞳というのはけっこう貴重だ。それはそれでちょっと見てみたい。

 そんなことを考えていると、強くも弱くもない力で部屋の扉が叩かれる音が聞こえる。訪問者が多い。実家じゃこんなこと考えられなかった。


「香住、今いい?」


 声の主は今村さんだった。ここにいるということは、話が終わったのだろう。


「今開けるね。」


 そこには今村さん一人が立っていた。さっきまで一緒にいたはずの之人君はいない。


「どうしたの?」

「三樞から話がきてね、まずは香住に話しておかないとって思って。」

「この部屋で聞いても大丈夫かな?」

「お邪魔していいなら。」


 そいうことで、部屋に招き入れた。

 高校生活の中で、まさかあの有名な今村さんを今村家所有とは言え自室に招き入れる機会なんてないだろうと思っていたため、小さなテーブルに向かい合って座っているこの現状、とてもそわそわする。


「あー!めっちゃ疲れたー!」


 そう言って、いきなりテーブルに突っ伏す彼女は、学校で見る通りの彼女で裏表がない。


「お疲れさま。三樞の相手って大変なの?」

「まあ、古くから今村を支えてきたっていう自負が根強くて、我々の考えは今村の考えっていう人たちなんだよね。あたしに言わせりゃ、時代錯誤の固定概念そろそろ止めてもらえます?ってかんじなんだよなー。」

「昔からそれで続けている人達の意見を変えるのって難しいよね。」

「ほんとそれ。まああっちも、自分たちの思い通りにいかないあたしなんていけすかないだろうけど。」

「それは話し合いするだけでバチバチになっちゃうやつだね。」

「もうめんどくせーってなる。今は大人しくしとくけど、燈織使っておいおいどうにかする案件です。」


 燈織さんって、あの燈織さんだよね。え、私新参者なんだけど、そこまで聞いちゃっていいのかな?

「それ冗談だよね?」と聞くも、突っ伏してた顔をあげ、ニヤリと笑うだけだった。え、何それ怖い。巻き込まないで、私の知らないところでやって。


「ま、それはさておき。」


 置く前に、そもそも私のところに持ち込まないでほしい案件です。

 今村さんは、居住まいをただす。そうなると一気に部屋の空気が変わった。


「結論、香住は暫く傍に実行系の誰かがつくことになった。期間は三樞が良しとするまでで、現状未定。」

「実行系って?」

「要は攻撃に特化した人間。今ついてる之人はもちろん、同じく狩人である奏季もだし、あたしもそう。時と場合によるんだけど、燈織も。まあでも基本はこのまま指導係の之人かな。」


 つまり、危険人物認定された、と。何かあったらすぐに私を処分できる人をつけるということか。


「ほら、頭で声が響いて覚醒したって言ってたでしょ。そういうの、今までうちでなかったからさ。未経験のこととなると、慎重になるんだよね。近づいてはいないとはいえ、社の魔力だったり、今いる天の一族の干渉を受けているかもしれないっていう線もあるみたいだから、こういう対応を取らざるを得ないの。これは多くの人間を守る今村家当主としてのあたしも否定はできない。」


 今村さんにも立場はある。それはしょうがない。

 天の一族の干渉を受けているかもしれない者に、攻撃に特化した人間を置いてでも今村一族においておきたいとは、それだけ力を持つ人間を欲しているのだろう。さきほどのウイさんとの会話がちらり、とよぎった。


「そうは言っても、監禁だのはしないよ。今まで計画してた通り訓練とかして、普通に生活できるから。それは三樞も言ってたし、保証できる。」

「ありがとう。ちなみにこのことみんな知ってる?」

「燈織と之人には話してるんだけど、他のみんなには後で言おうと思って。」


 当たり前だが、情報は共有されるらしい。

 志信にも私が危険人物って言われちゃうのか。そうなると、ここにきてできた距離感がさらに広がるのかな、それは寂しいな。


「志信にも話すの?」

「覚醒した後に言う予定。」


 そうだった、そもそも私が覚醒したことを志信には伝えてなかった。

 覚醒すれば伝えるし、覚醒しなければここを去ってもらう。どっちも微妙である。


「とりあえず、それを伝えに来たの。昼間っから重い話してごめんね。」

「ううん。今村さんも大変だね。」

「これがあたしの役割だからさ。要件だけで、そろそろ行くね、まだやることが色々あってさ。」


 そう言って立ち上がると「お邪魔しました」と言って部屋を出て行った。

 当主である今村さんは多忙だ。誰に任せるでもなく、自分が赴き話をするだなんて、頭が下がる一方である。


「……なんか今日はどこ行っても朝から胃もたれする話ばっかだなあ。」


 宿題も終わって本も読み終わっている。時間はまだあるし、ちょっと寝ようかな、ということでアラームを一時間後にセットして仮眠をとることにした。


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