第17話 『最終決戦! 次元を超えてやってきた最強の敵!』中編
超機神タイ・ヨーノ・トーの大きさを越える、光の巨人。
古代遺跡シォ=ノミサキ砲を使った渾身の一撃も、まるで効いていないようだった。
巨人はなおも繰り返す。
《この世界は……許されない……我が名に於いて、消え去るべし……》
上から振り下ろされる神の右拳。
超機神はエネルギーアームを組んでそれを受けるが、圧倒的な質量の違いに、地面まで押し付けられる。
「お、重い……ッ!」
大地に無理やり押し込められるように超機神は立つ。
そこへ、神の左拳が地を這うように迫る。腰を捻り溜めを作り、超低空からのフルスイングアッパー。
海へと飛ばされ、空中で体勢を立て直す暇もなく海面に叩き付けられ巨大な水柱を上げる超機神。
激しい振動に、トーの内部、生命の樹の間ではそれぞれが倒れ、強かに体を打った。
【くっそ、ホンマ……あの神め……!】
「本当に3000年前には一体倒したんだろうな!?」
「昔はこのタイ・ヨーノ・トーとおんなじくらいの大きさやったんや!!」
【育ち盛りやのぉ! くそったれぇ!】
「ねえ! 観嬢仙さま! 核の大きさってどのくらいなのかしら」
ハルカスが立ち上がりながら言う。
「せやな……こいつのコア、一個分くらいやな」
「そんなに小さいの!?」
円環状になった輝きくんの、その球体の一つを指す。
手の平大ほどの核、ということなのだろう。
150mを越える巨人の中から、その核を探さなければならないのだ。
「さっきみたいに全体を攻撃したらええんやろうけど、たぶん一部にエネルギーを集中して守りよったんやろ」
「そ、それじゃあ、守りを崩せるだけのエネルギーを撃てってことなんだな」
「輝きくん……いける?」
【アカンな。範囲を絞って、高出力でなんとか撃ち抜けたらええんやが……】
海中にいつまでもいる訳にはいかず、バーニアを一気に噴射して空中へと飛ぶ。
光の巨人も翼を広げて飛びあがる。
牽制に、背後の後光から次々と光弾を射出して空中で爆散させ視界を封じる。
「煙幕など張って何になる! こちらも何も見えなくなるだろう!」
ベタベヤスが叫ぶ。
しかし幸村サナが鋭く声を飛ばす。
「ヒデヨシ君! ゴーグルをこっちに!!」
「え、あ、うん!!」
元々、それはサナの持ち物だ。
サナはそれを装着し、画面に様々な情報を映し出しながら操作をしていく。
「閾値修正……範囲を固定……コード適用……出たッ!!」
ゴーグルには、煙幕の向こうに飛ぶ光の巨人の輪郭がはっきりと赤く示されている。
「ヒデヨシ君、右アームを支点に旋回!!」
「……うん!」
半身引くように超機神を回転させると同時に、巨人が煙幕を突き抜けてそれまで超機神がいた場所に突っ込んできた。
「……隙だらけよ!」
左腕を光の巨人のわき腹めがけて振るう。
リバーに刺さり、巨人の体がくの字に折れる。そこでサナの攻撃は終わらない。生命の樹に手を当て、思い切り力を込める。
「これでも喰らいなさいッッ!!」
突き立てた拳から、雷撃が放たれる。
超機神は、操縦する者の生命エネルギーを使って動く古代の兵器。エネルギーそのものは輝きくんが担っているが、戦闘におけるイメージや武装はヒデヨシやサナのセンスによって左右される。
さらにエネルギーアームを網のように変え、光の巨人を拘束するように包み込む。
「す、すごいや、ねーちゃん……」
「まだまだぁぁ!!」
縛り上げた光の巨人を、繋がっているエネルギーロープで振り回し、大地に叩き付ける。
巨人から放射状に地面が割れる。
《お、おぉ……世界は……滅び、よぉぉ……》
呻くように声を上げながら、拘束を引きちぎる光の巨人。
「今のうちにさっきの砲塔を拾って!」
「うん! まかせて!」
シォ=ノミサキ遺跡を再び拾い上げ、どしりと構える。
「……核の場所も、分かるけど……二つある!」
「ゲッソー、貴様、やるではないか!」
「その名前は偽名だから! なんで核が二つもあるのよ!」
【そうか……前に倒したと思てたやつの核か……!】
「結局倒せてないんじゃないの!」
【今、まとめてケリつけたらええやんけ! 相変わらずきゃんきゃんうるさいのう!】
