06. これからは、たくさんの「いってらっしゃい」と「おかえり」を
早朝。まだ朝食を終えたばかりという早い時間に、ジュドさんが訪ねてきた――真新しい荷車を持って。
その新しい荷車には、人が引くための棒がない。代わりに犬の散歩に使う革紐が取り付けられていた。荷台も私が使っていたものより低く作られている。
「犬が人間用の荷車を無理に引いてたら体を痛める。こっちにしな」
ジュドさんがそう言ったからルディを呼んだ。狼の姿になって出てきたルディは、新しい荷車とジュドさんを見比べてオロオロしている。
この間、商業ギルドで会ったときにジュドさんがルディの身長を測っていたのは、ルディ用の荷車を作てくれるためだったらしい。
「……ま、こんなもんだろ」
荷車に繋がれた革紐を手早くルディの胴体に取り付けたジュドさんが、仏頂面のまま頷いた。
ルディは緊張しているのかピシッと固まり、されるがままになっている。尻尾も下向きだ。
ユユちゃんは私の足の影に隠れて様子を見守っている。
「ルディ、どう?」
「ガウ」
ルディが歩くと、革紐に引っ張られた荷車が進む。人間用の荷車を無理に押していた時とは違って荷台は安定している。ルディも歩きやすそうだ。
「使ってみて問題があったら言いな」
それだけ言って立ち去ろうとするジュドさんに、慌てて頭を下げる。
「あの、ありがとうございました! この間買っていただいた食料品と合わせて、何かお礼をさせてください」
「……」
ジュドさんが顔だけで振り返る。いつものことながら眼光が鋭くてドキッとした。
「うちに常備してるポーションが切れてる。補充しといてくれや」
「はいっ」
私の作れる初級ポーションなんかじゃ全然釣り合わない気がする。せめて一番質のいいものを持っていこう。
ルディから革紐を外していると、ユユちゃんが薬草を入れるためのかごを引きずってきた。
「もう出かけるの?」
「キャウ!」
ユユちゃんがぴょんと高く跳ねる。今日も元気だなあ。
「いってらっしゃい。気をつけてね」
「ガウ」
「キャウッ」
ルディがかごをくわえ、ゆっくり歩きだす。ユユちゃんはルディの周りを左右に動き回りながらついていった。
二人が採集に行ってくれている間に、私は商業ギルドに行って受けられる依頼がないか聞こう。
それから店を開けることを考えると、熱冷ましと痛み止めは並べたい。早めに販売許可を受けられるように調合の練習もしなくっちゃ。
ルディとユユちゃんが帰ってきたら、おかえりって言って、それからお昼ごはんにしよう。
二人が出かけたばかりなのに、もう帰ってくるのが楽しみだ。
(終)
次のページに似顔絵メーカーで作ったキャラ画像集を載せています。可愛い画像がたくさんできたので、挿絵をONにして次のページもぜひ。
仙道アリマサ様の企画、「仙道企画その3」参加作品でした。(企画リンクはランキングタグに載せています)
お題曲を聞いて最初に思い浮かべたのは、雄大な自然と、澄み切った青空を飛ぶ白い鳥でした。その次がのどかな町並み、帰る家。木造りの家、窓から差し込む光。
すごくあたたかくて優しくて、幸せを感じるんだけど、どこか寂しさもあるような気がして、こういう話を書きたいなって思いました。
素敵な曲をありがとうございました!
企画の上限が3万文字なので、ここで終わりにします。(ちょっと超えましたごめんなさい)
読んでいただきありがとうございました!
















