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三話

一話1000字は少ないですかね...

「なんで俺がこんなこと.....のぶも手伝ってくれりゃいいのに」


ひたすらデッキブラシでプールサイドを磨き2時間。友達が多いわけではないので手分けして取り組むこともできないので思わず不満が(あふ)れる。やることは大したことではないのだが、中腰をキープするのはいくら若くても辛いものがある。


「(今日は学生の日で近くの中華そばの大盛りが無料だってのに...)」


富裕層とは違い一般枠で入学した遼多は御付きの人はおろか、送り迎えの車などは当然のように無く毎日の登校は8年愛用している自転車。通称『大野丸(おおのまる)』に乗り片道一時間の距離を通学している。夏も冬もお構いなく自転車登校である。


「(なんでこんなとこに入学してしまったんだろう...中学に戻りてぇな...)」


女子が全体の7割を占め暗黙の了解で自然に女尊男卑(じょそんだんひ)の構図が出来上がる。自分とは桁が違う金銭感覚を目の当たりにし、バイトをしようにも通学に時間を取られ親のわずかなお小遣いで生活する今の厳しい現状は思い描いていた理想とはかけ離れていた。苦悩のせいで視界の隅に光り輝くものが見えるという幻覚まで引き起こしてしまった......、ん?


「–––––––って、なんだこれ?」


プールの排水溝の隙間に挟まっていたのは綺麗な装飾(そうしょく)(ほどこ)されたピアスだった。

あまりアクセサリーには詳しくない遼多だが、なんとなく住む世界が違う人が身につけるものだと本能的に判断した。それほどに、このピアスの装飾には目を光るものがあった。


「どこかのお嬢が落としたのかな...こんな立派なものを落とすなんて、間抜けさんもいるもんだな」


一瞬オークションにでも出品しようかと思ったが、後が怖いのですぐに思考を改める。


「もう学院の受付もやってないだろうしな...明日職員室にでも持っていくか」


それなりに綺麗になったのでカバンにピアスを丁寧にしまい、自転車にまたがる。

夢中で掃除していたせいでもう日が暮れそうになっていた。


「やっべ!もうすぐで中華そば屋が閉まっちまう!」


遼多は急いでいたせいで生徒証を落としていることに気づくことなく立ち漕ぎで帰っていく。



数刻後(すうこくご)


「...あれ、確か最後に見たのはこの辺だったはずなんだけど」


人気のない校舎の中で足元をキョロキョロと見渡す人影が現れる。

どうやら何か落とし物をして探しているようだった。


「あれをつけてないとパパに怒られちゃうんだよね〜、困ったな...ん?」


人影はふと生徒証が落ちているのに気がつき、拾い上げる。


「...坂口遼多くん、か」


人影は名前をつぶやくと微笑んで探すのを辞め、帰路に着く



これが人生の大きな転機を迎えることになっている遼多は知る由もなく、

ただひたすらに中華そばを頬張っていた。




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