生命の樹を通して、サナの見ている情報がヒデヨシにも伝わってくる。
「もう一回、さっきの網で動きを止める。ヒデヨシ君、片方の核だけでも、なんとか壊して!」
「分かった! ド派手に決めるぜ、ねーちゃん!」
超機神の左のエネルギーアームが投げ網のように変化する。
右のエネルギーアームには、シォ=ノミサキ遺跡をそのまま接続し圧力、密度を最大まで高めたエネルギーブレードを形成する。
核の場所が分かるならば、そこを狙えばいい。
【ありったけ使ってええぞ! やったれ!】
「援護くらいしかできんけど、目眩ましもくらえや!!」
再び射出される炸裂弾。
しかし光の巨人は先の攻撃で予測したのか、空へと舞い上がる。
「させない! タイ・ヨーノ・ビィィーーームッ!」
ヒデヨシが叫ぶ。
超機神の頭部、燦然と輝く黄金の顔から熱線が走り、光の巨人の翼を斬りおとした。
錐もみしながら落ちてくる巨人を、網で捉えて再び拘束する。
《おぉぉ……滅びよ……滅びよぉぉぉ!》
「滅びるのは、そっちだぁぁぁl!!」
エネルギーブレードを構え、バーニアを全開にして光の巨人へと迫る。
ヒデヨシの視界に共有される、光の巨人の核の場所。そのうちの一つ、腹部にあるそれ目がけてブレードを振りかぶる。
「ひっさぁぁつ!! ド派手ッ! ブレェェェェドッッ!!」
核に向かって一閃を放つが、核を守るように巨人もそこへエネルギーを集中させる。
ブレードは巨人の胴に半分ほどめり込んだ状態で押し合いの状態になった。上背を利用して、圧しかかるように巨人が腕を伸ばす。
【く……押し負け……】
「わ、私も!!」
ハルカスが生命の樹に触れる。
全身の力を一気に吸い取られるような感覚に思わず膝をつく。
「ちょ、何しとんねん! コアの力もないのに無茶すな!!」
「だって、私だって……!!」
それを見て、ベタベヤスとブヅケも生命の樹に触れる。
「ええい、さっさとトドメを刺してしまえ!」
「お、おお、ふ……これはキツイんだな!」
僅かな、ほんの僅かなエネルギーではあったが、後ろから支えてくれる仲間がいる、という事実は何よりもヒデヨシの気力を後押しするには充分だった。
「あぁぁぁぁぁぁッ!!」
絞り出す声と共に、ヒデヨシの体もまた輝きくんと同じように真紅に輝く。
どう、と力強いバーニアの噴射と共に、ブレードは光の巨人の核、その一つを撃ち砕いた。
《おぉぉぉ!! 世界よ……許されざる世界よぉぉ!!》
光の巨人の下半身が砕け散り、地響きと共に上半身が地に墜ちる。
「もう一つ核もこのまま……!!」
ブレードを突き立てようとしたその時、光の巨人はすべてを覆い揺らす轟音を発する。
それは、断末魔の叫びとは違う、敵意をそのまま形にしたような声。
拘束を引きちぎり、上半身のみの姿で猛スピードで北へと飛んでいく。
「逃げた!?」
「あの方角……ハンナリィか!」
【とりあえず追うで!! 回復される前に倒すんや!!】
空中を高速で移動し、超機神は光の巨人を追ってハンナリィの上空へと辿りつく。
ナーラ神国と同じような瓦造りの建物が並ぶ中、碁盤状に並んだ区画のその一際奥にある大きな建物から黒い靄が立ちのぼるのが見えた。
「あ、あそこには、帝国議会があるんだな……!」
「ジィの一族もろとも、操られていたというのか……!」
黒い靄はやがて形を作り、黒くそびえる影の巨人となった。
《おぉ……許されざる世界よ……。我が名はケイン……。ショー=ヒョウ=ケイン……》
《世界は滅びるべし》
《この世界は、許されぬ……》
下半身を失った光の巨人は。影の巨人へとその身を付ける。
二足歩行の、巨神。
だが、その上半身は光と影の二体分の巨人から成っていた。
「うわ、きも。上半身だけ二体分とか趣味悪」
【サナ!! 核の場所はどうや!?】
「……二つある。でも、さっき一つ壊したんだから、あれで正真正銘、終わりよね」
「やろう! 本当にあれで最後だ! 絶対にこの世界を守ってみせる!!」
ヒデヨシの決意に呼応するかのように、タイ・ヨーノ・トーの周囲のエネルギーも輝きを増した。
地上から睨めあげてくる、異形たる陰陽の巨神。
世界をかけた最終決戦が、今、はじまる。




