二話
...あれは今年の夏のことだった
〜放課後〜
「おーい、遼多!お前今日プール当番じゃなかったっけ」
「うげ、別に行かなくてもいいだろ」
「いや、行けよ。お前のせいで女子の水着姿見れなくなったらどうすんだ」
「どうせ半分くらいは入らないじゃないかよ」
「もう半分を拝める可能性があるのに、ドブに捨てるのか!」
俺が現在通っている私立、千里浜学院高校。
男女比が3:7と普通の学校とは異なり、半女子校のような比率となっている。
その理由といえば...
「ごめ〜ん。お迎え来ちゃったみたい」
「そっか〜気をつけてね!また明日!」
窓を見ると女子生徒たちが次々と帰っていく。
お別れを告げた女子生徒は、校門近くに止まる黒塗りの車に乗り帰宅していく。
そう。この学校は、富裕層の跡取り娘が好んで通う高校なのである。
多額の資金を寄付してくれる親御さんの意見を蔑ろにすることなどできず、名目上『治安向上の為』と言い、男子と女子の人数比をこの割合にしているそうだ。
「ったく、なんで俺が掃除しなきゃいけないんだ!」
「そりゃ、お前。寝てるからだろ」
...で、さっきから口うるさい薄緑色の髪をした男は泉ヶ丘吉乃生。
中学入学したての頃、うまくクラスに馴染めずにいた俺に最初に話しかけてくれた奴。
女と噂にしか興味がない男だが、割と周りを見ている気の利くやつだ。
...少々、ムカつく一面もあるが。
「そういう所、しっかりしてるとモテるのに〜」
「面倒ごとに手伝ってくれる人もモテると思うんだが?」
「女の子の頼みならまだしも、な〜んで怠け者の手伝いをするのさ」
...そう、こういう所だ。
女の頼みなら財布扱いされようと受け入れるが、男の頼みには応じないのだ。
入学当初は敬遠されていたが、『あ〜こういう奴なのか』と皆の共通認識になると、なぜかクラスに溶け込み始め今ではクラスで割と目立つ存在へとグレードアップしている。
「のぶに手伝ってもらおうと思った俺がバカだった」
「いまさら何言ってるの。そんなのはクラス全員が知ってんの」
「...こいつ!言わせておけば」
「遼多は大人しく掃除してる姿がお似合いだよ。ほら、急いで」
「...わかってるよ」
こいつに丸め込まれるのは癪だが、俺がやらないといけないので急いでカバンの中身を整理する。
「安心しろって〜。女子がプールの授業の時、双眼鏡貸してやるからさ」
「別にいらねえから、一緒に来てくれよ」
「嫌だね。じゃあ、また明日な〜」
そう言ってのぶは教室を出て、お迎えの車まで歩いていく。
「...はあ、俺もいくか」
そんな独り言を呟きながら俺もトボトボとプールに向かった。
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